旧車・名車が銀座に集う THE銀座RUNイベントレポートNo.2

20世紀を彩ったクルマで東京を走ろうと、2012年から始まった「THE銀座RUN エシカルミーティング」。春めいてきた都心ならではの雰囲気のなか、古き良き時代のクルマが悠々と駆け抜けた。

銀座、日本橋、迎賓館。落ち着いた街並みを走る

10時に東京プリンスホテルを出発した一行は、ゆっくり北上し、休日の静かな丸の内のオフィス街を抜け、東京駅へ。そこから南下し、銀座で一度隊列を整えて、パレード気分でゆっくりと走る。沿道にいた人々は、急に何台ものクラシックカーからスーパーカーまで走ってくるのに驚き、慌ててスマートフォンで写真を撮る。そして管楽器が奏でるような、美しいエキゾーストノートに心昂らせていた。中央通りは両側に程よい高さのビルが建ち並んでいるので、適度に音が反響し心地よい。そして日本の道の起点となる日本橋から竹橋、千鳥ヶ淵を抜け、迎賓館を目指す。ここで少し撮影タイムが取れた。

先導車のトヨタ・ミライにクラシックカーが続く。きれいに石畳が敷き詰められた丸の内へ走る
銀座4丁目交差点を3台の真っ赤なイタリア車が走る。街並みに溶け込みながらも、やはり存在感が際立つ
中央通りに並ぶ20世紀のクルマたち。気軽に入れるお店も増えたが、やはり質感の高いクルマのほうが似合う
路線価日本一の東京鳩居堂前に停まっても見劣りどころかより風格を増すオースチン7。1663年創業と歴史ある鳩居堂は、ここ銀座に1880年に出張所を開設。オースチン、鳩居堂どちらのブランドも歴史ある香り高き逸品揃いだ
銀座4丁目交差点の和光前に現れたクラシックカーに、信号待ちをしていた沿道の人々もびっくり。慌ててスマートフォンや持っていたカメラで写真を撮る人も
中央通りを悠々と走るスーパーカー。バブルの頃はこれが成功の象徴であったが、今このスーパーカーに乗ることは、本当に好きなクルマに乗れる喜びと自分らしくいられる空間を持てるということ
60年代中盤から後半にかけて、日本を代表するスポーツカーであったホンダS600と日産フェアレディ2000。東京オリンピックに沸き、平凡パンチを読み、VANジャケットを着て、ここ銀座では、みゆき族という若者が集まる社会現象が起こった。みんな情報を欲し、仲間と街へ出てブームを楽しんだ
現在の和光の時計塔は2代目で1932年に竣工。ネオ・ルネッサンス様式で建てられた、威風堂々たる建物に似合うイギリス車が何台も通る
日本の道の基点となる日本橋に到着。1930年式アストンマーチン インターナショナル1に乗る横田正弘さんは、クラシックカーレース「スプレンドーレ榛名」を自ら主催し、群馬に「伊香保おもちゃと人形自動車博物館」の館長としてクラシックカー文化振興を支えている
日本に1台しかないアメリカのスーパーカー、ベクターW8。水冷V型8気筒OHVツインターボを搭載し、一時は世界最速と称えられた名車。観られるだけでもありがたい
迎賓館前を通る1969年式スバル360。白い迎賓館に黄色いてんとうむしが映える
本場イタリアのミッレミリアにも参戦する横田さんと大木さん。日本のラフェスタ・ミッレミリアでは毎年上位入賞をしている。ペアルックがお洒落
直線的なスタイリングが美しい1992年式ロータス・エランSE。いすゞエンジンを搭載し、ロータスならではのハンドリングのおもしろさに魅了されるファンも多い

雰囲気が変わった青山、六本木を駆ける

赤坂見附から青山通りを西へ。60年代の青山通りは、現在のようなファッショナブルな店はなく、待ち合わせといえば青山一丁目のEIKOのGパン屋前にクルマで乗りつけるのが、当時の大学生のステイタスだったとか。クルマを持っていれば彼女とデートができる。もてるためにもクルマに乗りたい。免許を取って親のクルマを乗り回すだけで楽しかった時代。クルマにはそんな魅力がある。このイベントは、若者の街、青山、表参道そして六本木を駆け抜けながら、昔と今の人たちをつなぐ。20世紀のクルマたちは、まるでタイムマシンのように沿道を歩いている人々の目を惹き、あの頃の時代を映し出した。

白と赤。トライアンフ、アルファロメオ、ディーノ、ランチャとメーカーは違えど、やはり同じ丸目のヘッドランプは愛嬌があっていい
イギリスのライトウェイトスポーツの代表格、MG B。青山1丁目交差点を軽快に駆ける
神宮外苑のいちょう並木に並んだボルボ アマゾンクラブのクルマたち。横断歩道を渡るカップルも思わず振り返るほど印象的な風景だ
インターセクト バイ レクサス前を通る1965年式トライアンフ・TR4A。イギリス、ロードスターのデザインのよさに脱帽
ホンダS600を駆る富山晶行さんは父親からこのクルマを譲り受け、大切に乗っている。お祖母さんが世界50ヶ国のピザを食べ歩いたその味から最高のピザを築地で出すイタリア料理店をやっていて、富山さんはその意思を引き継いでいる粋な東京人。偶然、後ろからついてきた現代のライトウェイトのホンダ・フィットと比べると、やはりS600の雰囲気は圧倒的だ
20世紀のクルマを愛する参加者のみなさん。クルマを大切にしながら、しっかりクルマと対話しながら乗る楽しさを知る最高のカーライフを送っている

ふたたび東京プリンスホテルの駐車場に戻ってきた20世紀の魅力的なクルマ。参加者たちは午前中の短い時間でありながら、東京の名所を巡り大満足の様子だ。そしてなにより楽しんだのは、ミュージアムから出てきたような華麗なクルマの走りを観て、エキゾーストノートを聴いた沿道にたまたま居合わせた人々かもしれない。

(写真:横田紀一郎・寺田昌弘)
(テキスト:寺田昌弘)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road