飛騨高山の山間にRC Fの咆哮が轟く! ~全日本ラリー第9戦~
3月に新城ラリー、5月には久万高原ラリーと全日本ラリー選手権に、“LEXUS RC F”で石井宏尚選手(トヨタ自動車 田原工場勤務)とともに参戦し、今年3度目となる『第47回M.C.S.C.ラリーハイランドマスターズ2019』に参戦するため、岐阜に向かいました。あいにく、大型台風が関東にくる予報があり、地域によってはラグビーワールドカップやF1など、土曜日のスポーツイベントが中止になることが事前告知され、私たちも覚悟しながら、金曜日のレキに出発しました。
装いも新たにラリーに挑む
今回からマシンの“RC F”は、スタイリングを一新しました。5月13日にマイナーチェンジした外装に交換し、さらにカラーリングを施し、レーシーなスタイルに。これはレクサスカンパニーのデザイナーたちが「HUREAI(ふれあい)活動」の一環でデザインコンペをして描いてくれました。
プライベーターの私たちに、プライベートの時間を使ってデザインしてくれたデザイナーたちに感謝です!このカラーリングを見て、ほかのチームやオフィシャルの方々が、「全日本ラリーにGTカー、いやっS耐(ピレリスーパー耐久シリーズ)マシンが乗り込んできた!」ととても喜んでくれました。
元々5リッターV8サウンドからしてラリー界では異次元と、みなさんから驚かれていて、さらに見た目も押し出し感がアップし、注目度はかなり高くなりました。LEXUSの“F”は、2007年のIS Fの発売から「公道からサーキットまでシームレスに走りを楽しめる」が開発テーマですが、公道でそのままラリーをするにもぴったりのマシンです。
LEG1は開催されたが、午後は中止に
金曜のレキではまだ雨もなく、SS途中で山から染み出るウェット路面の位置をチェックするも、本番は、すべてウェットになるんだろうなと。ただこういうところは川みたいになるだろうから注意が必要です。
幸い、台風からは山を隔て、かなり離れた飛騨高山ですが、かなり雨量もあり、主要チームの監督たちが主催者に掛け合ってくれましたが、JAFは開催を決定。私たちがサポートでお世話になっているCUSCOの長瀬さんは「選手はマシンに乗っているけど、それよりギャラリーステージで待ってくれているラリーファンやオフィシャルがかわいそうだ」とラリー全体のことを考えてくれていました。
ウェット路面では、私たちの“RC F”は、ビッグパワーが活かせなかったり、車重がほかのマシンに比べて重いため、かなり不利です。そこでDUNLOPが、以前、フォーミュラマシン用に作ったスーパーレイン用のタイヤを出してくれました。ウェットでも発熱してグリップし、排水性が、かなり高いパターンで心強いのですが、路面が乾くと一気に終わってしまうため、これは賭けでした。そして土曜のLEG1をスタートします。
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- 雨降る中、セレモニアルスタート
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- LEG1は川になっていたり、水溜まりがあったりとエキサイティング!
私たちのJN2には、すでにクラスチャンピオンを決めている『TOYOTA GAZOO Racing』の眞貝知志/安藤裕一組の“Vitz GRMN”と、元F1ドライバーでSUPERGT GT500に参戦しているヘイキ・コバライネン/北川紗衣組の“GT86R3”が参戦し、なんとか一矢報いたいところですが、やはりウェットでは歯が立たず、100を超えるターンがあるSS1(9.57km)では、クラス1位のヘイキ/北川組に40秒の大差をつけられてしまいました。
それでも選んだタイヤは、大正解でグリップ感もよく、安定した走りができています。石井選手がタイヤの感覚を掴めてくると、SS2(6.19km)では17秒差、SS3(6.11km)では21秒差と徐々に差を縮めていきます。前半を終え、サービスに戻ると、ここで午後がキャンセルになると発表されました。ひとまず安堵し、台風情報を観ながら明日のLEG2に向けて作戦を立てます。
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- へイキ/北川組の『GT86R3』。ときにはJN1の4WD勢に肉薄するほど速い
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- 眞貝/安藤組の『Vitz GRMN』。ベテランコンビで盤石の体制
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- ギャラリーステージに現れる約300mのグラベル
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- ギャラリーに喜んでもらおうと派手に走る
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- 『RC F』がグラベルを走っているだけで異次元
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- LEG1の午後がキャンセルとなり、そのままパルクフェルメに
LEG2のタイヤ選択が功を奏しクラス3位をゲット!
夜中には雨も上がり、日曜はウェットながらも気分は上がってきます。午前中はウェット路面と読み、多くのマシンがドライに向けたタイヤに交換する中、私たちは思ったよりタイヤが減っていなかったことや、昨夜の雨がかなりSSに滲み出てくると想定し、レインタイヤのままSSへ向かいます。
上位2台とのタイム差が広がり、順位を入れ替えることが不可能で、3位は元全日本ダートトライアルチャンピオンでアジアパシフィックラリー選手権やラリージャパンにも参戦経験を持つ中村英一/大矢啓太組の“Vitz GRMN”。私たちは1.6秒差の4位。路面状況が回復してくることを祈りながら、3位入賞を目指します。昨日SS4、5、6がキャンセルとなったため、SS7(3.48km)からアタック開始。
ウェット路面から少し蒸気が上がってきていましたが、全面ウェットで石井選手がタイヤ性能を最大限活かしてクラストップから9秒遅れの区間3位。中村/大矢組に1.7秒勝って、スクラッチで0.1秒逆転しクラス3位に浮上しました。ターン数が少なめのSS8(5.32km)で3.7秒勝ち、SS9(6.06km)では1.2秒遅れるという、ヒリヒリするSSを駆け抜けていきます。
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- オフィシャルにとても人気の『RC F』。「音がサーキットにいるみたい!」と喜んでいただく
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- 3位争いが熾烈。車内で作戦会議中
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- LEG2スタート。サービスパーク付近の路面は乾いてきたが、SSはまだウェット
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- リエゾンもかなり乾いてきた。タイヤが持つか、少し不安になる
サービスに戻り、タイヤを見るとしっかりもってくれたので作戦は成功でした。午後は路面が乾き、強風で大量に降った落ち葉は、JN1の4WD車がさらに吹き飛ばしてくれるだろうと想定し、ドライに合うタイヤに交換しました。後半のSS10(SS7と同じ)では、ヘイキ/北川組は、2WDで唯一3分を切り、JN1で総合トップを走っていた新井敏弘/田中直哉組のスバルWRXと1.1秒差と異次元の快走を見せます。
やはりフィンランドのドライバーはサーキットだけでなく、ラリーでも超一流のドライビングを披露してくれます。路面が乾いてきたらRC Fのパワーを活かせるようになり、中村/大矢組に3.6秒速く、SS11(SS8と同じ)で1.3秒、SS12(SS9と同じ)で4.5秒勝ち、トータルで12秒差をつけ3位入賞を決めました。
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- サービスでタイヤをドライに交換。路面も乾き、アタック開始
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- 一見おとなしそうにみえるが、アウト側にしっかりトラクションがかかり、横Gがスゴイ!
セレモニアルフィニッシュでは、ヘイキ/北川組と眞貝/安藤組とともに表彰され、“GT86”と“Vitz”そして“RC F”の3台が並ぶ光景を見て大満足でした。元F1ドライバーのヘイキ選手や『TOYOTA GAZOO Racing』の選手たちとシャンパンファイトまでできて、とても贅沢なひとときでした。
後日、最終戦となる福島が中止となったため、私たちはターマックだけで稼いだポイントだけで年間クラス6位となり、なんとJAFモータースポーツ表彰式に招待されることに。石井選手とのコンビで全日本ラリーはルーキーイヤーでしたが、上出来です。
来シーズンはまだ何も決まっていませんが、できたら今度はグラベルも走れるよう、ボディリフトをしてオフロード用タイヤを履き、サスペンションのストロークを伸ばして参戦し、皆さんにワクワクしてもらえたらと思います。今シーズン、応援ありがとうございます!
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- 左から2位の眞貝/安藤組、優勝のヘイキ/北川組そして3位の石井/寺田組
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- 今シーズンはターマックのみ石井選手は4戦、私は3戦に参戦。『RC F』はよく走ってくれました!
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- ヘイキ選手やTGR選手とシャンパンファイトできて爽快。今シーズンの有終の美を飾れました!
(写真:山口 貴利・熊谷 泰三・槙 俊和・Japanese rally fan cam・M.C.S.C./テキスト:寺田昌弘)
![](/pages/contents/article/column_terada/photo_terada.jpg)
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
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