国内外のモータースポーツに挑み続けるスーパーマン、ドクター梅田真祐のカーライフ・・・寺田昌弘連載コラム
毎年お正月に楽しみにしているモータースポーツといえばダカールラリー。私も過去に参戦し、2018年まで現地同行取材をしていたこともあり、現在も選手やメカニックとして参戦している友達も多く、なおさら気持ちが入ります。
そして日本人選手の応援。Team Landcruiser TOYOTA AUTO BODYの三浦昂選手やHINO TEAM SUGAWARAの菅原照仁選手、望月裕司選手、染宮弘和選手、エントリーリストを見ていると、SSV(小型バギー)クラスに「SHINSUKE UMEDA」と日本人選手の名前がありました。バイクで参戦する日本人ライダーはたまにいるのですが、SSVで参戦する日本人は初めてなので、興味津々で連日インターネットで観ていたところ、初参戦で完走するというすばらしい成績を収めました。さっそく梅田さんにコンタクトを取り、会ってみたらなんと職業は開業医。さらにスーパー耐久にも参戦しているということで、ますます興味が湧き、お話を伺いました。
手に入れたクルマがサーキットも走れるので走ってみた
九州出身の梅田真祐さん。初代シビックTYPE-R(EK9)を手に入れ、サーキットを走ってみたらおもしろかったそうで、上京してからなんとスーパー耐久参戦のために誕生したホモロゲーションモデルのフェアレディZ(Z33)Version NISMO Type 380RSを購入し、NISMO大森ファクトリーへ行ったそうです。そこでNISMOの方々にお話を伺ううちにサーキット走行だけでなく、レースに出てみようと思い「Zチャレンジ」に参戦。2012年にはシリーズチャンピオンを獲得しました。
こうなったらさらに上位カテゴリーのレースに参戦するかと思えば、次は鈴鹿クラブマンレースのFFチャレンジクラスに出場。その時、サーキットへ行くきっかけを作ってくれたシビックTYPE-R(EK9)で参戦し、FFでレースを楽しみ始めました。しかしこのシビックもかなりの経年劣化もあって、マシントラブルが多く、FIT1.5に替えてレースを楽しんでいました。
もうひとつの驚きは、今度はラリーに出てみたいと思うようになり、FIA国際Cライセンスを取得されたことです。まずは私が1998年にパリダカールラリーでご一緒した、山田徹さんが主催するラリーモンゴリアへジムニーシエラに参戦。ここで山田徹さんや、ミスターパリダカの菅原義正さんと深く知り合い、2018年には愛車のランドクルーザー70でモンゴルツアーへ。こうしてクルマに乗って楽しむフィールドが増えていきました。
上位レース、国際ラリーへステップアップしても気持ちは同じ
2016年には、スーパー耐久にマツダ・デミオで参戦し、2018年には共同オーナーとしてチームを立ち上げるまでに。ただチーム運営は思っていたより仕事が多く、ドライビングに集中できなくなってしまうため、2019年からJ’S RACINGのFITにドライバーとしてチーム入りし、シリーズでクラスタイトルを目標に走りました。そのシーズンは惜しくも獲得できませんでしたが、2020年にST-5クラスタイトルを獲得しました。
「最も印象的だったのは、シリーズチャンピオンを獲った2020年のもてぎ戦です。それまで何度も表彰台には登っていて、チームクルーもドライバーもベストを尽くしたと言い切れるのに、車種の違いもあって優勝だけはできてなくて、本気で悔し涙を流して来たんですけど、やっと表彰台の真ん中に立ってみんなの苦労に報いることができたときです。」
と梅田さんは振り返ります。この年はBlancpain GT World Challenge ASIAにBMW Team Studieからもスポット参戦し、海外シリーズにも挑戦しています。さらに往年のパリダカールラリーに近いルートを走るAFRICA ECO RACEにも菅原義正さんのチームからSSVで初参戦しました。残念ながらリタイアしてしまいましたが、このときの大陸をクルマで旅するというおもしろさがさらに梅田さんを魅了していきます。
梅田さん「モロッコのメルズーガの砂丘でクラッチが焼き付いて自走不能になったんですが、現地の若者に頼んで近くの村の宿に泊まり、夜中に彼らのピックアップトラックに牽引してもらいながら砂漠を4時間移動し、翌朝次のビバークにたどり着きました。普通に生活してたらそんな体験しないですよね。」
そこでめげずに2021年にロシアで開催されたSILK WAY RALLYに参戦し、見事総合15位で完走。FIA格式でのクロスカントリーラリーで結果を残しました。
私もパリダカールラリーに初参戦時に、アフリカ・マリでリタイアし、貨物列車に載せてセネガルの首都、ダカールまで戻ったことがありますが、このときの現地の方々との交渉などは今も仕事に役立っていたりします。そして翌年に再挑戦し、クラス優勝。やりきることの大切さを知りました。
2022年はダカールラリーをはじめいろいろなレースに参戦
今年はダカールラリーに初参戦し、見事完走。ゴールデンウィークにはチュニジア・デザート・チャレンジにも参戦し完走。そして国際クロスカントリーラリーのSSVクラスも完走と、連続完走はとてもすばらしい実績です。サーキットではTCRジャパンシリーズにアルファロメオで参戦し、マレーシアのレースはホンダFITで参戦。さらに国内ではFIA F4選手権にもスポット参戦します。
クロスカントリーラリーやサーキットレースなど様々なカテゴリーのモータースポーツに挑む梅田さんにそれぞれの魅力について伺ってみると、
「クロスカントリーラリーはモータースポーツのスタイルをとりながら、今まで経験したことのない、そしておそらく二度と体験できない旅ができること。僕らがサウジアラビアでのダカールを走っても、昔のパリダカとは違うし、10年も経てば今のダカールも昔のダカールと言われるのだと思いますし。去年までのロシアや中国を走破するSILKWAY RALLYももう帰ってこないだろうし、先輩方が絶賛してたエジプトのファラオラリーももうありません。」
二度と同じシーンを走れない、その儚さと稀有な体験がクロスカントリーラリーの魅力だと言います。
ではサーキットレースは?
「レースなのでバトルが楽しいのは当たり前ですが、レース後にさっき抜かれたあのコーナーはどうだったとかの体験談をチームメンバーやライバルと共有できるのが、僕にとっては楽しいです。また日頃の練習や努力がタイムや順位といった数字で返ってくるのも楽しいです。」
休日にモータースポーツを楽しむサンデーレーサー的な社会人はいますが、梅田さんは地球規模、世界格式でのレースやラリーに挑んでいます。サーキットレースとラリーに挑んだ選手といえば、ジャッキー・イクスさんや片山右京さん、最近ではフェルナンド・アロンソ選手などがいますが、梅田さんはこれからもどちらも楽しんでいかれるのか聞いてみました。
「僕にとってラリーもレースも違いがないんです。大好きなクルマで楽しみを探してウロウロしているだけなんです」
独自な感性で根っからのクルマ好きな梅田さん。これからも彼の大好きなクルマとラリーやレースを楽しむライフスタイルに注目し、どんなモータースポーツに挑戦されていくのか、とても楽しみです。
写真提供:梅田真祐/文:寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。
[GAZOO編集部]
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