ライブと食とGXのフェス「TOMAKOMAI MIRAI FEST 2025」。ミライで給電してきました・・・寺田昌弘連載コラム
今年で4回目を迎えた「TOMAKOMAI MIRAI FEST 2025」(以降TMF)。
ライブや苫小牧ならではの食事、アートそしてGX(グリーントランスフォーメーション)をコンテンツに取り入れたイベントに、今年もトヨタ・ミライからメインステージの楽器やアンプなどへ電源供給をしました。
さらに、メインエントランスにミライとLEXUS RZ450eを展示し、北海道で進んでいる水素利活用とCO2を減らす発電を表現するなど、これからの苫小牧を知っていただくイベントになりました。
きゃりーぱみゅぱみゅ、湘南乃風などLIVEで盛り上がる
毎回すばらしいアーティストで盛り上がるメインステージに、今年はきゃりーぱみゅぱみゅ、湘南乃風、SUGIZO、T.N.T、FRUITS ZIPPER、Little Glee Monster、オトノタネ、岡崎体育、CANDY TUNE、Chevon、Tani Yuuki、ねぐせ。、MAZZEL、RICHRIVERと豪華なラインナップで2日間盛り上がります。
このメインステージ裏に2台のミライを設置し、9kWまで出力できる可搬型給電器を介して楽器やアンプ、マニピュレーターのPCなどへ電気を送ります。
水素を充填し、水素と大気中の酸素を反応させて発電する燃料電池は発電時にCO2を出さないので、SUGIZOさんの「エンターテインメントも少しでも環境負荷を減らして持続性のあるものにしていきたい」という思いから、2017年のLUNA SEA武道館ライブからFCEVによる給電が始まりました。
私はここ3年ほどLUNA SEAを中心にライブ、フェスでFCEV給電サポートをしていますが、CO2を出さない発電に加え、音がよくなることを体感しています。
施設の電源は遠い発電所から送電されてくる間にノイズが載ってしまったり、照明やスピーカーの同軸使用で電圧が変動して、アーティストやサウンドクリエイターが思う音をずらしてしまいます。また電源車はエンジンの回転によって発電するため磁力が生まれます。通常電源に使うにはまったく問題ないですが、FCEV給電を知ると、その差がわかります。
今回は北海道庁、北海道電力、トヨタカローラ苫小牧からミライをお借りして給電しました。
市長やSUGIZOさんが苫小牧のGXを語る
SUGIZOさんはメインステージで演奏をするだけでなく、苫小牧市の金澤俊市長をはじめ苫小牧のGXに関わる企業担当者とのトークショーにも登壇しました。「GXを考えるとき苫小牧を調べてみたら、環境面と経済の発展で重要な場であることがわかった。またTMFはアーティストのレベルがすばらしく、GXを意識しながらこれからも関わっていくべきだと思っている」と話していました。
以前、TMFのバックヤードで、SUGIZOさんはアーティストたちに楽器や曲を出すPCへミライから給電していることを解説しているのを見て、その後アーティストがMCのときに、水素やカーボンニュートラルの話をしてくれていて感動しました。
ファンはアーティストのライブを聴きに来ていますが、そのアーティストが水素やカーボンニュートラルの話をしたら、もちろん聞き入ってくれます。これはTMFならではのことだと思います。たとえクルマに関心のない人でも、ミライは水素を使って走るだけでなく、CO2を出さずに発電することを知ってもらえてうれしいかぎりです。
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金澤俊市長(右)とSUGIZOさんが苫小牧のGXを語る
北海道は電気がさらに必要となる。そして水素も
現在北海道は、ラピダスが進める次世代半導体工場やソフトバンクグループが苫小牧に建設中のデータセンターなど、電力需要が大幅に拡大する予測が立っています。
北海道電力では、北海道において再生可能エネルギーのポテンシャルが高い、風力発電、地熱発電をはじめ、太陽光発電、バイオマス発電など幅広く再エネ電源の新規開発を進めています。また再エネの余剰電力を活用して水素を製造することも進めています。再エネは天候によって増減があるため、オフグリッドで余剰電力を水素に置換することに私は大賛成です。半導体製造にも多くの水素が必要ですし、北海道でFCEVが広がっていくには道内での水素製造が大切だと思います。
現状、北海道には固定式が2か所、移動式が2か所の水素ステーションがありますが、今後道北、道東に再エネ由来のグリーン水素による水素ステーションができれば、定期的に運ぶ農作物をFCトラックで運んで、安定した水素使用が見込めると思いますし、やがてFCEVも普及しやすい環境づくりができるのではと思います。
またGXブースに出展していた清水建設は、施設ごとの築年数・床面積・階数・用途・改修履歴・エネルギーデータから、CO2排出傾向を多角的に分析。脱炭素の観点から注力すべき施設を洗い出し、CO2を効率的に削減するカーボンリノベーションを立案するなど建物だけでなく街全体のCO2排出を低減するサポートをしています。
また「Hydro Q-BiC」という再生可能エネルギーの余剰電力を水素に変えて水素吸蔵合金に蓄え、必要に応じて水素を取り出して発電できる建物付帯型水素エネルギー利用システムも紹介。CO2を減らすだけでなく、余剰電力を水素に変えて貯めておく技術もあります。
こういったGXを目指す企業の技術などをライブに集まるファンのみなさんに知っていただけるのは音楽の力のおかげです。そこでミライのFCEVやLEXUS RZ450eのBEVといったCO2を排出しないモビリティーを知ってもらえるのがありがたいです。
私も関わらせていただき3回目となりますが、来年も関われたらもっとGXが地元の方々、音楽ファンのみなさんに子供から大人まで伝わりやすい施策をサポートしていけたらと思います。
文:寺田昌弘/写真:清水善之・寺田昌弘
ダカールラリー参戦をはじめアフリカ、北米、南米、欧州、アジア、オーストラリアと5大陸、50カ国以上をクルマで走り、クルマのある生活を現場で観てきたコラムニスト。愛車は2台のランドクルーザーに初代ミライを加え、FCEVに乗りながらモビリティーの未来を模索している。自身が日々、モビリティーを体感しながら思ったことを綴るコラム。







