脇阪寿一 ドライバーズコラム 第4回 モータースポーツをメジャースポーツに!

モータースポーツをメジャースポーツに!
その手法として、地域密着型モータースポーツの楽しみ方を考えてみた。

僕の将来の夢物語。
僕は欲張りだから、夢はたくさんあります。
そのうちの一つ…「地域密着型モータースポーツ」の構築

1993年、Jリーグの発足と共に日本のスポーツ界はある変革を迎えます。
川淵三郎チェアマンが打ち出した「地域に根ざしたスポーツクラブ」を実現させた事。これは後にも、それまでの日本スポーツ業界人気No.1の野球界もが取り入れた手法。

全国を、時には海外を転戦する我々のレースも、地域に密着した盛り上がりを作れないか考えてみた。
いきなり全体を考えても難しいので、まずは自分の周りの環境で。

(埼玉トヨペットさんのイベント)

地域密着型と考え、まず僕の頭をよぎったのがトヨタの持つ販売店の存在。
トヨタの販売店が、全国それぞれの地域で、その地域の方々に合わせたモータースポーツの、クルマの楽しみをより感じて頂ける環境を用意する事ができれば、それは実現に近づく。

しかもトヨタの販売店の権利を持っておられる方々は、昔からその地域でいろいろな事をされている、簡単に言えば力を持っておられる方々。
警察にだって、地方メディアだって、地方自治体だって…。
素材、手法さえ整えば、盛り上げることも可能な環境がそこにはある。
しかも今の日本は、中心(東京)だけでなく、地方を盛り上げるような動きが盛んになってきている。

トヨタには、優秀なドライバーがたくさんいます。
その優秀なドライバーたちも、自分たちのレースで速く走るだけでなく、今のトヨタが、豊田章男社長が示されているトヨタモータースポーツの方向性に沿った働きが求められていると僕は感じます。
ドライバー諸君、いかがでしょうか!?
そう思わない!?思うならこれ読んでね。

ドライバーの出身地はバラバラですよね。
例えば、僕がスーパーGTの舞台で監督をさせていただいているLEXUS TEAM Le Mansのドライバー、#6大嶋和也選手は群馬県出身です。
スーパーGT500クラスのドライバーだと、#19 関口雄飛選手が東京、国本雄資選手が神奈川、#36伊藤大輔選手が三重、#37平川亮選手が広島、#38立川祐路選手が神奈川、石浦宏明選手が東京、#39平手晃平選手が愛知、外国人ドライバーはその国として…。
GT300のプリウスを駆る嵯峨宏紀選手が愛知、中山雄一選手が東京、永井宏明選手が三重、佐々木考太選手が三重、飯田章選手が神奈川、吉本大樹選手が大阪。

スーパーフォーミュラに目を移すと、小林可夢偉選手が兵庫、中嶋一貴選手が愛知、TDPだと、山下健太選手が千葉、坪井翔選手が埼玉…。
誰か抜けてない!?大丈夫!?(笑)

それぞれが、それぞれ出身の県の販売店の方々と、その地域のモータースポーツやクルマ社会を盛り上げたら面白いと思わない!?
何回も言うよ、“地域に密着したモータースポーツ“を我々が構築するの。

僕が、例えば大嶋和也選手を連れて、群馬の販売店にご挨拶に行き、販売店でイベントを開催させていただく事をお願いしたい。例えば大山会長の所、ネッツトヨタ群馬さんは昔からモータースポーツに理解があり、会社ぐるみで参加されている事もあるし、もしそれが実現したら…。

大嶋選手は、自分の出身地の販売店の皆さんと一丸となって、来店されるお客様にモータースポーツの楽しさやクルマの楽しさ、時にはお客様が購入を希望されているクルマに同乗してそのクルマの良さ等を語ります。

もちろんお客様を、お客様のご家族を交通事故から守るために、普段大嶋選手がレースに勝利するために磨いている彼の運転テクニック(それは、クルマをスピーディーに、安全に目的地に届ける技術)のうち、クルマを安全に目的地に届ける方法を、運転技術や、考え方の両面をお客様にレクチャーする。そしたらそのお客様は、運転する者であれば誰もが持つ交通事故に遭う可能性を引き下げる事ができますよね!?お客様は、その指導を受ける事で、同乗する家族、横に乗る恋人、友達を、交通事故から守れるの。

それはお客様に絶対に喜んでもらえると思うし、我々が夏のイベント(LGDA夏祭り)で警視庁の方々の協力を得られているのと同じで、地域の警察の方々のご協力も得ることができ、それはもう地域社会における社会貢献になっていくと思います。

メジャースポーツって、その存在が人々を魅了しないといけないし、夢や希望を与えないといけないし、その存在が何か社会のためになってないといけないと僕は思うの。

今のスーパーGTは、もちろんまだまだな所もあるけど、来場される多くのお客様に夢や希望を与えられていると思うし、ワクワクドキドキしてもらえていると思う。スーパーGTがメジャースポーツになるための条件の最後、その存在が社会のためにどうなっているか!? それは…、スーパーGTに勝つために我々ドライバーたちが普段から努力して磨いている技術のうち、“クルマを安全に目的地に届ける技術”を伝えることができて、交通事故が減ればそれは絶対に社会のために役立っている。それが各地方で実現できれば、地域に根ざした社会貢献活動になりますよね。

(ネッツトヨタ東埼玉さんのカートイベント)

もし、お子様同伴で来店されたら、そのお子様にカートを乗せてあげたい。
クルマの楽しさを感じてもらい、クルマの立場になった見え方も指導しながら、人生で初めて乗るエンジン付きの乗り物を体感してもらう。

そして、その子供は10年とか15年後に販売店に帰ってくる。
「営業さん、なんで僕がこの販売店でクルマを買うか知ってますか!?」って。続けて、「もう十何年も前ですが、僕はこの販売店さんが行ったイベントで初めてエンジン付きの乗り物に乗ったんです。その時感動して、それが忘れられずに、大きくなってお金を貯めて、クルマを買うならこの販売店で!って決めてたの!」ってね。これも僕がやりたい事の夢物語の一つ。

もちろん、それだけだと足りないからその販売店でモータースポーツの夢を彼に与え続けてね。

週末に販売店の皆さんと、その県出身のドライバーはイベントを開催し、クルマの楽しさを伝えながら、レースの報告を入れながら、お客様のカーライフに関する色々なこと全てをサポートするのね。子供達に夢も与えるの。

そうしたら、お客様だってそのドライバーを応援したくなるだろうし…。だって、お客様も、販売店の皆さんも、レーシングドライバーだって人だもん。クルマというキーワードと人で繋がりたい。

その販売店の近くでレースがある時は、その販売店がバスをチャーターして、お客様とおじいちゃんおばあちゃん、息子や娘たちを連れて、そのドライバーを応援するためにサーキットツアーを開催する。

ドライバーはレースウィークに応援席まで挨拶に行って…違うね!行ってじゃなく、行きたくなるの。気持で繋がっているから。そして優勝したら真っ先にその応援席の前に走って行って喜びと感謝を爆発させる。

最高だよね!今、スーパーGTに応援に来ていただいているお客様にまた違った応援の手法と、地域に密着したモータースポーツの楽しみ方をご提案する。これ実現させたいよね。サーキットでの観戦環境の向上にもつながると僕は信じている。

近くでレースがない時も、その週末はお客様もレースの内容が気になって気になって(笑)、販売店に集まってくるのね。販売店はパブリックビューイングを開催して、販売店には応援したい選手を中心としたお客様とお客様、そして販売店の皆様との共通の話題ができ、コミュニティーが生まれる。

地元の新聞やメディアがそれを取り上げ、時には警察がその交通安全に関したイベントに協力しだす。地方自治体だって。それが実現すれば、販売店はただ単にクルマを売る場所、クルマを整備する場所だけでなく、その地域のコミュニティースペースとなり、お客様のトータル的なカーライフはもちろん、もっと言えば生活そのものに深く入り込んだ地域に密着する無くてはならない存在に。

時代は流れ、どんどん進んでいきます。
人々の生活様式に合わせて、時代に合わせて変革を持てないものは消えていきます。色々なビジネスにおいても、ただ単にモノの売買をするだけの時代は終わった気がしています。お客様に合わせてトータル的な提案を、またはお客様のニーズに合わせたお付き合いの手法を販売店に求められているように僕は思います。クルマを使って、モータースポーツを使ってそのお手伝いができれば我々にとってこの上ない幸せです。

僕は、これをトヨタ自動車と、全国の販売店の皆様と、トヨタのドライバーたちと一緒に実現したいんです。

そうすればその販売店に来店されるお客様だって、今よりもっともっとハッピーになっていただけると思うのです。 どう思いますか!?

僕は今年スーパー耐久シリーズに埼玉トヨペットさんから、86/BRZ Raceにネッツトヨタ東京さんから参戦します。
近年、トヨタの販売店の皆さんは積極的にレースに参戦されています。
それはトヨタ本体が打ち出した方向性もあるでしょうし、それぞれがonly oneの販売店を目指されているからです。

自分たちが取り扱う商品、“クルマ”を使って、レースという過酷な世界で戦うことによって得られる経験と実績、ノウハウを掴み、それをそれぞれの販売店に来られるお客様に対し、レベルの高いサービスへと変えて提供するため。

そういう高い意志を持たれた販売店の皆さんの想いに共感し、僕で良ければなんなりご協力させて頂きたいという気持ち。

S耐だってそう、86/BRZ Raceなんかもっとそう。GT500引退してさっと乗って勝てるもんじゃございません。恥だってかくかもしれません。でもそうやない。
販売店の方々の熱い想いを共に背負い、彼らと共にレースでいろんな経験をするの。それを販売店に持ち帰り、どのようにお客様に伝えるか一緒に考える。
そして伝える、そっちが大切なのね。

ご縁を頂きご一緒させていただく皆さんと、その販売店さんの未来、そして僕らの夢物語実現のために精一杯走り続けるの。

まずは僕をきっかけに…。
埼玉…、坪井がいます。彼の成長を願います。
東京…、関口、石浦、中山…、選びたい放題!(笑)

皆さん、一緒に頑張りましょう!
一緒に夢を見ましょう!
ご協力よろしくお願いします。

m(_ _)m
脇阪寿一

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road