プリウスオーナーに知って欲しい 五大陸を走破したプリウスの旅の軌跡

オートモビルカウンシル2017のトヨタブースに展示された「プリウスという”新しい乗り物”で五大陸の環境最前線を巡った10年の旅」。過去テレビ取材などで海外を走り、パリ・ダカールラリーに日本人として初めて参戦した横田紀一郎さん率いるTeamACPが行った、プリウスをシンボルカーに世界中のエココンシャスなヒト・コト・モノに触れる旅だ。私もメンバーの一員として一緒に旅をした。そこではプリウスを通じて、世界の方々とつながり、持続可能な社会への取り組みを学ばせていただきながら、プリウスという日本発の量産型ハイブリッド車を知っていただく機会を得た。

トヨタブースに掲げられたTeamACPがプリウスとともに五大陸の環境最前線を巡った10年の旅模様
トヨタブースに掲げられたTeamACPがプリウスとともに五大陸の環境最前線を巡った10年の旅模様

「21世紀に間に合いました」のフレーズで1997年に誕生したプリウス。100年を超えるクルマの歴史のなかで、クルマはより快適に進化していった。ただ基本的な部分で、エンジンなど1つの動力があって、タイヤがあって、操舵、制動装置があることは変わりなく、特に電子制御が進化していった。そのなかガソリンエンジンとモーターというふたつの異なる動力がよりクルマをエネルギー効率よく走らせながら、アクセルを離したとき、制動時にエネルギーを回生し充電するかたちで回収する機構を持つ、まったく新しい乗り物として誕生した。このプリウスが初めて世に出たとき、みなさんはどんな印象を持っただろうか?クルマ業界で、日本がリーダーシップを取っていく、まさに「先駆け」という名のプリウスを観て、横田さんは身震いがしたと言う。そしてこのまったく新しい乗り物に乗って、世界を旅しながら、持続可能な社会の取り組みを観て回ろうと「ECO-MISSION」プロジェクトを立ち上げた。

ECO-MISSION@North America

1999年6月4日~7月9日
ロサンゼルス→ニューヨーク
総走行距離:11,940km

ロサンゼルスからスタートし、オレンジ郡ではサンホワキン・ヒル・コリドー(San Joaquin Hills Corridor)を取材した。環境省の魚類・野生生物保護局( Fish & Wild Life Services)やカリフォルニア州交通局(California Department of Transportation)、オレンジ郡、現地道路工事事務所(Transportation Corridor Agencies)などが協力して、できるだけ環境を破壊しないようなプログラムで道路を作った。湿地帯を再生したり、キツネの獣道をうまく残しながら道路を建設した。またパウエル湖にあるグレンキャニオンダムは、放水する水の温度を、ダムができる前の温度に近づけるよう内務省開発局が主導するプロジェクトをインタビューした。クラシックカーが走るグレートレースに、特別枠で一緒に走らせてもらったら、観客に大歓迎された。NASAでは日本人宇宙飛行士の若田光一さんとお会いし、クルマと環境について「約160人の宇宙飛行士がここで働いておりますけど、クルマ選びのポイントに環境というパラメーターを入れている人は、まだほとんどいないでしょう。家族の人数やペイロード、燃費くらいですか。これからプリウスで勉強したいと思います」。とお話しいただいたのが印象的だった。また環境問題関係者にとっては“教祖”的な存在といえるワールドウォッチ研究所 (World Watch Institute)のレスター・ブラウン博士にプリウスに乗っていただいた。「ベリー・スムーズ。スタイリングはグレート!」と感動してもらえたことが印象的だった。

ヒューストンにあるNASAでは、バイオプレックス(閉鎖生態系循環システム)や国際宇宙ステーションなど従来の消費型の宇宙事業ではなく、循環型システムについてインタビューした
ヒューストンにあるNASAでは、バイオプレックス(閉鎖生態系循環システム)や国際宇宙ステーションなど従来の消費型の宇宙事業ではなく、循環型システムについてインタビューした
プリウスもアクセルから足を離すと、まるで鳥が滑空するようにエネルギーを極力使わないようにすることでプリウスも燃費がよくなる
プリウスもアクセルから足を離すと、まるで鳥が滑空するようにエネルギーを極力使わないようにすることでプリウスも燃費がよくなる

ECO-MISSION@Europe

2000年9月22日~10月30日
ベルギー~オランダ~イギリス~フランス~モナコ~イタリア~スイス~ドイツ
総走行距離:9,400km

ベルギーを出発し、オランダでは北海沿岸の汚染で傷ついたアザラシを保護するレンネ・ハートさんや、フランスでは4,500本も植林を続けているエミリアン・ボニーニさんに会った。ナルボンヌでは、地中海沿岸の汚染を知るために地引き網をして取れた魚ではなくゴミを見て、一緒に引っ張った子供たちと話し合う環境学習に一緒に参加した。またモナコ公国やイタリア・フィレンツェ、ドイツ・フライブルグ、ベルリンの環境保全対策を取材した。ドイツのカールスルーエ教育大学ではビオトープの先駆者であるヘルムルト・ビルケンバイル教授にお会いし、頭で考え、心と体で自然に触れる体感学習の大切さを教えていただいた。

ベルギーのトヨタ・モーター・ヨーロッパは、建物全体が緑色にラッピングされ、プリウス一色だった(2000年当時)
ベルギーのトヨタ・モーター・ヨーロッパは、建物全体が緑色にラッピングされ、プリウス一色だった(2000年当時)
イタリア・ピサの斜塔前を走るプリウス
イタリア・ピサの斜塔前を走るプリウス

ECO-MISSION@Sahara

2001年1月1日~1月20日
フランス・パリ~スペイン~モロッコ~モーリタニア~セネガル・ダカール
総走行距離:7,268km

「21世紀の幕開けとともに自動車史に新たな轍をつけよう」とハイブリッド車による世界初のサハラ砂漠縦断に挑戦した。ハイブリッド車はどこまで強くたくましく走れるのか、日本発信の技術を日本人の手によって実証した。砂漠ではスタックしたり、ジャンプしたりと、クルマにとっては過酷な道なき砂漠が続いたが、フランス・パリを出発したプリウスは見事ノートラブルでセネガルの首都ダカールに到着した。

フラットダートを疾走するプリウス。ときにはジャンプすることもあった
フラットダートを疾走するプリウス。ときにはジャンプすることもあった
砂漠の奥地にあるモーリタニア・シンゲッティにて給油。燃料といえばドラム缶からホースで入れるしかない。サハラ砂漠にある村の燃料インフラの現状
砂漠の奥地にあるモーリタニア・シンゲッティにて給油。燃料といえばドラム缶からホースで入れるしかない。サハラ砂漠にある村の燃料インフラの現状
柔らかい砂地で何度かスタックした。スタッフ総出で押しながら脱出する
柔らかい砂地で何度かスタックした。スタッフ総出で押しながら脱出する
バオバブの木が生える地帯を縫うように走るプリウス
バオバブの木が生える地帯を縫うように走るプリウス

BEIJING-PARIS2007

2007年9月8日~10月4日
北京~パリ
総走行距離:13,715km

ユーラシア大陸を東から西へ。「北京-パリ1907ユーラシア大陸横断ラリー」開催から100周年を記念し、新たな乗り物でその道を辿った。中国・西安から蘭州では20時間も走行したり、ときには1日1,000km走る行程もあったが、ここでもプリウスはノートラブルで走破した。

中国・北京の天安門前を走るプリウス
中国・北京の天安門前を走るプリウス
ロシア・モスクワの赤の広場前を走るプリウス
ロシア・モスクワの赤の広場前を走るプリウス
フランス・パリの凱旋門前にゴールした
フランス・パリの凱旋門前にゴールした

South America ECO Journey

2008年9月15日~10月15日
エクアドル~ペルー~ボリビア~チリ~アルゼンチン
総走行距離:14,269km

今回はアンデス山脈を越える高さへの挑戦。南米大陸5カ国を縦断しながら、最高高度4,550mのアンデス山脈を越え、プリウスの高さへの適応力を実証した。

ボリビア・ウユニ塩湖にて。ここでも標高は3,500mもある
ボリビア・ウユニ塩湖にて。ここでも標高は3,500mもある

ECO Camp@Australia

2009年7月29日~8月31日
オーストラリア
総走行距離:13,494km

ハイブリッド車でアウトドア生活をしてみようと、オーストラリア大陸を1周。途中真っ赤なアウトバックのダートロードを1,200km走り、ブルダストと呼ばれる微細な砂塵を浴びながらも、プリウスはノートラブルで走り、キャンプを楽しいものにしてくれた。

オーストラリア・シドニーのオペラハウス近くからスタートした
オーストラリア・シドニーのオペラハウス近くからスタートした
オーストラリアでは、カンガルーやワラビイーだけでなく、飼い主のいないラクダがこうして飛び出してくることもある
オーストラリアでは、カンガルーやワラビイーだけでなく、飼い主のいないラクダがこうして飛び出してくることもある

プリウスでの新たな旅は続く

TeamACPは、その後もプリウスPHVやミライに乗り、日本を走りながら旅を続けている。代表の横田さんは「20世紀からプリウスに乗って世界の環境保全の現場を巡りましたが、そこでの人との出会い、そしてつながることでまわりに対して意識が生まれる。あの人のためにも、空気がきれいなほうがいいとか、汚さないようにしようとか。こうして人々がなかよくつながっていけば、私たちの環境はきっとよくなると思う。現在の愛車はプリウスPHVですが、これなら燃費がいいだけでなく、誰かのために電気まで運んでいける」と語る。1999年からプリウスを旗印に始まったTeamACPによる旅は、人と自然とクルマとの共生を目指して、エココンシャスなヒトとつながりながら五大陸を走破した。今度はプリウスPHVでどんなことをしようか、横田さんはいつも未来を夢描いている。

会場でインタビューに答える横田さん
会場でインタビューに答える横田さん

(写真:TeamACP・寺田昌弘)

(テキスト:寺田昌弘)

TeamACPホームページ:http://www.team-acp.co.jp/
プリウス生誕20周年特設サイト:http://newsroom.toyota.co.jp/prius20th/