『V8の咆哮がラリーに轟く』梅雨明けの京丹後で全日本ラリー開催!トラブルを乗り越え1.1秒差で2位を獲得!

3月に開催された新城ラリーから約4か月が経ち、久しぶりに全日本ラリーが京都で開催されました。京都といっても舞台は日本海側の京丹後市、天橋立にほど近い風光明媚な山間部のターマック。

参加台数は54台で、併催される近畿地区戦は33台と合わせ87台のラリーマシンが2日間に渡り熱い走りで競い合いました。

梅雨明けとともに選手たちも晴れ晴れとレキへ

今年は雨が多く長梅雨となっていましたが、レキの7月31日は天気がよく、ちょうど近畿地方の梅雨明け宣言が出され、この週末も引き続き晴れと絶好のラリー日和になりました。

今回の「NISSIN Rally 丹後2020」は、SSは「Tsunotsuki」と「Nariai」とそれぞれ約10kmの2本のターマックをLEG1は順走で各3本、LEG2は逆走で各2本、2日間で計10本、114.77kmのSSが用意されました。

「Tsunotsuki」は、途中2車線の広さがあり、車速を極端に落とすヘアピンが少なめで走りやすいSS。「Nariai」はターン数こそ多いもののリズミカルな左右ターンが連続し、途中泥や砂が浮いているコーナーもありますが、前走車がインカットして土をコースに掻き出す箇所もほぼなく、安心してアタックしていけるSSです。ただ梅雨明け前までに降った雨がどれだけ染み出てくるのか注意が必要です。

4パターンのSSを1回目はノートを作り、2回目はノートの精度を上げるために確認しながら走ります。コドライバーにとっては、緊張しながらの作業になりますが、ドライバーは単調な作業になりがちです。ちょっと気が抜けたところで側溝に右タイヤを落としてしまいましたが、ホイールが少し削れただけで、アーム類はまったく問題なし。RC Fは速いだけでなく強いことがわかりました。

今回もドライバーの石井宏尚選手とコンビを組んでLEXUS RC FでJN2にエントリー。JN2はトヨタVitz GRMNが2台、トヨタGT86 CS-R3が1台、シトロエンDS3 R3が1台そしてホンダCIVIC TYPE-R EUROにR3仕様のキットを組んだマシンが参戦し、ラリーに特化したR3車両が多く、選手もベテラン勢揃いと、レベルの高いラリーが展開されます。

LEG1は丁寧にタイムアップを図るが最後に大きなミスが

LEG1は9.32kmの「Tsunotsuki」、13.19kmの「Nariai」を各2本走りサービスへ戻り、さらに各1本、計6本。同じSSを3回ずつ走れるので、久しぶりのラリーということもあり1本目はタイヤのグリップ感とコンビネーションを確認しながら丁寧に走り、SS1はクラストップから約6秒遅れ、SS2は約7秒遅れのクラス3位の位置につけました。

ターゲットとなるのはTOYOTA GAZOO RacingのVitz GRMNに乗る眞貝/安藤組とホンダCIVIC TYPE-R EUROの上原/漆戸組の2台。これらのマシンを市販車ベースでスペック比較すると、以下の通り。

圧倒的なパワーとトルクで今までのラリーの概念を変えたRC F
圧倒的なパワーとトルクで今までのラリーの概念を変えたRC F
スーパーチャージャーで小気味よく回るエンジンと軽さ、サスペンションの動きのよさが魅力のVitz GRMN
スーパーチャージャーで小気味よく回るエンジンと軽さ、サスペンションの動きのよさが魅力のVitz GRMN
NAながらi-VTECで扱いやすい出力特性。欧州ではR車両に改造できるキットもあり、ラリーマシンに仕立てられる
NAながらi-VTECで扱いやすい出力特性。欧州ではR車両に改造できるキットもあり、ラリーマシンに仕立てられる

私たちのRC FはサスペンションをCUSCO車高調サスキットに、LSDにCUSCO1.5WAY、ブレーキパッドをWinmaxにしているくらいでほぼノーマルです。エアコンもあり、Mark Levinsonのスピーカーもそのまま残してあり、リエゾンでは心地よい音楽を聴きながら移動していたりします。

有利なSSは、道幅が広くてコーナーはRが大きく加速しやすいステージ。圧倒的なトルクを活かした登りが得意です。逆に車両重量がVitz GRMNと比較して620kg!も重いため、雨が降ったり、下りのステージはかなり不利です。

今回の「Rally丹後」は、天気がよく路面がドライなのでパワーを駆けられ、DUNLOPのタイヤがとてもマッチした路面です。硬めのコンパウンドで挑み、石井選手がしっかりタイヤをマネジメントしながら走っているのでSS3からもう一段階攻めていき、SS4では2位に1.6秒差をつけクラストップを獲れました。

同じSSを2回走っているので、だいぶペースがつかめ、SS5でもクラストップを獲り、このまま連続して上位を追い上げるためにアタックを開始しましたが、LEG1最終のSS6では2.1秒差で惜しくも2番手。

LEG1が終わった時点で順位を確認すると、昨シーズンのシリーズチャンピオンで、ずっと追いかけてきたTGR Vitz GRMNには20.4秒差で勝っていました。これには驚きましたが、CIVIC TYPE-Rがさらにその上を行き5.3秒差で私たちは2位。

ただここで大問題が。ラリーは特別規則書をベースに変更があった場合、公式通知によって発表され、今回もNo.8まで出て確認していたのですが、なぜかNo.5のリフューエル(給油)場所変更だけ確認しておらず、当初サービス後にリフューエルするはずが、サービス前に変更となっていました。

一番見落としてはいけない公式通知だけ見落としていて、言葉になりません。幸いひとつ前のリフューエルで満タンにしていたことと、LEG2のリフューエルが約7km手前になったので助かりましたが、燃料計をみながら2つのSSを乗り切り、リフューエルまでマシンを届かせるというタスクが増えてしまいました。

タイトコーナーの旋回性のよさ、特にドライバーのイメージ通りに動くリヤサスペンションは秀逸
タイトコーナーの旋回性のよさ、特にドライバーのイメージ通りに動くリヤサスペンションは秀逸
コースを広く使えれば車速を一気に上げられる
コースを広く使えれば車速を一気に上げられる

初優勝へ向け、登りステージでアタックを続ける

LEG2も天気はおおむね晴れで、スタート前に雨が一瞬降りましたがまったく問題なし。今日はLEG1の逆走で距離が多少変わり12.27kmの「Nariai Reverse」と11.32kmの「Tsunotsuki Reverse」をそれぞれ2本、計4本を走ります。LEG1より距離が短いのでタイヤの心配はないのですが、燃料を気にしながら走らなければなりません。

石井選手は燃費を気にしながらパドルシフトで狙いより1つ上のギヤで走っていきます。ノートを読み上げるタイミングも少しずつ息が合ってきて、全日本ラリー2シーズン目にして、やっと私たちのラリーのスタイルができあがりつつあります。

そして今日は登りが多く、大排気量車のRC Fにとっては有利。SS7は2.6秒差で2位、SS8では11.3秒差をつけてクラストップでゴールし、なんとこの時点で3.4秒差でクラストップ。そして無事リフューエルまで燃料が間に合い、胸を撫で下ろしました。

これで不安要素もなくなり、安堵しながらサービスに戻りました。ところがブレーキパッド交換し、ローターをセンターハブに押し付けるために一番奥まで締め付けたところ不具合が発生。なんとか時間内に修理し、残り2つのSSへ向かいました。

LEG2は見えないこの背中を追いかける
LEG2は見えないこの背中を追いかける
LEG2の二つのSSを走り終えてクラストップに躍り出る
LEG2の二つのSSを走り終えてクラストップに躍り出る
ハブボルトの不具合を直すメカニック。後ろで石井選手が心配そうに見守る
ハブボルトの不具合を直すメカニック。後ろで石井選手が心配そうに見守る

SS9はSS7と同じで石井選手はかなりアグレッシブに回転数を上げてアタックしたのですが、SS7よりタイムを落としてしまい、逆にCIVIC TYPE-Rは大幅にタイムを縮め、9秒差で逆転されてしまいました。

ただSS後のSTOPで前走車のタイムが確認できず、かつネット速報値も出ていなかったため、どちらが勝っているかわからず最終SS10へ。同じコースのSS8では11.3秒差で勝っているので、ここは集中してアタックします。コールのタイミングも今までで一番スムーズにいき、石井選手も攻めていきます。まったく危なげない走りで二人とも大満足。

SS8よりさらに6.3秒短縮でき、なんとJN1のスバルの新井敏弘選手より1秒速いタイムでびっくりしました。そして再車検場でCIVIC TYPE-Rに追いつき、コドライバーの漆戸選手が来て「何秒でした?」と聞かれ、タイムを伝えたら「勝った!」と漆戸選手がうれしそうに上原選手に伝え、どれくらいの差だったのだろうと比べてみたら、なんと1.1秒差でした。114.77kmのSSを走ってこの差。こんなこともあるんだと驚きです。

石井選手は、「今までよりブレーキングを攻めることができ、アクセルでうまくマシンを曲げられるコツをつかんだのは大収穫でした。前回の新城ラリーより1.4倍くらい速く走らせられるようになった感じです。それにしても攻めたブレーキングでもエアかみせず、ギャップに飛び込んでもまったく壊れないRC Fの基本性能の高さに感動しました」とRC Fへの信頼度が増し、私はコドライバーとしてもっと石井選手が安心して攻めていけるノートの作り方やコールのタイミングなどがわかり、大きな収穫がありました。「もっと私たちは成長できる」それがわかったRally丹後でした。

このコロナ禍のなか、なんとかラリーを開催しようとオーガナイザーはじめオフィシャルのみなさんが新たな取り組みに挑戦し、京丹後市の方々の温かいご理解のおかげで無事成立しました。とても感謝しています。

今後はRALLY HOKKAIDO(北海道/9月12~13日)、ラリーハイランドマスターズ(岐阜/10月16~18日)、久万高原ラリー(愛媛/11月6~8日)、ツール・ド・九州2020 in 唐津(佐賀/11月27~29日)の4戦が開催予定です。開催地の理解と選手とオフィシャルが協力しながらwithコロナのなか1戦でも多く開催していただけることを祈るばかりです。

1.1秒差で2位。最終SSでクラス最速車に与えられるSammy賞を獲得。賞金は好成績を支えてくれたメカニックへプレゼント
1.1秒差で2位。最終SSでクラス最速車に与えられるSammy賞を獲得。賞金は好成績を支えてくれたメカニックへプレゼント
このRally丹後を完走し、RC Fへの信頼度はもちろんお互いに信頼度が増した。次回のラリーが待ち遠しい
このRally丹後を完走し、RC Fへの信頼度はもちろんお互いに信頼度が増した。次回のラリーが待ち遠しい

JN-2クラス TOP3の動画は以下よりご覧いただけます。

全日本ラリー2020 第5戦 ラリー丹後 (京都府京丹後市) JN-2クラス TOP3
https://www.youtube.com/watch?v=re8_cYqFtuM

写真:山本佳吾/文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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