「町いちばんの楽しいクルマ屋さん」を目指す、ネッツ東京の社員走行研修会
2013年よりモータースポーツ活動を開始し、Vitz Raceや86/BRZ Race、ラリーチャレンジに参戦しているネッツ東京。現在も世田谷にあるGR Garage東京若林をベースにネッツ東京レーシングとして、86/BRZ Raceのプロフェッショナルシリーズに脇阪寿一選手、クラブマンシリーズに社員の水谷大介選手、Vitz Raceには長野オリンピックのスピードスケートで金メダルを獲得した清水宏保選手、社員の長山等選手が参戦。そしてTGRラリーチャレンジにはTOYOTA 86で塚本奈々美選手と私がコンビを組み、また長山等選手がコ・ドライバーを務め、毎回異なる社員ドライバーがアクアで参戦しています。単にモータースポーツ活動をするだけでなく、今までモータースポーツの現場で得た体験をお客様によりクルマの楽しさを伝える情報のひとつとして活用しています。
そして、GR Garage東京若林のメンバーが中心となり、ネッツ東京全体でもっとクルマの楽しさを乗って体感しようと社員走行研修会も行われています。第5回となる社員走行研修は、筑波サーキットのコース1000を舞台に各店の若手営業職が中心に参加しました。
- 各店から試乗車に乗って筑波まで。このドライブもクルマを知るいい機会になる
GRの頂点、GRMN Vitzにも乗れる!貴重な体験
2日間にかけて行われた研修ですが、サーキット走行とラリー体験、そしてGR講座と3つのプログラムが用意されました。サーキット走行の試乗車として、TOYOTA 86は標準とGR、VitzはGR SPORTと国内150台限定のGRMN、さらにGR SPORTのアクア、プリウスPHVをラインナップ。インストラクターは、社員ドライバーの水谷選手、長山選手とVitz Raceに参戦している茂古沼選手が加わり、サーキットを走るコツを伝授します。
- 試乗前に走行研修のねらいや安全に関する諸注意など、ブリーフィングが行われる
ブリーフィングを終え、さっそくサーキット試乗へ。まずはコースの慣熟走行をしてレイアウトやラインどりなどを覚えます。6台ある試乗車から3台を乗り比べられます。サーキットを走った経験がある社員は少なく、慣熟走行だけでもワクワクしているのが表情から伝わってきます。レーシングドライバーの先導で走り始めると、最初はゆっくり走っていましたが、徐々にペースが上がるとともに頬っぺたも上がり、笑顔になっているのがわかります。ふだん試乗車で乗っているVitzやプリウスPHV、TOYOTA 86とGR SPORTの乗り味がまったく異なることにみな驚いていました。なぜ同じクルマでこんなにも剛性が高く、乗り心地がよく、なによりドライビングしていて楽しいのか。標準車とGR SPORTとの差をしっかり体感しました。
- Vitz Raceに参戦しているVitzにレーシングドライバーが乗って先導する
- 周回を重ねることに徐々に車速を上げる
- サーキット走行のインストラクターを務める社員ドライバーの水谷選手。シート合わせやステアリングの回し方、アクセル、ブレーキの踏み方など細かくレクチャーする
- TOYOTA 86 GRの走りのよさを実感
- GRMN Vitzはコーナリングでもクルマの姿勢が乱れずスタビリティが高いことが外から観ていてもわかるほどだ
- TOYOTA 86は、標準車とGRとの乗り比べができる。参加者はみなその差に驚いていた
- Vitzを知り尽くしている水谷選手、長山選手、茂古沼選手による同乗走行も実施。Vitzの運動性能の高さ、速さに驚く
GRの開発者がクルマに込めた思いを語る
- 宍戸主査、佐々木主幹によるGR講座。開発者から思いを聴けて勉強になる
今回はTOYOTA 86の開発責任者である宍戸主査やVitz GRMNの佐々木主幹が参加し、それぞれが担当されたクルマへの思いを伝えてくれる特別講座が開催されました。TOYOTA 86と言えば、以前100台限定の86“GRMN”が走りを愛する方々に注目されました。当時648万円で発売されましたが、もう少し価格を抑えたモデルが欲しいという声に応え、86 GRが誕生しました。走る、曲がる、止まるをしっかり支えるためにGRMNで培ったノウハウを活かしています。フロント、リヤにブレースを追加して剛性を高め、専用チューニングされたSACHSアブソーバーと10mmローダウンのコイルスプリングを装着することで的確な路面追従性、コーナリング時の安定性を高めています。またフロントにフローティングタイプの大径ディスクブレーキをインプットすることで、コントロール性の高いブレーキングが楽しめるだけでなく、サーキットやワインディングの下りなど、負荷が長くかかっても安心な設計になっています。標準車シリーズのGT limitedとの差とどのようなお客様に向いているかなども宍戸主査が解説してくださり、営業スタッフも納得していました。
- TOYOTA 86 GRの味付けのほか、GT Limitedなど標準グレードとの差などを解説
GRMN Vitzは、すでに予約受付は終了していて、これから新車購入することはできませんが、GRMNのフィロソフィーを体感してもらいたく、今回試乗車に加わっています。佐々木主幹は、TOYOTA GAZOO Racingが現在YARIS(日本名:Vitz)でWRC(世界ラリー選手権)を戦っていることから、やはりさらに小気味よく走るVitzに乗っていただきたかったとのこと。私も乗ってみたのですが、どこかに強烈なインパクトがある、クセのあるクルマではなく、非常に高い次元でバランスが取れたクルマでした。コンパクトサイズでありながら直進安定性がよく、コーナリングもイメージ通りのラインをトレースし、コーナー出口へクルマ自体が前に押し出してくれる感じでドライビングしやすい。路面追従性がとてもよく、路面の情報がドライバーにしっかり伝わってきます。
参加者はみな開発者のクルマへの思い入れにとても感動していました。
- コンパクトなスペースにうまく搭載できたエンジン。佐々木主幹はモータースポーツ系エンジニアとして長年勤務するスペシャリスト
- 開発者の話を聞き、それでさらに興味を持ち質問に行く社員にしっかり応える宍戸主査
- RECAROも研修に参加し、シートについて解説
- ガナドールはマフラーの作りや重量を、製品を持ち上げて体感してもらったり、マフラー交換による音質の変化を体感できる映像も用意。今回の試乗車にも数台装着していた
初体験のラリーに興奮。そしてアクアに驚く
- ラリーチャレンジに参戦する2台のマシン。今回はアクアに乗ってラリーを体験
サーキット走行では市販車に乗りましたが、ラリー体験では、実際ラリーチャレンジに参戦しているアクアに乗ってもらいます。走るのは、パイロンで作られた約300mのSS。最初は長山選手がドライバーで、参加者はコース図を見ながら、長山選手にパイロンの回り方を指示するコ・ドライバーを務めてもらいます。やってみると、これが思うように指示ができません。みなさんクルマを降りてくると、ドライバーが走りやすいタイミングでルートの指示を出すのがとても難しく、コ・ドライバーって大変な仕事をしていることがわかったと感心していました。次に参加者はドライバーになり、私がコ・ドライバーとして乗り込みます。パイロンの手前からどんどん指示を出し、180度以上ターンするところでは、ドライバーの見えるところに右手を出して、次にどの角度へ向かうか指示しました。すると、すごく走りやすいと喜んでくれ、ラリーがおもしろいと言ってくれました。
- アクアのスポーツ性能のよさを楽しむ
- パイロンを使って駐車場スペースにショートSSを用意
走って、聞いて、さらにクルマの楽しさを体感する
- 自分でドライビングを楽しんだり、GR講座を聴いて、気づいたこと、学んだこと、思ったことなどを参加者で出し合って共有し、今後のお客様とのコミュニケーションに活かす
3つのプログラムを終え、参加者から出てきた感想は、「標準車とTOYOTA GAZOO Racingが手掛けたクルマでは乗り味がかなり異なり、価格差以上の楽しさが得られる」「GRMN Vitzが想像していたよりとてもマイルドなレスポンスで乗っていて楽しかった」「ラリーのコ・ドライバーを初めて体験したが、事前に進行方向をドライバーに伝えるコ・ドライバーのように、ふだんの試乗でもルートをお客様に事前に伝えたら、お客様も安心して運転していただけるし、クルマの解説もしやすくなる」「86やGRMN Vitzの開発者の話が聴けて、これだけクルマに思い入れのある開発者が作ったクルマだから、思いっきりお客様におすすめできる」などさまざまな感想が出ました。
こうしてサーキットでより高い次元でクルマの素性を体感し、お客様に伝える。ネッツ東京の社員走行研修は、「町いちばんの楽しいクルマ屋さん」をGR Garage東京若林だけでなく、すべての販売店で目指そうという意欲がとても伝わってくるものでした。
- 今回のインストラクター陣。それにしてもGRMN Vitzは走らせるのが楽しいクルマでした
(文/寺田 昌弘)
(写真/蝦名 重俊・小川 直子(ネッツ東京))
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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