愛車の『ナナマル』に純正デフロックをつけてみた!これでスタックしても自力で脱出できる力が格段にアップ!

その昔、パリダカールラリーにプライベート参戦するために買った私の愛車、ランドクルーザー70は、リヤにLSD(リミテッド スリップ デファレンシャル)を組んだ仕様のまま、ずっと乗っていました。パリダカのときは、スタックしたらサンドラダーを使って脱出すればいいのですが、現在オフロードで走ることを考えたら、やはりデフロックが欲しい。そこで長いこと部品を探していたのですが、やっと見つかったのでさっそく装着して試してみました。

そもそもデフロックとは

  • 以前、サスペンションを交換したのでストロークも伸びたが、それでもタイヤが浮けばデフロックの出番

クルマが直進時はもちろん左右のタイヤは同じ回転数で回ります。そして左右に曲がるときは、イン側のタイヤよりアウト側のタイヤのほうがより距離があるため多く回転しながら駆動します。ちょうど運動会の入場行進で横の列を合わせながら曲がるときに内側の人が足踏みや小股で歩き、外側の人が大股で行進する感じです。この動作を円滑にしているのがディファレンシャルギヤ(以降デフ)です。

たとえばFR車の場合、エンジンからプロペラシャフトを通じてリヤデフケース内に伝わる動力はリングギヤを介してデフピニオン、サイドギヤに伝わり、ドライブシャフトを回転させてタイヤに駆動を伝えます。直進時はデフピニオンとサイドギヤは回転せず、リングギヤの回転がドライブシャフトに伝わります。コーナリング時はデフピニオンとサイドギヤが回転しながら左右バランスを取りながら駆動力を振り分けます。

タイヤがしっかり路面にグリップしているときはすばらしい機構ですが、ひとたび駆動輪の片輪が路面から離れたり、泥で滑ったりすると、駆動力はその路面の抵抗が少ないほうに行ってしまい、路面にグリップして抵抗があるもう片輪には動力が伝わらなくなります。人間と同じで、ついつい楽なほうに流れてしまう感じです。

そんなときにデフピニオンとサイドギヤを固定することで、左右両輪を串刺しにしたように、抵抗に関係なく同じ回転で回すようにするのがデフロックです。こうすることで片輪が路面にグリップしていなくても、グリップしているもう片輪に駆動力を伝えてスタックから脱出できます。

20代の頃、サハラ砂漠でNPO医療支援活動をしていたとき、ランドクルーザー70で砂漠を越えて村々を訪ねていました。あるとき1台の活動車が砂漠で4輪とも砂に埋まってスタックしてしまいました。すると現地のパートナーがタイヤの空気圧を落とし、前後ともにデフロックをしてゆっくりアクセルを踏んでクラッチをつなぎました。

すると最初は4輪とも砂の中で空転していたのですが、1分くらいしたら4輪のどれかが少しずつグリップしはじめ、クルマが動き始めて30秒くらいしたらふっとスタックから脱出できたのです。それを見て以来、いつかは自分のナナマルにもデフロックを装備しようと思っていました。

  • 右側がデフロックのスイッチ。時計回転に回すと、RR(リヤのみ)さらに回すとFR・RR(フロント・リヤ)がロックする

  • ホーシングのデフがある左側にあるのがアクチュエーター。スイッチからの信号がコンピューターを介し、ここに伝わりデフロックする

純正デフロックはメーカーオプションなので新車購入時に選択を

  • プラドのデフロックのスイッチ。真ん中に×があるのがセンターデフロック、下に×があるのがリヤデフロック

私のもう1台の愛車、ランドクルーザープラドはTX “Lパッケージ”なので、路面状況に応じて最適制御をするマルチテレインセレクト(TZ-Gのみメーカーオプションで選択可能)はありません。しかしアクティブトラクションコントロールとセンターデフロックが標準装備なので、雪道や河川敷などはもちろん、タイヤが対角線上に空転してスタックしても、アクセルを一定に踏んでいれば、空転するタイヤにのみブレーキ制御が入り、接地しているタイヤにしっかり駆動力を伝えて脱出可能です。

ただ深くスタックしてしまったときには、フルタイム4WDのプラドにはセンターデフロック(標準装備)とリヤデフロックがあったほうがより安心です。ただここで気をつけなければいけないのが、リヤデフロックはメーカーオプションであること。新車注文時にオプション装着していないと、後から装着するには相当のコストがかかりますし、現実的ではありません。仮にリセールを考えても有利にはたらきますので、メーカーオプション選択をおすすめします。

オフロードを走ってみると、その差歴然!

  • アクティブトラクションコントロールなど電子制御がないナナマルの悪路走破性を高めるためにデフロックは欲しい

中古で見つけた純正デフロックを装備してもらったものの、デフロックのON/OFFを確認できるランプはメーターパネルにないため、別の場所に作ってもらいました。さっそくオフロードに行き、停車状態でデフロックのスイッチを入れてみます。スイッチはリヤデフのみデフロックするのと前後デフロックの2段階あります。スイッチを入れるとランプが点滅し、点灯に変わればデフロック状態になります。ちょうど対角線にタイヤが路面から離れて空転するところも、何もなかったかのように走破できます。あらためてデフロックによる走破性アップに感動です。

ただ、ふだんはあくまで基本性能を活かして走り、スタックしてしまったときや、泥やモーグルなどオープンデフでは明らかに走破できないと思ったときの最後の手段と思って使っていただけたらと思います。デフロックすると極端に曲がりにくくなったりして普段のクルマの動きと変わりますので運転には十分注意が必要です。まだ使ったことのないかたは、まず広くフラットなオフロードでゆっくり試していただきながら、慣れていただけたらと思います。

今回デフロック装備をしていただきながら、車内も塗装してきれいにして、オフロードで汚すのも憚る感じですが、そこはランドクルーザー、しかもナナマルですのでこれからさらにオフロードを楽しみたいと思います。

  • デフロックのON/OFFがわかるランプをつけてもらった

  • これでまた相棒のナナマルと走りに行く機会が増えそう

  • 今回、車内も塗装。これで汚したくなくなる気分にもなるが、ナナマルはオフロードが楽しいからきっと車内もまた汚れる予感

写真:岩崎信康・寺田昌弘/文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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