大人気のハイラックス、プラド、FJクルーザー トヨタSUV徹底比較!

全国各地のトヨタ販売店やアウトドアイベントで開催される「ランドクルーザーフェス」。今年は新型ランドクルーザープラドの登場やハイラックスの国内販売復活と、トヨタのSUVシリーズは話題も豊富でユーザーから注目度が高い。このイベントでは、インストラクターがドライブするランドクルーザープラド、ランドクルーザー、ハイラックスそしてFJクルーザーに同乗し、階段を上ったり、急坂を下ったり、丸太を乗り越えたりと、ふだん体験できないこれらSUVの悪路走破性の高さを体感できます。先日茨城トヨタで開催された「サポカー&SUV体感フェア」にて私もインストラクターをさせていただいたので、同乗したお客様の反応やそれぞれのSUVのインプレッションを紹介します。

階段を上るミッションもポッシブル!

今回はランドクルーザープラド(TZ-Gクリーンディーゼルエンジン車)、ハイラックス(グレード:Z)そしてFJクルーザー(オフロードパッケージ)がラインナップ。お客様は自分の乗りたいクルマを選択します。まずは1段約15cm、傾斜角約25度の階段を上っていきます。フラットなスロープであれば、ハイグリップタイヤを履けば上れるクルマもあると思いますが、階段なのでタイヤの接地面積が少ないため、サスペンションの路面追従性のよさや低回転からトルクがしっかり出る動力性能が必要です。後ほど車種ごとに解説しますが、どれも軽々と上っていきます。

プラドとハイラックスは2リットルクラスながらディーゼルならではの、FJクルーザーは4リットルガソリンならではの太い低速トルクで着実に階段を上る
プラドとハイラックスは2リットルクラスながらディーゼルならではの、FJクルーザーは4リットルガソリンならではの太い低速トルクで着実に階段を上る

ランドクルーザープラドの車内でお客様との会話の一例を紹介―
お客様「階段なんて上るんですか?」
寺田「クルマで階段を上るなんて、映画の世界みたいですよね。ドライバーはトム・クルーズとか。そう一般的なクルマであれば、階段を上るなんてミッション・インポッシブルです。しかしこれらトヨタのSUVであれば、このミッションもポッシブルになるんです!プラドに搭載されているディーゼルターボエンジンは1,600rpmで450N・mの最大トルクが得られるので、アクセルを大きく踏まなくても安定して上れます」

一段ずつ階段を上っていくと―
お客様「うぁっ、前の階段が見えなくなって空しか見えない!」
寺田「大丈夫です。死角となっているフロントやサイドがこうして画面で確認できるマルチテレインモニターがありますから。安全にゲーム感覚でドライブできます」
お客様「なるほど。これなら大丈夫ですね」

今度は坂を下っていくと―
寺田「たとえば泥や雪で滑りやすい坂をゆっくり下る場合、クロールコントロールのボタンを押せば、アクセル、ブレーキを操作せず、ドライバーはステアリング操作だけに集中でき、安心して下れます」
お客様「こんな急坂も下れるんですね。でもこのまま降りるとバンパーが地面にぶつかるのでは」
寺田「この坂は25度くらいですが、プラドのアプローチアングルは31度なので、まだまだ余裕です」

アプローチアングル比較。FJクルーザーが一番角度に余裕があることがわかる
アプローチアングル比較。FJクルーザーが一番角度に余裕があることがわかる

このような感じで、機能体感をしていただきながら、その場で解説をしているので、お客様も頭だけでなく体で理解できるのでとても好評です。

個性豊かなトヨタのSUV

信頼性、耐久性、悪路走破性の高さは、世界が認めるトヨタのSUV。今回の3車種に共通していることがいくつかあります。まず4WDにHモードとLモードがあること。ATとは別にサブトランスファーがあり、通常の雪道やダート路ではHモード、急坂やモーグル、岩石路など短い距離で大きな昇坂力が必要な時にはLモードが選べます。そしてラダーフレームにボデーが載るタイプであること。路面からの衝撃や振動をサスペンションだけでなく、ラダーフレームでも軽減してくれ、ボデーに伝わりにくくします。世界の道なき道に鍛えられているSUVですが、乗り比べてみると外観と同様に走行性能にも個性があります。私が国内外でドライブしてきた経験をもとに、それぞれの特徴を紹介します。

オールラウンダーなランドクルーザープラド

前モデルより落ち着いたフロントデザインで上質感が増したプラド
前モデルより落ち着いたフロントデザインで上質感が増したプラド

ランドクルーザーシリーズのライトデューティーを担うプラドは、1985年にランドクルーザー70系からワゴンタイプとして派生したランドクルーザーワゴンを起源に、70系、90系、120系150系と進化を遂げています。2009年のダカールラリーに片山右京選手のナビゲーターとして乗ったマシンがプラドでした。ライトデューティーとは言うが強靭さはダカールラリーで完走はもちろん、市販車部門で優勝するほどの実力がある。また以前ニュージーランドへTV番組取材に行ったとき、監督のイメージ通りの走りをするために丘陵地の道なき道を走ったり、何本も川を渡ることになりましたが、プラドは思い通りの走りをしてくれました。

  • 2009年、南米大陸で初開催となったダカールラリーに片山右京選手とコンビを組んで参戦
    2009年、南米大陸で初開催となったダカールラリーに片山右京選手とコンビを組んで参戦
  • ニュージーランドの大自然を撮影するネイチャーフォトグラファー柏倉陽介氏をテーマにディスカバリーチャンネルで番組制作をするため、プラドと一緒に大自然のなかを走った
    ニュージーランドの大自然を撮影するネイチャーフォトグラファー柏倉陽介氏をテーマにディスカバリーチャンネルで番組制作をするため、プラドと一緒に大自然のなかを走った

これらは前モデルの3リットル直列4気筒ディーゼルターボエンジン(1KD-FTV)でしたが、現行プラドは2.8リットル直列4気筒ディーゼルターボエンジン(1GD-FTV)になり、排気量が小さくなってもパワー、トルクともにアップ(最高出力/125kW→130kW。最大トルク/352Nm→450Nm)。さらに厳しい排ガス規制のEURO6をクリアするクリーンディーゼルエンジンです。また燃料消費率は、JC08モードで11.8km/l(TZ-Gは11.2km/l)ですが、実際高速道路を定速走行すると12km/lを超え、軽油なのでガソリンより安くお財布にやさしいエンジンでもあります。

丸太に乗り上げて走ると、3台中プラドが車内に一番衝撃を伝えず、とてもジェントルな走りをします。対角線上にタイヤが浮いてしまうようなモーグル状の障害物を越えるときは、クロールコントロールを使えば、ドライバーはマルチテレインモニターを確認しながらステアリングだけ操作すれば簡単に走破できます。マルチテレインセレクトを使っても楽々走れます。オフロード初心者でも、電子デバイスをうまく活用すれば走破性の高さを活かせます。

  • プラドの前後、リヤサスペンションの動き
    プラドの前後、リヤサスペンションの動き

ライフスタイルの幅を広げてくれるハイラックス

押し出しの強いフロントマスクのハイラックス
押し出しの強いフロントマスクのハイラックス

すでに世界累計約1730万台も販売されているハイラックスは、世界的にはワークユースが主でしたが、この8代目ハイラックスはワークにも使えるSUVといった上質感溢れるピックアップです。ドバイの砂丘をGDエンジンのハイラックスで走りましたが、車両重量がプラド(TZ-G)より220kg軽いので、勢いをつけなくても軽々と走れます。チリやタイではフラットダートを走りましたが、ホイールベースが長いので直進安定性がよく高速走行も安心して走れます。

  • ドバイの砂丘はガソリンエンジンのランドクルーザーでも走ったが、やはりディーゼルエンジンのハイラックスのほうが、低速でもしっかりトルクが出るので走りやすい
    ドバイの砂丘はガソリンエンジンのランドクルーザーでも走ったが、やはりディーゼルエンジンのハイラックスのほうが、低速でもしっかりトルクが出るので走りやすい
  • チリの土漠を縦横無尽に走る。フラットダートも安定していてドライビングも楽しくなる。思わず車速も上がる
    チリの土漠を縦横無尽に走る。フラットダートも安定していてドライビングも楽しくなる。思わず車速も上がる

ハイラックスはピックアップのグローバルスタンダードサイズで、全長が5mを超えますが、最小回転半径で比較すると、ハイラックスが6.4mでFJクルーザーが6.2mと20cmしか変わりません。愛車として乗るようになれば、取り回しもあまり気にならないレベルだと思います。エンジンの2.4リットル直列4気筒ディーゼルターボエンジン(2GD-FTV)は軽量コンパクトでレスポンスがよく、6速オートマチックトランスミッション(6 Super ECT)との相性もよく、プラド(1GD-FTV搭載車)と比較してギヤ比も高いので、高速走行も排気量を感じさせない走りが可能です。

丸太に乗り始めるとリヤサスペンションがリーフスプリングなので、荷台に荷物が載っていないとほかの2台と比較して突き上げ感があります。ホイールベースが長い分、ほかの2台と比較すれば対角線上にタイヤが浮きやすいですが、Zグレードにはアクティブトラクションコントロール(A-TRC)が装備されているので、ボタン操作はいらずアクセルを踏んでいれば、空転するタイヤのみブレーキをかけ、接地しているタイヤにしっかり動力を伝達するのでまったく心配はいりません、さらにリヤデフロックもありますので安心です。気をつけなければならないのは、Xグレードには、これらの装備はないので、あくまでスタイルや雪道、河川敷などのオフロードであればXでもよいのですが、スタックしたら脱出させるのに、高度なドライビングテクニックが必要となるため、私はZグレードをおすすめします。

  • ハイラックスの前後、リヤサスペンションの動き
    ハイラックスの前後、リヤサスペンションの動き

高いオフロード性能と個性的なスタイルのFJクルーザー

丸目ランプとTOYOTAマークがレトロモダンな雰囲気を醸し出すFJクルーザー
丸目ランプとTOYOTAマークがレトロモダンな雰囲気を醸し出すFJクルーザー

オフロードファンドライブが人気のアメリカ。砂丘や岩盤路などバリエーションに富んだ大自然の地形が点在し、休日のアクティビティーのひとつとして楽しまれています。そのアメリカのオフロードファンのために誕生したFJクルーザーは、日本で生産されていましたが4リットルV6ガソリンエンジン搭載のアメリカ人が好きな4WDとして大人気となりました。そして日本でも発売。丸目ランプに4ドアですが2ドアに見える個性的なデザインが、若者にも人気となりました。中東や中国でもオフロードカーとして根強い人気があります。
私はアジアクロスカントリーにFJクルーザーで、哀川翔さんやヒロミさんとともに2回参戦しました。タイ、ラオス、カンボジアの細い農道や淀んだ川渡り、田んぼから溢れた水で畦道も田んぼのなかのような泥沼のルートに苦戦しながらも入賞しました。南米大陸ではチリからアンデス山脈を越えアルゼンチンまで行きましたが、標高4,000mを超える高地でも大排気量エンジンならではのパワーとトルクでストレスなく走りました。

  • 2013年、2014年と参戦したアジアクロスカントリーではこうして泥のような川をいくつも渡った
    2013年、2014年と参戦したアジアクロスカントリーではこうして泥のような川をいくつも渡った
  • 標高4,000m超えのチリとアルゼンチンの国境近くにて。後ろには南米大陸最高峰のアコンカグアが見える
    標高4,000m超えのチリとアルゼンチンの国境近くにて。後ろには南米大陸最高峰のアコンカグアが見える

FJクルーザーは、同じ17インチホイールを履く他2車のタイヤの偏平率が65に対し、70とサイドウォールが高く空気量が多いことから、よりオフロードを意識した設定になっています。アプローチアングルもプラドが31度、ハイラックスが29度に対し、34度と悪路へのエントリーがしやすい設計になっています。丸太を越えていっても、トレッドがプラドより20cmも広いので、プラドが30度に横に傾く場所でも、そこまで傾くこともなく安心感があります。

搭載している1GRエンジンはガソリンエンジンですが、アイドリング時でもトルクフルで丸太も軽々越えていきます。ただ一般道ではATが5速であったり、4リットルガソリンエンジンだからアクセルを多く踏めば燃費も悪くなります。しかしアイドリング時の静粛性がとてもいいのが魅力です。

  • FJクルーザーの前後、リヤサスペンションの動き
    FJクルーザーの前後、リヤサスペンションの動き

同乗したお客様は、SUV体験に大喜び

2日間、170組のお客様に同乗体験をしていただきましたが、やはりお客様の声で一番多かったのは、階段や丸太などクルマで乗り越えられるなんてすごいということです。またスキーやスノーボードを楽しむゲレンデへのアクセスが安心だったり、駐車場で雪に埋もれても脱出できる走破性の高さを想像しながらとても魅力を感じていました。ただ、ふだんこのような箇所を走ることがないから、という方もいます。その方には、これらトヨタのSUVは世界基準で作られていることをお話します。たとえばオーストラリアや南米では、生活道路に凸凹の未舗装路があり、仕事で走る人だけでなく、お母さんがスーパーに買い物に行くときにも安心して走れる走破性が求められます。ときには川を渡ったりすることも。ここ数年、日本でもゲリラ豪雨など予期せぬ天候で、道路が冠水することも多くなってきました。そんなときは走らないに越したことはないですが、外出先から帰宅しなければならないときなど、安全率が高いことは世界の道で実証されています。ふだんは目立たないですが、何かピンチになったときに本領を発揮してみんなを助けてくれる。そんなときに頼りになるのは人もクルマもかっこいいと思います。ランドクルーザープラドやハイラックス、FJクルーザーは、そういった何かあったときに頼りになる相棒です。もし今度お近くでランドクルーザーフェスが開催されたらぜひトヨタのSUVの、悪路走破性の高さを体感しに行ってみてください。

スタイリングだけでなく走りにも個性が光るトヨタのSUV。世界の道で鍛えられたクルマは頼もしく、そしてかっこいい
スタイリングだけでなく走りにも個性が光るトヨタのSUV。世界の道で鍛えられたクルマは頼もしく、そしてかっこいい

(テキスト:寺田昌弘)
(写真:柏倉陽介・MARIO JOSE SATO・山本和彦・寺田昌弘)