ラリージャパンをミライオーナー仲間と給電サポート・・・寺田昌弘連載コラム


回を追うごとに盛り上がっている「ラリージャパン」。

今年は2024年11月21日(木) ~ 24日(日)に愛知県、岐阜県を舞台にFIA世界ラリー選手権 (WRC)の最終戦として開催され、ドライバーズタイトルはHYUNDAI SHELL MOBIS World Rally Teamのティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ組、マニュファクチャラーズタイトルはTOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamが獲得。

豊田スタジアムでは期間中、各種イベントや出展ブースは観客でにぎわい、岡崎や笠置山など観戦ポイントでも、キッチンカーで食べ物を買って食べながらラリーマシンの走りに盛り上がり、大盛況の4日間でした。

そのなかひっそりと音もCO2も出さずに競技運営や出店ブースの電源をサポートするプロジェクトをトヨタ・ミライのオーナーたちと進めていました。

よりサスティナブルな運営を目指すラリージャパン

ラリージャパンは前回大会で、すでにFIA(国際自動車連盟)環境認証プログラムの最高ランクとなる3つ星を獲得しています。

私はここ2年ほどエンターテインメント業界でFCEVからの給電サポートをし、特にロックバンドのLUNA SEAのライブは愛車のミライを持ち込んで楽器などの電源供給をするのが、クルマの走る楽しさにプラスしておもしろくなってきました。

そこでミライオーナーだからできることをミライ仲間にも体感してもらえたらとTOYOTA MIRAI CLUBで声をかけてみたら、やってみたいというオーナーが多くいて、
今回は地元愛溢れるサポートになればと、開催地の愛知県在住のオーナーを中心としました。

ラリージャパン実行委員会事務局と競技運営のMOSCO(NPO法人 モータースポーツ・コーディネート)も快く迎えてくださり、いくつかのSS(競技区間)スタートや、観戦エリアの出店ブースでの給電を組み入れてくれました。

またトヨタ自動車・水素ファクトリーが技術サポートをしてくれることになり、CO2を排出しないモビリティーを活用した市民参加型の給電サポートができることになりました。

新しいスタイルの給電サポート

今回ミライで給電するポイントは7か所。
SSは、新城SS、岡崎SSS、恵那SSのいずれもスタート地点で、観戦スポットは、鞍ヶ池のシェイクダウン、伊勢神トンネルSS、笠置山SS、そして三河湖SSゴール表彰式です。

集まったミライオーナーは、税理士、ディーラーメカニック、設備設計事務所経営、デザイナー、自動車修理工場を経営しミライが好きすぎて水素ステーションまで経営しているかた、鉄工所経営など仕事は多岐に渡りますが、ミライもモータースポーツも大好きな人ばかりです。

スタッフ全員が同じホテルに宿泊していたほうが進行しやすいのかもしれませんが、ほとんどが愛知県在住なので自宅出発で考えました。新城SSや岐阜の恵那SS、笠置山SSは少し距離があるので担当のみ近隣ホテルを取って宿泊してもらいます。

参加できる日が人によって違うため、パズルをはめるように工程表に担当してもらうポイントを決め、担当前夜の帰宅時に最寄りの水素ステーションで充填してからの走行距離なども計算します。

スタッフミーティングも全員で集合することをせず、オンラインミーティングでスケジュールや持ち物チェックなどを進めました。もともとTOYOTA MIRAI CLUBはFacebookで情報交流をするクラブで、メッセンジャーを全員使用しているのでうまく活用しながら、全体情報やエリアごとの情報を分けて共有していきます。

本番が始まり、寝られない日々が続く

ミライオーナーによる記念すべき給電は、鞍ヶ池シェイクダウンの観戦エリアから始まりました。

それぞれ自宅から出発するので、事前に出発時刻を決め、出発、到着、給電開始などを逐一メッセンジャーで報告してもらいます。

鞍ヶ池チームは午前3時過ぎに出発なので私は寝ずにスタッフの出発メッセージを確認し、到着、給電からイベント終了まで連絡を待ち続けます。14時頃に給電完了報告を受け、初日は無事完了。

2日目は伊勢神トンネルSSの観戦エリアへ向かうのが午前1時すぎ。新城SSスタートチームは午前4時にホテルを出発。順調な給電を確認しながら、岡崎SSSチームが午後1時頃に出発。岡﨑SSSの撤収が午後8時過ぎと長い一日でしたが、3日目の恵那SSチームは午前1時出発なので起きたまま給電サポートが続きます。

現場で給電するミライオーナーは、間近に観るラリーカーの走りに興奮ぎみに報告が入ってきて、私はモニター越しにABEMAでSSの走りを観ながら現場確認をしていました。

また水素消費状態など車両管理をPCで確認できるモニターをトヨタのT-Connect、レクサスのG-Linkを運営するトヨタコネクティッドがサポートしてくれたので、現場と離れていても安心です。

ミライオーナーが給電してわかったこと

今回、各エリアでやりたかったことは、ラリー観戦に来た方々が給電しているMIRAIを観てどう思うのかということです。

観戦ポイントで給電しているミライオーナーのところに、「どうやって発電しているの?」「水素はどれくらい使って発電しているの?」「ランニングコストはどれくらい?」「水素ステーションが少なくて困らない?」など質問する観客がとても多かったです。

通常のイベントであれば、スタッフがマニュアルを覚えて答えますが、やはり実際ミライを買ってふだんから乗っているオーナーの言葉は、仮に同じような答えでも説得力が違います。ミライオーナーも購入前は同じような疑問があり、オーナーになってからわかったことがあります。

そしてさらにみなミライが好きになっています。

初代ミライが誕生し、今年の12月15日で10年を迎えます。それでもまだまだFCEVは一般には知られていないことがわかるし、ミライオーナー自らミライの説明をしてくれたことは、日常の選択肢のひとつとしてFCEVがあるということがとてもよく伝わったと思います。

HEV、PHEV、BEVそしてFCEVと電動化技術を取り入れた多様なモビリティーがあり、その一翼を担っているミライ。

WRCという国際モータースポーツの場で、愛車を活用した市民参加型のサポートプロジェクトは、安全にスムーズに給電しながら、イベントとしてCO2排出低減はもちろん、ライブ中継しているビジョンカーの音声や大迫力のラリーマシンのエキゾーストノート、落葉を巻き上げる音まで聞こえるほど、静粛性で貢献できたと思っています。

機会をくれたラリージャパン実行委員会事務局、MOSCO、トヨタに感謝しています。

写真:TOYOTA MIRAI CLUB / 文:寺田昌弘

ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。


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