オフロードモータースポーツが集結し、地域を盛り上げる。京都・城陽市の若者たちの取り組みとは
毎年、京都府城陽市で開催される「Joyo Super Jump Extreme by Motorsports」に、昨年に引き続き参加させていただきました。全日本ラリー選手権やダカールラリーで活躍するドライバーがオフロードを疾走し、全日本トライアル選手権チャンピオンが卓越した技を披露、フリースタイルモトクロス(FMX)ライダーが大空高く舞う、オフロードモータースポーツが一同に集う、他に類を見ないオフロードイベントです。今回で3回目を迎えるこのイベントは、イベント会社が運営するのではなく、地元城陽市商工会議所青年部(以下、城陽YEG)が地元をオフロードモータースポーツで盛り上げるために運営しています。一般的には商工会議所といえば、会員どうしの情報交流が主な役割かと思っていましたが、ここまで大掛かりなイベント、しかもオフロードモータースポーツの選手、マシンを活用しながら地域を盛り上げていこうと、とてもユニークな活動をしています。
京都といえば、歴史的な建造物や街並み、風情を楽しみに来る観光客は多く、隣の宇治市には世界遺産の平等院鳳凰堂がありますが、残念ながら城陽市には修学旅行で行くようないわゆる代表的な観光遺産がありません。しかも人口約7万人と決して大きな市でもありません。しかしサッカーJ2の京都サンガF.C.の練習グランドがあったり、スポーツとはとても縁ある市です。そして広大な土砂堆積場があるので、ここを活用して城陽ならではの地域活性イベントができないかと地元の若者たちが立ち上がりました。
このイベントの実行委員長を務める城陽YEGの福永じゅんさんは、現在全日本ラリー選手権で活躍する城陽市出身の福永修選手の弟。そこでラリーカーを走らせようということになり、それだけに限らずオフロードモータースポーツ全般に広げていくことになりました。さらに「ジャンプ」にもこだわり、FMXだけでなくラリーカー用にもジャンピングスポットを用意しました。地元を盛り上げようと奮闘する城陽YEGの思いに賛同し、オフロードを舞台に活躍する選手たちも集まりました。
そして行政が応援してくれるだけでなく、城陽YEGメンバーが、告知ポスターを持って、1軒1軒市内の飲食店からコンビニエンスストアまで告知協力をお願いして回っているので、いたるお店にポスターがあり、回数を重ねるごとに町を挙げて応援してくれていることが伝わってきます。
有料イベントですが第1回は1,500人の観客を集め、年々来場者が増え、城陽市ならではの人気イベントに成長しています。選手たちの華麗な走りを観たり、同乗体験をするだけでなく、モータースポーツ関連ブースの出店があったり、城陽YEGメンバーが、食べ物や飲み物のブースを出したりして来場者の心とお腹を満たしてくれます。とても手作り感溢れるイベントです。
ラリーマシンが目の前で迫力の走りを披露
全日本ラリー選手権のトップカテゴリーであるJN6で、毎回優勝争いをしている新井敏弘選手、奴田原文雄選手、そしてイベントの発起人でもある福永修選手がラリーカーを持ち込み、選手権さながらの走りを披露しました。コースが見渡せるので、観客は目の前を疾走する光景や、大迫力のコーナリングそしてジャンプを目の当たりにできて大喜び。同乗走行もありましたが、枠が少なくプレミアムチケットとなり、幸運にも助手席に乗れた来場者は大興奮。ジャンプしたり、オフロードで砂塵を巻き上げながらドリフトし続ける初体験に驚いていました。
- 福永修選手/三菱ランサーエボリューションX
- 新井敏弘選手/スバルWRX STI
- 奴田原文雄選手/三菱ランサーエボリューションX
ハイラックスとプラドにダカールドライバーが乗ると
京都トヨタコーナーは、ふだん店舗の試乗車であるランドクルーザー、ランドクルーザープラド、ハイラックス、FJクルーザーを持ち込み、ダカールドライバーの三橋淳選手監修のオフロードコースが走れるコンテンツを用意しました。インストラクターは、京都トヨタのスタッフ。前日三橋選手や私からレクチャーさせていただき、当日はお客様を乗せ、1周目は京都トヨタスタッフがドライブしながら、ドライビングのコツやクルマの機能解説を同乗走行しながら案内します。2周目からは、お客様がステアリングを握り、実際オフロードを走ります。オフロードを走ったことがないお客様も、クルマが傾いたり、泥ねい路を自分でドライブしながら走れることに大興奮でした。
さらに三橋選手や私がドライバーを務め、市販車のプラド、ハイラックスでどこまでスポーツ走行ができるか、お客様に同乗体験していただくコーナーも。自分が運転したときとは次元の違う走りに、車内は絶叫と興奮が広まって盛り上がりました。
- 三橋淳選手/トヨタランドクルーザープラド
- ドライバーもお客様も笑顔
- 寺田昌弘/トヨタハイラックス
- 激しく走っても車内は安定しているのがわかる
- ハイラックスやプラドは泥が似合う
- トヨタのSUVの楽しさをお客様に伝えた京都トヨタブースのメンバー
バイクも空を舞い、ダートを疾走
日本を代表するFMXライダーの釘村孝太選手をはじめ、TEAM THUGWAYが数々のトリックを決めながら大空を舞い、全日本モトクロス選手権参戦中の国際A級ライダーで弱冠18歳の浅井亮太選手、フラットトラックで日本の第一人者である平尾雄彦選手がダートを疾走。そしてトライアル国際A級スーパークラス5年連続チャンピオンの小川友幸選手と、同じく国際A級スーパークラスに参戦する藤原慎也選手がトライアルショーを披露しました。
- トライアル国際A級スーパークラスの小川友幸選手(左)と藤原慎也選手(右)
- 解説をしながらコンクリートブロックを軽々と登る小川選手
- FMXはこれくらい高く飛ぶ
- モトクロス国際A級ライダーの浅井亮太選手(左)とフラットトラックライダーの平尾雄彦選手(右)
- 子供たちがバイクに乗れる体験コーナーも。これからが楽しみだ
サッカーのJリーグ、バスケットボールのBリーグなど地域に根付いたスポーツチームを応援したり、市民マラソンのように参加型スポーツで街が盛り上がるように、TGRラリーチャレンジやこの「Joyo Super Jump Extreme by Motorsports」のようなモータースポーツが、同じスポーツとして地域とともに盛り上がるイベントとして根付いてくれることを、モータースポーツに関わるひとりとしてこれからも応援していきます。
- 恒例となった来場者と一緒に記念撮影
(テキスト:寺田 昌弘)
(写真:倉田 竜史・長田 美佐子)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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