ランドクルーザーに乗って会社を知る <CV Company HUREAIイベント>

トヨタでは、2016年4月より製品軸のカンパニー制を導入しているが、そのうちのひとつ、商用車などを主に扱う「CV Company」が、自分たちが生産しているクルマの走りを体感しながら親睦を図ろうと、同グループのさなげアドベンチャーフィールドで<CV Company HUREAIイベント>を開催した。CV Companyの主なクルマは、SUV(ランドクルーザー200、プラド、FJクルーザー、4Runner(北米仕様)、海外生産のセコイア、フォーチュナー)、ミニバン(アルファード、ヴェルファイア、ノア、ヴォクシー、エスクァイア、エスティマ、海外生産のシエナ、イノーバ)バン(ハイエース、レジアスエース、プロボックス、サクシード、コースター)トラック(ランドクルーザー70、ダイナ、トヨエース、海外生産のハイラックス、タコマ、タンドラ)と多岐にわたる。今回はランドクルーザーを中心にオフロードを自分でドライブしてみたり、トヨタの自動車部オフロードチームのドライバーによる同乗体験など悪路走破性の高さを自分たちで確かめた。

観てわかったランドクルーザーの魅力

ランドクルーザーの開発責任者を務める小鑓貞嘉さん(製品企画本部 ZJ チーフエンジニア)に伺ったことがあるが、ランドクルーザーをフルモデルチェンジする場合、ボルト1本まで含めれば、約5,000人がクルマ作りに関わっているそうだ。だから内装の一部を担当しているかたもいれば、ドアノブやドアミラーを担当しているかたもいるだろう。自分が関わったクルマには特に乗ってみたい。またCV Companyでミニバンを担当していればオフロードを走る機会もない。今回初めてランドクルーザーに乗るかたもいれば、オフロード初体験というかたもいる。だからこのイベントは、カンパニー全体を知るためにも意義深い。週末開催なので家族連れで来てもらうためにも、子供たちも楽しめるアトラクションも用意されていた。

200名をゆうに越える参加者。アウトドアで1日楽しめるとあって笑顔で溢れている

最初は、CV Companyが誇るランドクルーザーの悪路走破性の高さを観てもらおうと、実際ランドクルーザーのテストドライブ、走りの味つけをしている上野和幸さん(車両技術開発部)がドライブし、岩石路を登る。トラクションやブレーキを最適に制御して4WD性能をより高める<マルチテレインセレクト>や、切り返しが必要なタイトコーナーでも回頭性を高めて鋭角に曲がれる<ターンアシスト機能>などを披露しながら走ると、参加者から「おぉ~」と驚きの声がたくさん上がった。

大柄なボディをものともせず、着実に登ってくるランドクルーザー

乗ってわかったランドクルーザーの高い走破性

ランドクルーザーの悪路走破性の高さを観たら、今度は自分達で乗ってみる。同乗試乗するランドクルーザー40、60、70の歴代のランドクルーザーは、自動車部を中心にランドクルーザー乗りの社員の愛車。その走りをぜひ体感してもらおうと、部署を越えて応援に駆け付けた。デモ走行したランドクルーザー200と異なり、これらのランドクルーザーには、電子制御などない。それだけに基本性能がわかりやすく、デモ走行と同じ岩石路を登って、途中滑って登れなくなったら、アクセルの踏み方やタイヤ位置をドライバーが調整しながら再度アタックして走破する。これで基本的な悪路走破性の高さがわかると同時に、電子制御の精度の高さも理解できる。クルマは走って当たり前と思っているなかで、見た目走れなさそうなモーグルや岩石路をタイヤを浮かしてでも走破することに参加者も大喜びだ。

手前の赤いのがランドクルーザー60。奥に見えるのがランドクルーザー70
車内は参加者も自動車部のスタッフも笑顔が絶えない
手前の黄色がランドクルーザー70プラド。奥の赤いのがランドクルーザー40。2台ともルーフがホワイトのツートーンでポップなスタイリングだが、走りはアグレッシブ
ランドクルーザーの信頼性、耐久性、悪路走破性の高さはもちろん、トヨタ車は壊れにくく乗っていて安心だと海外で印象づけた礎であるランドクルーザー40

そして今度は自分で運転してみる。さなげアドベンチャーフィールドのインストラクターが助手席からサポートしてくれるので安心だ。最初はステアリングを握る手にも力が入っているが、慣れてくると徐々にオフロードを走る楽しさが込み上げてくる。試乗を終えた参加者からは「見た目の印象より乗ってみると意外と車内は快適でした」「ランクル欲しくなりました」の声も。

まるで免許取り立ての頃のように、ドキドキしながらオフロードを走る

クルマ好きがつくるクルマのほうが面白いに決まっている。

ランチは参加者みんなでBBQ。週末を家族でこうして過ごすのはとてもいい。クルマと過ごす週末。今度はランドクルーザーにキャンプ道具を積んでアウトドアへ飛び出したくなるだろう。そして展示車を眺める社員のなかには、下回りを覗き込む社員が多い。やはりラダーフレームそのものに触れる機会も少なくなっているので、貴重な機会だ。

家族や同僚とBBQ。天気もよく最高のランチ
海外で販売されているハイラックスや、稀少なFJ40など、下回りや各部の作りをじっくり見ている社員も多い

そのなか、かなりのクルマ好きを発見。

岡部晋宜さん。CVボデー設計部で燃料系部品設計をしている。父親と叔父がシニアカートをやっていた影響で小学1年生から6年間ジュニアカートをやっていた。「もともとミハエル・シューマッハやアイルトン・セナが好きで、その姿を見た家族が始めさせてくれました」。戦績は振るわなかったが、それでもカートが大好きだった。「カートの面白さはやはりスピード感とオーバーテイクした時の優越感です。普段では感じられないスピード感の中で、自分の思い通りに相手をオーバーテイクできた時の感覚がとても好きです。普通自動車では味わえない感覚になれることが一番の魅力だと思います」。

そんな岡部さんは大人になるにつれ、カートやF1からクルマそのものに興味を持ち、自分の好きな乗り物を作ってみたいとトヨタに入社。「まだ入社3年目で、初めてのことが多く、何をやっても難しいと感じています。ただ燃料系部品は、安全に関わる部品で設計が難しく、車両前方から後方まで全体に部品が配置されているため、関係する周辺部品が多く、仕事を進める中でクルマ全体を見ながら設計できることはとてもおもしろいです」。今後の目標は、とにかく一人前の設計者になること、そして会社に貢献できる人になること。「その目標が達成できたら、ぜひレーシングカーみたいな速さを追求するクルマづくりにも挑戦できたらいいなと考えております。それに加えて海外で働きたいという気持ちもあるので、日本のみならず、世界で戦える設計者になっていきたいです」。

トヨタ車体の古川 裕作さん。内装設計部で主に内装設計をしている。幼少期には、スーパーカーカードを集め、ミニカーも大好きだった。「ラジコンにハマり、戦車、バイク、車のプラモデルにハマり、ガンダムのプラモデルにも熱中しましたが、とにかく子供の頃からクルマ好きでした」。大学では、ダイハツ・ミラターボでクルマを操ることに夢中になり、もちろん自動車部に入った。もうAE86三昧でした。解体屋を巡り、自分達でいろいろトライ&エラーでAE86を仕上げ、オートポリスはよく走りました」。当然アルバイトをしなければ、ここまで楽しめないはず。「トヨタレンタカーの夜間のクルマ移動のアルバイトをしていました。いろんなクルマを運転できるのが楽しくて、4トンロングのトラックまで乗りこなしました」。とことんクルマ好きの古川さんは、クルマだけでなく、ロボコン大学部門で全国準優勝もした。「やはりモノづくりが大好きで、絶対クルマづくりをするんだと研究室では、内燃機関の室に入り、菜種油に水を混ぜディーゼルエンジン回しまくってました」。

そして念願かなってトヨタ車体に入社。一貫してコクピット、インパネの設計を20年以上している。「昨年から副室長、主担当員となり、室の全ての車種に関わりながら、マネジメントや人材育成に励んでいます。剛性や動き物の質感など、感性品質に自分達ならではの拘りを持ちながら執念を持って設計にあたる。難しくもあり、おもしろい部分です」。もちろんプライベートでのクルマ好きは留まることを知らない。「年に4,5戦ある4時間耐久ダートレースに部活動として社内の仲間とスターレットやヴィッツで参戦しています。ガレージはないので駐車場での青空整備。自分達でクルマを作り、年5戦、毎年欠かさずエントリーしています」。一昨年はシリーズチャンピオンをゲットしたが、昨年は連覇できなかったので、今年は奪取すべく頑張っている。「サーキットレースもやっています、軽自動車で。クルマを全開で走らせたり、車重が軽いのでコーナリングも楽しく、ラインどりがシビアで楽しいです」。こちらも冬は6時間耐久、夏は10時間耐久レースがあり、クルマ好きの社員みんなで楽しんでいる。

「設計という仕事に従事してきて、自分達が苦労して開発してきたクルマを世の中に送り出し、我々のこだわりがお客様に通じたことを確認できたときの感動は得も言われぬものです。お客様の笑顔を見られたら、更にもっと、もっといいクルマを作ろうと勇気が湧いてきます」。
いつもチャレンジ精神を忘れない古川さん。自動運転やEVなど大きなうねりのなかで、きっともっといいCVを作り続けてくれるはずだ。このようにCV Companyには、クルマ好きがいる。

家族と楽しめるクルマづくりを目指す

SUVやミニバンなど、特に家族が一緒に乗るクルマを生産しているから、移動中も目的地に着いてからも楽しく快適に過ごせるかは重要だ。そのためには、まず自分たちも家族で楽しまなければ気づかないこともあるだろう。今回のイベントは、子供たちの笑顔がたくさん見られるよう、いくつものアトラクションがあった。

ダカールラリーに参戦しているチームランドクルーザー・トヨタオートボデーのブースでは、ラリー車展示と映像が楽しめる
さらにランドクルーザー200ラリー仕様のラジオコントロールカーで遊べる
参加者選抜でゴルフのパッティング競技を。中嶋エグゼクティブ・バイス・プレジデントも社員とともに挑む
こどもたちも競技に参加。みな真剣だ
ずばり借り物競走。お題は「アルファードに乗っている人」さすがにすぐ見つかった
子供たちは輪投げに綿アメなど夏祭り気分。お父さんと一緒に休日を楽しめて大満足

もっといいCVづくりを

人はもちろん、大きな荷物、仕事道具、スポーツアイテムなどを一緒に運べるプライベートからワークユースまで生活を支えるクルマを担当しているのがCV Company。台数規模で言えば、2015年実績でトヨタ全体の919万台のうち、262万台が、CV Companyのクルマだ。「世のため、人のため」に活躍するクルマは、質実剛健であることが重要だが、これだけ明るく、またクルマ好きの社員が多いので、さらにおもしろいSUV、ミニバン、トラック、バンを生み出してくれるだろう。そんな明るい未来を感じる楽しいイベントだった。

「世のため、人のため」、トヨタの「屋台骨」として「地盤をしっかりと固める」ことをミッションにCV Companyを引っ張る増井プレジデント
たくさんの笑顔とともに両手で「CV」

(写真:森 基泰 石川 正芳 松本 佳幸)
(テキスト:寺田 昌弘)

MORIZO on the Road