帰ってきた!デザートサファリ 今度は自分でドバイの砂漠をドライブ

昨年、ドバイの砂漠を観てみたいと、デザートサファリに申し込んで現地ドライバーが運転するランドクルーザーに乗った。とても楽しかったが、やはり過去ダカールラリーを走ってきた私にとっては、どうしても自分で運転してみたい。そこでUAEでトヨタ車を販売するアルフタイム・モータース(AFM)とTRDにお願いし、ランドクルーザーとハイラックスを用意していただき、一緒に砂漠へ向かった。

海外で日本車を見るとほっとする

ドバイ国際空港へ降り立ち、外へ出るとたくさんのタクシーが列をなして並んでいる。3種類のタクシーがあり、トヨタ・カムリと日本では導入のないトヨタ・イノーバ、そして黒塗りのボルボ。やはり海外で到着してすぐジャパンブランドが出迎えてくれるのは、とてもほっとする。

トヨタ・イノーバは今年10年ぶりのフルモデルチェンジをしたばかりなので、まだ前モデルだが、荷室が広く、荷物の多い観光客にとってうれしいタクシーだ

街中へ出てみると、ここでもトヨタ車は人気だ。カムリ、ランドクルーザープラドは乗用車として愛用され、ハイラックスは働くクルマとして活用されている。

信号待ちで1枚写真を撮ってみたら、このようにすべてトヨタ車ということもあるくらい人気のブランドだ

今回のドバイは、市街地ではなく砂漠。4WD車でなければ入っていけない場所にどういったクルマが走っているかも楽しみだ。なによりアフリカ大陸や南米大陸、ユーラシア大陸の砂漠とどのように違うか、自分で運転して体感できるのが楽しみだ。

山に吹き溜まった砂丘をこうしてどこまで登れるか楽しむのもオフロードの醍醐味

ハイラックスとランドクルーザーで砂漠を走る

今回の相棒は、トヨタ・ハイラックスとトヨタ・ランドクルーザー。どちらも中東はもちろん、アフリカ、オーストラリア、南米そしてロシアなど過酷な大地で特に人気の高いモデル。ともにラダーフレームにサスペンションがつき、その上にボディが載っている。ランドクルーザーシリーズである70、プラドそしてIMVのハイラックス、フォーチュナー(SW4)の4WD車は、合わせて年間約100万台が世界中で販売されている。ランドクルーザーは65年、ハイラックスは47年の歴史を持ち、世界中の道なき道を走り、鍛えられてきた信頼性、耐久性、悪路走破性の高さが世界中で支持されている。この2台に乗り込み、砂漠へ入っていく。

トヨタ・ハイラックス(左)はシングルキャブ、ダブルキャブ仕様、2WD、4WD仕様とバリエーションが多く、導入国によっても仕様が異なる。ランドクルーザーは、最上級のリアルオフローダー。街中では上質な走りができ、いったん舗装路を外れ、オフロードを走るとさらに真価を発揮する
舗装路から砂漠へ入る前に、タイヤの空気圧を調整する。今回は150kPaに下げる。ダカールラリーのときは、よほど柔らかい砂漠のときには80kPaまで下げることもまれにある
車内にコンプレッサーが装備されている。これはAFM社で装着したもので、砂漠を走るオーナーにとってはありがたい装備だ。抜くだけであれば空気圧計があればよいが、砂漠を越えてまた舗装路に戻るときに必ず空気圧を上げるのでマストアイテム
砂漠に入ってすぐラクダが出迎えてくれた。砂漠に来たという気分も上がる
今回は、遠くに見える山を目指して、オレンジ色の砂漠を越える
トヨタ・ハイラックスが先行し、デザートサファリへ。ちなみに赤い旗を立てているのは、砂漠の起伏でほかに走っているクルマが見えなくなることがあるので、存在をアピールするために装着するのが一般的。AFM社ではステーと、この旗を用意している

オフロードスポーツカー、ハイラックス

おもにタイ、アルゼンチン、南アフリカで生産されているハイラックス。ここUAEでは長年働くクルマとして愛用されているが、その悪路走破性の高さを楽しむオーナーはいなかった。しかし今回のフルモデルチェンジを機に、新開発の直噴ディーゼルターボもラインナップされたことで、そのイメージが変わってきた。中東では多くが大排気量ガソリンエンジンを高回転で回し、パワーで砂を巻き上げながら砂漠を走るオーナーが多い。ディーゼルエンジンは、あくまで重い荷物を運ぶトラックなど商用車のエンジンと思っている。しかし今回の直噴ターボディーゼル2GD-FTVは、2.4リットルと小型ながら低回転から大きなトルクが得られるので、今までのディーゼルエンジンの概念を変えている。砂漠ではパワーで走るよりトルクを活かして走ったほうが、スタックせず楽に走れる。

先が見えない砂丘を越えるときは、スピードを緩める。緩めすぎても、慌てて急加速しても埋まってしまうが、ディーゼルエンジンの低速トルクをうまく活用すれば車速を落としながらもスタックせずに砂丘を越えられる
バンクもアクセルを踏みながら心地よく走れる
アクセルを強く踏めばこうしてダイナミックな走りも楽しめる
中東仕様だけ、バンパーに金属製がラインナップされる。ボディカラー同色バンパーが主流のなか、逆に斬新なスタイリングだ

サスペンションも前モデルより乗り心地がよくなっているが、こうしてオフロードを楽しむためには、自分の走りに合わせたスプリングやショックアブソーバーなどに換装したいところだ。砂漠などオフロードを楽しむクルマとしてハイラックスはとても楽しい。トヨタ86はオンロードを楽しむスポーツカーだが、ハイラックスはオフロードを楽しむスポーツカーとして新たな市場、ファンをきっと作るはずだ。

スタイリングも後ろのランドクルーザーに引けを取らない存在感だ

TRD仕様のランドクルーザーに乗る

ドバイではランドクルーザーは砂漠を楽しむ究極のクルマになっている。私にとってランドクルーザーは、確かにダカールラリーをともに走ってきた道なき道で最も信頼できるクルマであるが、一般的に考えれば高級車である。しかしここドバイでは、市街地ではレクサスLX570に乗り、砂漠はランドクルーザーに乗るオーナーが多くなってきた。とてもうらやましい。そして今回はTRDがサスペンションやスタイリングをチューニングした仕様に乗らせていただく機会を得た。TRDはAFM社とともに、トヨタ86でオンロードをさらに楽しく走る仕様やFJクルーザーでオフロードを楽しく走る仕様を展開して好評を得ている。そしてランドクルーザーのTRD仕様も着々とテスト中だ。

4.8リットルV8ガソリンエンジンは、大排気量エンジンのトルクと6速ATとのマッチングもよく快適に砂丘を走れる

オフロードを楽しむオーナーは、よくマニュアルミッションを選ぶが、ドバイではATが主流だ。しかしただDレンジに入れているのではなくセミオートマ感覚で、自分でギヤを選択する。マニュアルミッションであればクラッチを切ってトラクションが抜けた瞬間にスタックしてしまうが、これであればその心配がない。これは楽だと楽しんで運転していたら同乗してくれたAFM社のスタッフが「かなりうまいね」と褒めてくれた。一応これでもダカールラリーに6回参戦し、サハラ砂漠やアタカマ砂漠、ゴビ砂漠といろんな砂漠を走ってきているのでというと「あっ、そうだったね」と笑ってくれた。このドバイの砂漠は、今まで走った砂漠より、砂の目が詰まった感じで走りやすく、スタックする気がしない。まず砂漠を走ってみたいというかたにおすすめの砂漠だ。

TRDの5本スポークホイールとシックなオーバーフェンダーが、ランドクルーザーが本来持つ高級感を活かして似合っている
ランドクルーザーの上の砂丘を見れば、風向きが左から右に吹いているのがわかる。左から右に走るほうが砂が風圧で締まっていて走りやすいが、たまにストンと切り立った砂の崖があるので注意が必要だ
まるで月に月面探索車が降り立ったような光景だ

TRDによってチューニングされたサスペンションは、オフロードで特によく機能し走りやすい。これは現地の方々も期待してリリースを待ち望んでいることだろう。もちろん私もおすすめする。

2台の相棒とともに楽しく砂丘を越えて高台へ

オフロードはやはり最低2台で走ることが大切だ。1台がスタックしたときすぐに引っ張り出すことができるからだ。今回は現地スタッフとともに行っていたが、1回だけ撮影のためにハイラックスを傾けて停めたらスタックしてしまった。あいにくこのハイラックスにはデフロックが装備されていない仕様だったので、ランドクルーザーで引っ張り出すことになった。しかしこうしたスタックも楽しめるのがオフロードの楽しさだ。

おもしろい撮影をしようと、傾けて停めてもらったらスタックしてしまった。おかげでこのような写真が撮れたが
牽引ロープでつなぎ、ランドクルーザーで簡単に引き出せた
そしてまた高台を目指して2台で再スタート

スタート時にはあんなに遠くに見えていた高台にやっと到着。しかしここは砂で急坂を登らなければならない。ハイラックスもランドクルーザーもトルクを最大限に活かしながら、何もなかったかのように登る。そして高台に登り、越えてきた砂丘のほうを見ると、壮大な砂漠が見えた。この光景は決して飛行機や電車では観られず、ハイラックスとランドクルーザーに乗ってきたから観られた光景だ。自分たちで運転して走ったデザートサファリ。やはり砂漠は運転して走るともっと楽しいことを思い出した。そしてノーマルのハイラックスでも存分に楽しめ、TRD仕様であればもっと快適に楽しめる。やはりトヨタの4WD車は、こういった地形を走ると最高にワクワクする相棒だ。

高台に登って振り返ると眼下にこのような風景が
砂漠を越え、満足げな顔をしながらハイラックスとランドクルーザーを見てみると、この2台の顔も同じように満足げに見えた

(写真/テキスト:寺田昌弘)

[ガズー編集部]