意外と簡単。大型特殊自動車免許取得のススメ

ここ数年、仕事をご一緒させていただく方々で、大型特殊自動車免許を所持している方が多い。さらに車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習の修了証まで所持している方も多い。今まで自分には関係のない免許や修了証だと思っていたが、急に興味が湧き、どうせならこのまま取得してみようと約30年ぶりに自動車教習所に行ってみた。

まずは大型特殊自動車免許に挑戦

今回、ホイールローダや油圧ショベルを乗れる資格が欲しいと思い、いろいろ調べてみた。まずこのような建機に乗って公道を走るためには、大型特殊自動車免許が必要だ。しかしこれは公道を走行するための免許であって、建機部分(土を載せたり掘ったりするバケットなど)を操作するためには、労働安全衛生法に基づく車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)の運転技能講習を受講して修了証をもらわなければならない。そこで、それぞれの講習時間を見てみると、大型特殊自動車教習は、普通免許を所持していれば適性検査を受けてから2段階で各3時間、合計6時間の技能教習をし、問題がなければ卒業検定を受ける。事前にうまく予約を取れば4日間で取得することができる。車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習は、普通自動車免許や大型自動車免許を持っていても関係なく、38時間(6日間)かかる。しかし大型特殊自動車免許を所持していれば、14時間(2日間)で済む。ということは、この二つの資格を取得する場合、まず大型特殊自動車免許を取得すれば、車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習は2日間と一気に短縮でき、費用も安くなるので、まずは大型特殊自動車免許を取りに行く。

初めてクルマやバイクに乗って教習を受ける方用にコースと、大型自動二輪やある程度教習を受けた普通自動車、大型自動車そして大型特殊自動車が教習を受けるコースと2面ある平和橋自動車教習所

大きな建機で公道を運転できる免許

自宅から近くで大型特殊自動車免許が取得できる教習所を探したところ、平和橋自動車教習所が見つかった。ここは都内で唯一すべての免許が取得できる教習所で、大型特殊自動車はもちろん大型自動二輪、牽引、二種そして併設される姉妹校ではクレーン免許まで取れる。30年ぶりの教習所はとても新鮮で、特に大型自動二輪免許が人気だ。私の世代では、自動二輪免許は中型限定二輪までしかなく、試験場で受験し、9回目にしてやっと限定解除をした。もちろんそれより多いのが普通自動車免許を取得するために通う若者たち。うれしい限り。教習を見ていても、みな初めてクルマを運転するだけに、本当ドキドキワクワクしているのが伝わってきて、自分のその頃を思い出すほど初々しい。
さて入所手続きをして視力検査と適性検査と技能教習の予約をする。ネットでも予約できるが、その場でスタッフと話しながら予定を立ててくれるのがありがたい。受付スタッフはみな女性でとても明るい雰囲気でとても和む。女性スタッフが多いと思ったら、教官も3割が女性だというのに驚いた。そして適性検査を受け、初めての技能教習へ。生まれて初めて乗るホイールローダに緊張しながらもやはりワクワクする。

まずは適性検査。久しぶりに受けると、自分の今の性格が明らかになっておもしろい
これが大型特殊自動車の教習車両、ホイールローダ。やはり大きい
運転席から見るとこのような感じ。左手の片手で回せるようステアリングにはノブがある。

ATなのでアクセルとブレーキだけだが、左足側にもブレーキがある。右のレバーはバケットの昇降に使う。シンプルなコックピットだ

まず後方を確認してから扉を開け、梯子を登るようにして運転席へ。再度後方を確認してから扉を閉める。運転席に座ったら、シートポジションを合わせ、2点式シートベルトをする。ATレバーがニュートラルになっているのを確認したら、ブレーキを踏み、エンジンをかける。ここまでは特に普通車と変わらないが、前方のバケットが地面についているので、これを上げる作業が必要だ。右側の安全レバーを上げて解除し、ジョイスティックを後ろに倒してリフトアームを上げる。そしてジョイスティックを左に倒し、バケットを持ち上げる。道路より50cm以上上げるよう教えてもらう。そして安全レバーを下げてロックすれば準備完了。パーキングブレーキを解除しDレンジに入れてスタートする。

右手でレバーを動かしたり、左手でステアリングを回したりするので、シートベルトは2点式。教官は隣に座る
右手で持っている赤いレバーがバケット操作のロックのオンオフをするための安全レバー。安全レバーを上げるとバケットを動かせる。降ろせば安全ロックがかかる
地面に接地しているバケットを上げる。まずはアームごと持ち上げる。このホイールローダの場合、中央の油圧部が水平より少し上向きになるようにしてから、バケットを手前に回転させると地面から50cm以上上がる。上げすぎると重心が高くなってしまい、運転がしにくいし、前方からウインカーが見えなくなってしまうから注意が必要だ
どれくらいバケットが上まで上がるか体験させていただく。かなり高く上がる。こうやって操縦するのは新鮮な感覚で楽しい

教習はすべて構内で行い、路上教習はない。まずホイールローダで慣れなければいけないのは、車体が中折れ式なので内輪差がないこと。フロントタイヤが通過したところをリヤタイヤが通るので、右左折時にフロントタイヤから縁石に近づけるのがコツだ。全長6m以上あるが、4WSのように小回りが利くので運転しやすい。そして運転で新鮮なのは、左手のみの片手でステアリングを操作すること。もちろん右手は作業時に建機の操縦をするからだ。右左折時にステアリングをクルマと同じ感覚で回すと、ホイールローダにとっては早すぎてガタガタと挙動が出てしまう。あくまでもゆっくりステアリングを回すのがコツだ。直線では20km/hを出すよう指示を受けるが、かなりローギヤでかつ車重が約6トンあるのでなかなか加速しない。20km/h出すと、今度は路面の凸凹の衝撃を受け、ポンポンはねる。
運転席はサスペンションシートなので乗り心地はいいが、これ以上加速したいと思わない。

まずは構内の外周路を走る。タイヤの位置や車両感覚をつかむ
左折。中折れ式車両はこのように曲がる。フロントタイヤが通ったところをリヤタイヤが通る
フロントタイヤがここまで路肩に近づいていても、リヤタイヤが路肩に乗り上げることはない。普通自動車だと乗り上げてしまうだろう
外周の直線を20km/hで走る。ホイールローダだと20km/hでもスピードが出ていると感じる

重要なのは方向転換と踏み切り。安全確認が大事

1段階の3時間でだいぶホイールローダの運転にも慣れてくる。S字を前進したり後進しながら車両感覚を養ったり、右左折も繰り返しているうちに路肩から広がらずに曲がれるようになる。そして2段階では検定に向けた練習になってくる。安全確認はすべてにおいて大事だが、それ以外に3つある。まず方向転換は、普通自動車教習時も同じだが、まず後進で入る場所の手前で中に何もないか一時停止して確認すること。そして前進したら一時停止し、後方確認をしてから後進する。あまり切り足したりしないよう、スムーズに行うのがコツだ。中折れ式の車両なので、多少巻き込みすぎて入ったかなと思うくらいにしてもステアリングを戻していくうちに元に戻ってくるからご安心を。次に踏み切り。これも普通自動車免許と同じで停止線前で停まり、左右確認そして音も確認する。そして前方にクルマなどいないことを確認してから踏み切りを越える。万一、前にクルマが停まっていて、踏み切り内で停止してしまったら、試験に落ちてしまうので注意が必要だ。最後にバケット位置の把握。走行時に停止線で停止するときはバケットを停止線の1m以内に近づけて停めなければならず、最初は自分が思っているより離れて停めてしまう。これはバケット位置にもよるが、バケット下に停止線が見えたところで停めると、1m以内に寄っている感じだ。停止線を越えてしまってはいけないので、これも注意が必要だ。

方向転換。左のバーで囲まれたエリアに後進する。まずは入る前に中に何かないか目視で確認する。これが大事
サイドミラーだけでなく、直接後方を見ながら下がるとよりうまくいく
無事後進で入庫完了。左右の幅よりまっすぐ入庫できているかの方が大事だ
S字はタイヤの位置感覚を覚えるのにとても便利。後進もリヤタイヤをうまくS字に合わせて走れば、フロントタイヤは同じ位置を通ってくれるので気にしなくていい
踏み切り。停止線でしっかり停止し、左右確認。また警報音や電車の音がしないか確認する。踏み切り内では絶対停まらないように
一時停止で停まったときは、このようにバケットを停止線に合わせて停める
バケットが停止線を越えてはいけないが、1m以上離れていたら、再度1m以内で一時停止しなければならないので、しっかり近づけて停める。これは何回かやれば感覚がつかめる
右側の白いポールにバケットの先端を合わせて降ろす。バケットを降ろしていくと、手前に近づいてくるので、そのぶんを見越して車両を停める

この部分を中心に注意しながら卒業検定を走り、合格した。普通自動車免許を所持していて、ふだんクルマを乗っている人であれば、何も問題なく取得できるだろう。あとは、試験場へ行って免許に併記をしてもらうための手続きをする。申し込み、印紙購入、視力検査、撮影をし、新しい免許が出来上がるのを待つ。こうして晴れて大型特殊自動車免許を取得した。これで公道が走れるようになった。次は車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習を受けに行く。これも初体験で、運転というより操縦することが今から楽しみだ。やはり乗り物は何に乗っても楽しい。

(写真:寺田昌弘・千葉尚祐)
(テキスト:寺田昌弘)

※実際の教習は撮影できないため、特別にご協力いただき、教習を再現して撮影しました

[ガズー編集部]