Rookie is back!D1GPにGRスープラとともに帰ってきた松山北斗選手

2013年にD1地方戦全国大会で優勝し、D1GPライセンスを取得、2015年には新人賞を獲得した松山北斗選手は、2017年までD1GPで活躍。その後の沈黙を破り、2020年、D1GPに挑戦者を表すブルーのカラーリングのGRスープラでカムバックしました。松山選手とは以前あるイベントでご一緒し、ドリフトのことをあまり聞けていなかったので、久しぶりにお会いして、あらためてドリフトのことについて聞いてみました。

オートバックスの店内で観たドリフトの映像が僕をD1へ誘った

  • 松山北斗:1989年三重県生まれ 現在、トヨタの東富士研究所で操縦安定性向上などの製品開発業務に従事。D1GPはあくまでパーソナルな活動で、休日、休暇の多くをドリフトに捧げる

6歳で自宅の駐車場に停まっていたトヨタ・ハイラックスのステアリングを握って喜んでいた松山選手。もちろんペダルに足は届かないし、エンジンもかかっていないので、ただ丸い輪を握っているだけ。しかし今もその高揚感を覚えていて、クルマ好きになった瞬間だと言います。きっと隣で父親が、運転うまいねと褒めてくれていたんだと思います。

以来、放課後はスポーツカーを見つけに行ったり、自宅でプレイステーションを立ち上げグランツーリスモをしながら、免許の取れる18歳までワクワクしながらその日を楽しみにしていました。そんな子供時代、近所のオートバックスでもちろん何か買うわけでもなく、店内を見て回っていたときにD1GPの動画が流れていて、それにくぎづけになりました。

  • GR Supra&Hokuto on Suit

  • GR Supra&Hokuto on Racing Suit

もともとモータースポーツ好きな松山選手は、最初からドリフトがしたいと思っていたわけではありません。免許を取得した2007年にスーパーGTを観戦しに富士スピードウェイへ行くと、デモンストレーションで織戸学選手と谷口信輝選手がドリフトしながら本コースを駆け抜けて行きました。その光景を見て、ドリフトがおもしろいからやってみようと思ったそうです。

今までトヨタ・AE86レビン、日産・S13シルビア、180SX、V35スカイライン、トヨタ・チェイサーに乗り、今もこれらのマシンを所有しながら、再びD1GPの舞台にGRスープラとともに立っています。

  • 爽やかななかに野性味を感じる松山選手

速いマシンを全開で操れる楽しさがドリフトにある

  • Rd.2,Rd.3 D1GP2020 EBISU DRIFT

D1GPに参戦するのはモンスターマシンばかり。松山選手のGRスープラは、エンジンをトヨタの名機と呼ばれる2JZ-GTEに換装してチューニングされ、最高出力1,000ps、最大トルクは実に1,176N・mと驚きのスペックを誇ります。この圧倒的なパワー&トルクでタイヤから白煙を上げながらドリフトしていきます。

速い走行速度、ドリフトに入るときの鋭い振り、左右入れ替えるときのクイックさ、大きく安定したドリフト角度、指定されたゾーンではそのゾーン、ポイントを正確に通過すること。そして観客を魅了する意外性、創造性。これらをD1独自の機械採点システムである「D1オリジナルスコアリングシステム(通称:DOSS=ドス)」を車載して採点しています。

D1GPでは1台で走る「単走」と2台でバトルする「追走」があります。「追走」ではさらに先行するライバルの走りに合わせながらいかにマシンを近づけ、ドリフトをするかが、勝敗のカギを握ります。ダイナミックな走りをとても繊細なマシンコントロールをドライバーがしているからこそ、ドリフトマシンの走りの美しさにファンは魅了されます。

  • Rd.4.Rd.5 D1GP2020 AUTOPOLIS DRIFT

  • 研ぎ澄まされた瞬間。走りをイメージし集中する

どうやってドライビングしているのか

  • ステアリング、アクセル、ブレーキ、サイドブレーキなどドライバーが操るすべてを瞬時に判断し、動かす

たとえばストレートから右コーナーへのドリフトのイメージですが、ストレートエンドまで来たら荷重変化を起こしやすくするために、軽く左にハンドルを切りフェイントモーションを発生させます。その後すぐにステアリングを右に切り込みながらフットブレーキを踏み、同時にクラッチとサイドブレーキを操作します。

そうすると荷重移動とリヤタイヤのロックによりテールスライドが発生して、そこからドリフト状態をコントロール。常に行きたい方向へフロントタイヤが向くようにステアリングを送り、テールスライドの量はアクセルでコントロールします。アクセルを踏みすぎれば角度がつきすぎてスピン、踏まなさすぎるとドリフトが戻ってしまいます。

減速したいときはブレーキを踏みますが、これもあまり強く踏むとフロントタイヤだけが減速し、横を向いているリヤタイヤは減速できず、マシンはスピンしてしまいます。ドリフト中は常に4輪の荷重やマシンの慣性を感じながらドライブすることでマシンの挙動や向かう方向などをコントロールしています。

さらに追走では、相手との速度差を調整することが必要で、そのために近づきすぎたときには一瞬サイドブレーキを引いたり、左足ブレーキを使うことでドリフト状態を維持したまま先行車との距離や速度を調整します。走りのダイナミックさ、美しさを表現するために車内では、シートから伝わってくるマシンの動きと自分のイメージに合わせ、ステアリング、アクセル、ブレーキなどミリ単位で操縦しています。

  • Rd.6 D1GP2020 EBISU DRIFT

  • Rd.6 D1GP2020 EBISU DRIFT

GRスープラが僕にドリフトの高揚感を呼び覚ませてくれた

  • Rd.2,Rd.3 D1GP2020 EBISU DRIFT

GRスープラの武器は、ベース車両のパッケージングからくる機敏な動きと抜群のトラクション性能。これならさらに自分のイメージする走りを表現でき、トップドライバーたちとより高い次元で競えると確信し、松山選手はD1GPに帰ってきました。またタイヤの性能も大きく向上し、TOYO TIRES PROXES R888R Driftが抜群のグリップ力と相まって1,000psのパワーを確実に路面に伝え、ドリフトしながらも速く走れる、実にコントロールしやすく、GRスープラにベストマッチとのこと。

  • TOYO TIRES PROXES R888R Drift

今年のD1GPは5会場10戦開催予定

  • Rd.6 D1GP2020 EBISU DRIFTで単走優勝、追走3位表彰台。この笑顔が今シーズンも多く見られる快走を期待

今シーズンのモータースポーツは、すでにスーパー耐久や全日本ラリーが開催され、D1GPも4月24・25日に滋賀県・奥伊吹モーターパークで開幕し、筑波サーキット、エビスサーキット、オートポリスなど、1会場で2ラウンド行われ、5会場全10ラウンドが開催される予定です。

今まで東京・お台場でのイベントなどでD1マシンの走りを観たことはあるのですが、D1GPには行ったことがないので、今シーズンは観戦しにいこうと思います。松山選手のGRスープラは#77。サーキットにブルーの彗星がごとく「青を灯す」松山選手の走りが観られるのが今から楽しみです。

 

写真:寺田昌弘・TOYO TIRES/文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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