サーキットでレーシングドライバーが新型ランドクルーザーを試乗。その感想は?・・・寺田昌弘連載コラム

宮城トヨタグループが主催する「MTGモーターフェスティバル」がスポーツランドSUGOで開催されました。私は新型ランドクルーザーの試乗コンテンツの担当で、ほかにはレーシングドライバーがお客様を乗せてサーキットを走るコンテンツがあり、GTドライバーを筆頭にフォーミュラカーやGTマシンなど経験豊富なドライバーがいました。そこでレーシングドライバーが、この新型ランドクルーザーに乗ったらどんな印象を持つのかなと思い、頼んでみたら、さすがクルマ大好きなドライバーたち、ぜひ乗ってみたいということで急遽インプレッションを実施。さてサーキットの王子たちが、陸の王者であるランドクルーザーをどう評価するか。

全高の高いランクルがここまで走るとは

  • ピットで各グレードの簡単な解説をしてからコースイン

昔、LEXUSのイベントで今シーズンSUPER GT500クラスにGR Supraで参戦する石浦 宏明選手(TGR TEAM ZENT CERUMO)に助手席に乗ってもらい、LX570で階段を登ったことがありました。そのとき石浦選手は「こんなところも登れるんですか?転ばないんですか?危ないですよ!」と言うので「逆に300km/h以上から富士スピードウェイの1コーナーへ飛び込んでいく石浦選手のほうがよほど危ないと思います。」と私は言いました。すると石浦選手は「高速で走るとダウンフォースが生まれて安全なんですよ」と。またほかのイベントで私のランドクルーザー70の助手席にTGRアンバサダーの脇阪寿一さんに乗っていただき、オフロードを走ったとき「視点が高いとクルマの感覚はこんなにも違うんですね」と。モータースポーツでもフィールドが違うと感覚がかなり異なるので、今回もドライビングしていただいた4名のレーシングドライバーのコメントに興味津々です。彼らはトヨタの若手ドライバー育成プログラムであるフォーミュラトヨタ・レーシングスクール(FTRS・2020年よりTGR-DC)の卒業生。試乗してもらったのは、ZXのガソリン、ディーゼルとGR SPORTSのガソリン、ディーゼルの4グレードです。

  • 3.5リッターV6ツインターボガソリンエンジン搭載のGR SPORT(左)とZX(右)

  • 3.3リッターV6ツインターボディーゼルエンジン搭載のGR SPORT(右)とZX(左)

■蒲生尚弥選手
ニュルブルクリンク24時間レースで3度のクラス優勝、2018年にはSUPER GTのGT300クラスでシリーズチャンピオンを獲得し、今シーズンはMercedes AMG GT3(LEON PYRAMID AMG)で参戦。スーパー耐久シリーズではORC ROOKIE Racing GR SUPRA (ROOKIE Racing)で参戦。

  • 蒲生尚弥選手

「私はディーゼルのZXとGR SPORTSを乗り比べました。スタイリングはGR SPORTSのほうがよりスポーティでかっこいいですね。どちらもディーゼルらしいの低速トルクが印象的で、ZXとGR SPORTSで乗り味の違いが明確。ZXはどんな路面状況にも対応できそうな乗り味で、GR SPORTSはよりオンロードというか、ハイスピードな領域で高い安定感とクイック感を感じられました」。

■山内英輝選手
ニュルブルクリンク24時間レースで4度のクラス優勝、今シーズンSUPER GTのGT300クラスにSUBARU BRZ R&D SPORTから参戦し、現在ランキングトップのドライバー。スーパー耐久シリーズにもST-ZクラスにENDLESS AMG GT4で参戦。

  • 山内英輝選手

「この大きさから見て、サーキットで走ったら横転しないのか?と思いましたが走ったら横転どころか、想像以上にロールが少なく驚きました。サーキットには、街ではあまりない特殊な縁せきがあり(大きな縁せきやカマボコ状のデコボコした縁せき)これに乗ってもサスペンションがうまく吸収してくれるおかげで、体に掛かる負担もふだん乗っているマシンより少ない。ディーゼルは、アクセルを乗せた瞬間のレスポンスがよく、低速でも力強いトルクがあった。これだけ大きいサイズを街中で走っていても、ストレスなく走ることができると感じました。いっぽう、ガソリンは、気持ちよくエンジンが伸びていく感覚が強く、高速道路や北海道とか広くまっすぐな道を走ると、とても気持ちよさそう。GR SPORTSとZXでは、やはりレーシングドライバーにとってGR SPORTSのしっかりした足回りに惹かれますね。もちろん、その中で上下動に対する動きもしなやかに感じ、ステアリングから伝わるタイヤのグリップ感、操舵性のよさ、ロールもより抑えられていることで、これだけ大きい車なのに、走りの楽しさを感じることができる。またドライブモードセレクトでどちらの車にも好みの硬さに調整でき、どのような場面にも適応できるようになっているのも、より魅力だと感じました。」

■銘苅翼選手
スーパー耐久シリーズ3位の実績を持ち、ポルシェGT3カップなどにも参戦。ドライバーとしてだけでなく、自身のキャリアを活かし、これからレース活動をしたい人のサポート活動も展開

  • 銘苅翼選手

「ガソリンはフロントが軽く感じで、ステア操作に対しての瞬間的な応答性がよく操作しやすいですね。いっぽうディーゼルはガソリンに比べフロントが重く感じ、ステア入力に対しての初動は鈍いものの、その後のヨーモーメントに対する踏ん張りは強く感じた。コーナリング中の安定感がいいですね。」

■松井宏太選手
スーパー耐久シリーズはWedsSport86、86/BRZ Raceクラブマンエキスパートにネッツ青森アップルRC86DLで参戦。86を知り尽くしたレーシングドライバー。兄はSUPER GTのGT300 HOPPY team TSUCHIYAでポルシェ、スーパー耐久シリーズではORC ROOKIE Racingで水素エンジンカローラに乗る松井孝充選手

  • 松井宏太選手

「全グレードに乗りましたが、どれも重量バランスがよく、サーキット走行で走りにリアリティがあり、イメージ通りにクルマが走ってくれるのに驚いた。特にGR SPORTのサーキットでの動きがよかった。エンジン特性はディーゼルのほうが、大きなボディを前に引っ張ってくれる感じで好みです。ドライブモードの性格がはっきりしているので、NORMALとSPORTS S+で大きな変化があり、街中、ワインディングなどモードを変えて走ることが、オーナーには楽しみになると思います。」

  • コーナリング姿勢の比較。右のZXのほうが若干ロールしている

  • 同じコーナーでの比較。ZXは緩やかにロールしながらコーナーを立ち上がる

  • GR SPORTは、アウト側のショックアブソーバーの減衰力が上がり、ロールが抑えられている

  • GR SPORT(ガソリン)の第4コーナー登り入口。リヤにしっかりトラクションがかかり、フロントもグリップし駆動を伝えている

選手たちはみな、ランドクルーザーを見たときに大きなボディと全高の高さから、サーキットでは評価しにくいのではと思っていましたが、サーキットを走ってピットへ戻ってくるとみな笑顔。180km/hの高速走行でも直進安定性がよく、ブレーキのタッチが自然で前後ブレーキがバランスよくしっかり機能しているので姿勢が安定しているからコーナーの進入もしやすい。立ち上がりはトルクフルなエンジンでイメージ通りに走れると、見た目の大きさと走りの素直さとのギャップに驚いていました。それにしてもレーシングドライバーの繊細なステアリング操作、ブレーキ、アクセルのタッチは同乗していてとても勉強になります。クルマの姿勢を安定させながらトラクションをかけ、タイヤのグリップを最大限に活かしながらコーナリングしていくのはさすがプロ。私がこの選手たちに勝てるとしたら、1コーナーを飛び出て砂に飛び込んだところぐらいしかないと思えるほどすばらしい選手たちでした。彼らが認めるランドクルーザーのオンロード性能、これは本物です。

  • ZX(ディーゼル)バックストレッチで軽々180km/hに。直進安定性が高く、ディーゼルとは思えない静粛性

  • GR SPORTのタイヤはオフロードSUVとして265/65R18。ZXの265/55R20を履けばさらにオンロードでの応答性がよくなるはず

  • バックストレッチから220R、馬の背コーナー前でのブレーキング。ノーズダイブせず前後のサスペンションがバランスよく沈み、前後ブレーキが車重を感じさせないよううまく作用する

  • イン側のゼブラゾーンもランドクルーザーにとってはまったく気にせず踏んで行ける

  • 最終コーナーから10%勾配を軽々と登って行ける

  • サーキットでも高い運動性能がレーシングドライバーによって確認できた

(写真:MTG 文:寺田昌弘)

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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