スバルSTIは究極のドライビングマニアだ!
「スバリスト」と呼ばれる熱烈なファンの心をわしづかみにするスポーツブランドが、STI(スバルテクニカインターナショナル)だ。スバルのモータースポーツを統括する会社として1988年4月に誕生した。今回は、同社の営業部営業課主査・篠田 淳さんに、その概要について話を聞いた。
■まさにモータースポーツ直結
「ターゲットとしたのがWRC(世界ラリー選手権)。ここでクルマの堅牢(けんろう)性や性能など、スバルの技術力、商品の確かさを世界中に証明しようと考えました」と、篠田さんは語る。
実際、WRCでは3年連続マニュファクチャラーズチャンピオンを獲得するなど、輝かしい戦績を残したのは皆さんもご存じだろう。その後、2008年にWRCから撤退するのを機に、モータースポーツ活動に加えて、コンプリートカーなどのプロダクトづくりにも力を入れることになった。
「STI初代社長の久世隆一郎は、自らプロダクトをリリースすることに熱心でした。ラリーに参戦しているのであれば、ラリーと関連性の強いクルマを出したい。それがインプレッサ22B STIバージョンというコンプリートカーでした。2008年からは、スバル車にSTIの経験を加えることで、より運転が楽しくなる世界を構築したいという思いから、STIとしてのプロダクトをお客さまに対してもっと訴求いくことにしたのです」
STIのプロダクトとしては、インプレッサS201/S202といったSシリーズと呼ばれるコンプリートカーに加えて、走行性能を高めるパフォーマンスパーツが用意されている。
「STIが独特なのは、SUPER GTやニュルブルクリンクのレースマシンをつくるエンジニアや設計者が、そのままSシリーズやSTI Sport、パフォーマンスパーツの開発に携わっていることです。普通は、レースはレース、市販車やパーツは別という分業制ですから。『レースで培ったノウハウを市販車に注ぎ込む』ということを本当にやっているのが、STIの性格を色濃く表しています。実際、SUPER GTやニュルブルクリンクのマシンにSTIの市販パーツを装着しています」
まさにモータースポーツ活動がプロダクトの開発に直結しているというSTI。アパレル商品でも、ドライビング時の動きを追求したドライビングウエアをそろえるなど、そのこだわりは尽きることがない。「ひとことで言えば“究極のドライビングマニア”」(篠田さん)という言葉がまさにぴったり。それがSTIなのである。
■Sシリーズは究極のスポーツカー
STIのコンプリートカーには、大きく分けて「Sシリーズ」と「STI Sport」のふたつがある。
Sシリーズはスバル車をベースに、STIが開発からパーツの架装までを受け持つ究極のスポーツカー。エンジンは単に出力を向上させるだけでなく、ピストンやクランクシャフトのバランス取りなど、自動車メーカーでは手の届かないチューニングを実施。それに見合った足まわりのセッティングやボディ剛性のコントロール、タイヤの選択なども行う。それだけに製作は職人頼みで、生産は400台前後が限界。毎年発売するのが難しいほどの仕立てとなっている。
そこで、「さらに多くの人にSTIの世界観を届けたい」との思いから、STIが目指す「世界一、気持ちいいドライビング」をSシリーズよりも広く、比較的手の届きやすい価格で実現するのがSTI Sportだ。こちらは、STIとスバルが協業して開発を共同で行い、生産をスバルの工場が担当するというもの。スバル車の最上級グレードとして展開され、STIファン層の拡大に大きく貢献している。
STI Sportなら気持ち良く踏んでいける
総評:ライターによるレヴォーグ2.0STI Sport EyeSightの“スポーツモデル度”
- エクステリアデザイン★
- インテリアデザイン★★★
- コックピット★★
- エンジン+トランスミッション
- 乗り心地★★
- ハンドリング★★★
- 燃費
- 車両価格★★★
峠を愛するドライバーに
スバル レヴォーグの最上級モデルであるレヴォーグSTI Sportは、スバルのモータースポーツ活動を担うSTIのノウハウを生かし、開発されている。その走りは、ベース車とどのように違うのか、モータージャーナリストの島下泰久が乗り比べた。
■ベースモデルも大きく進化
STIという名が付いていると、てっきりスパルタンなスポーツ仕様かと思ってしまうところだが、スバル レヴォーグSTI Sportはそうではなく、スバルとSTIとのコラボレーションにより走りの質を高め、内外装のクオリティアップを図った量販モデルと位置づけられる。
確かに2016年7月の登場時には、スポーティさと同時に上質なタッチも狙った走りに、ベース車からの大きな飛躍を感じたものだが、その後、レヴォーグにも改良が加えられ、その走りに相当なテコ入れがされている。では現状での両モデルには、一体どれだけの違いがあるのか。それが、今回のテーマとなる。
最新型のレヴォーグとして今回用意したのは、2.0GT-S EyeSight。その乗り味は、走り始めた瞬間に「変わった!」と分かるほど進化している。端的に言えば、乗り心地が格段に良くなった。従来の、常にアシが突っ張って動かない感じがかなり改善されて、しっかりとストロークするのが体感できる。首都高に多い、路面の継ぎ目のような鋭い入力に対しては、まだ、しなやかとまでは評せないが、それさえクリアできればほぼ満足していいかもしれない、と思えるほどに大人っぽくなっているのだ。
実際、サスペンションは前後ともリバウンドストロークが伸ばされ、スプリングはソフトに。フロントロアアーム後ろ側のブッシュがピロボールからゴムに改められ、リヤスタビライザーも細いものに変更されるなど、見るからに乗り心地改善に効きそうな変更がこれでもかと施されている。ここが課題だという認識、ちゃんとあったわけである。
- 2017年7月のマイナーチェンジに際して、スバル レヴォーグは全車、サスペンションや電動パワーステアリングが改良された。
■気持ち良くドライブできる
しかも、直進性まで良くなっている。電動パワーステアリングは機構も制御も見直されて、特に切り始めの手応えが滑らかになったし、切っていく途中で重さが微妙に増減する感じもなくなった。これもまた快適な印象につながっているのは間違いない。
2リットルターボエンジンは全域でトルクが出ていて、CVTのメリットもあり、高速巡航中の微妙な速度調整などは、とてもやりやすい。こういう場面でのレヴォーグは、シンメトリカル・フルタイムAWDの安心感もあり、実に快適で、爽快だ。アイサイト・ツーリングアシストのACC(アダプティブクルーズコントロール)機能を使っている時にも、このスムーズさは大いにプラスになっていて、車速の調整はとても自然に行われる。
ただし、アクセルを一気に深くまで踏み込むと、一瞬のタイムラグの後に期待以上の加速感が出てしまうこともある。確かに高回転域は一段とパワフルなのだが、もう少しフラットな特性の方が扱いやすいだろう。現状は、ちょっと古くさい印象がある。
細かい不満はあるものの、乗り心地だけでなく静粛性も格段に向上して、レヴォーグの走りはずいぶん洗練された。終始ザワザワ言っている感じが薄まり、気持ち良くドライブできるクルマにようやくなったという印象を抱いたことは確かである。
- ワインディングロードを駆け上がるレヴォーグ2.0STI Sport EyeSight。今回試乗した最新型は、操舵フィーリングの向上のみならず、静粛性の改善も図られている。
■変更点は多岐にわたる
続いてはSTI Sportを試す。外観で、まず違いが分かるのは切削光輝+ダークグレーの専用アルミホイールと大径のデュアルマフラーカッター。フロントバンパーとLEDフォグランプ、フロントグリルも変更されているが、イメージを一変させるほどではなく、割と控えめだ。もちろん、車体の前後にはSTIのオーナメントが装備される。
- レヴォーグSTI Sportのフロントまわり。専用のフロントバンパーおよびグリル、LEDフォグランプなどが与えられる。
- レヴォーグSTI Sportの大型デュアルマフラーカッター。側面のSTIロゴが特別感を醸し出す。
インテリアは、まずボルドーとブラックの2トーンとされた専用シートがインパクト大。ステアリングホイールとシフトレバーは“高触感革”巻きとされ、ほかにもインパネセンターバイザー、フロントコンソールリッドなど視界に入るさまざまな部分にレザー調素材が使われる。さらに室内全体のステッチが、ノーマルのブルーに対してレッドに統一されている。メーターのイルミネーションも、やはりレッドだ。
パワートレーンに変更はないが、サスペンションはフロントがビルシュタインの倒立式ダンパー「DampMaticII(ダンプマチックⅡ)」、リヤが通常のビルシュタインダンパーを使い、スプリングも専用品とされる。タイヤはサイズ、銘柄ともに共通。さらに、ステアリング周りには専用クランプスティフナーなるアイテムが追加されている。
乗り味は、やはりこちらの方が明らかに引き締まった感触だ。道が良ければ、視線が上下することもなく快適。一方、道が悪いところでも、入力自体は大きくなるもののダンパーが良いのか動きがスッキリしているから、案外不快ではない。どのくらいの距離を走るのか、走るステージはどこかで、評価というか好き嫌いは変わってきそうである。
- レヴォーグ2.0STI Sport EyeSightの駆動方式は4WD。前後のトルク配分を45:55とし積極的なスポーツドライビングを可能とする、「VTD-AWD」が採用されている。
■価格差にも納得の乗り味
一方、おそらく誰もが喝采を送るに違いないのが、ワインディングロードでのフットワークだ。操舵に対してロール感は最小限で、ノーズがスッと軽やかに切れ込んだら、あとはひたすらにオン・ザ・レール。中高速コーナーの連続するセクションでは、まさに水を得た魚で、ハイスピードを保ったままグイグイ曲がっていく。パワートレーンのレスポンスも上々。路面が荒れている所以外は接地感も文句なしで、気持ち良く踏んでいける。
一方、低速コーナーではやや曲がりにくい感もある。ただし、これはアクセルを戻した時にレスポンスの歯切れ良さが足りないCVTのせいかもしれない。要は、アクセルを荷重コントロールに使いにくいのだ。中高速コーナーを含め、おかげで「自分で操っている感覚」が強く得られないのは、改善すべき点として指摘しておきたい。
- レヴォーグ2.0STI Sport EyeSightは、アクティブ・トルク・ベクタリングを搭載。コーナリング時、フロントの内輪にブレーキをかけることで、旋回性を向上させる。
再度、同じ場所で2.0GT-S EyeSightに乗ると、全般に動きの切れ味が乏しく感じられた。ステアリングを切り込んでからノーズが反応するまでに半テンポ遅れ、おかげでアンダーステア感も強調される。先に述べたように単体で乗っていた時には操舵感は上々と感じていたから、つまりはSTI Sportが備える専用クランプスティフナーが、相当な効果を発揮しているということだろうか。ステアリング周りの剛性が高まり、よりリニアなレスポンスを実現したわけだ。
走り、特にワインディングロードでの楽しさを重視するならば選ぶべきは断然、STI Sportである。普段の乗り心地で選ぶならば、2.0GT-S EyeSightもいいが、今回ひかれたのは前者だ。STI Sport、エンジンは同じで価格差は40万円強と確かに安くはないが、STIの技術とノウハウが詰まったこの乗り味のためなら、決して高くはないと言ってもいい。あるいは2.0GT-S EyeSightの予算だったら、あえて1.6STI Sportという手もアリかもしれない。その価値はあると思う。
(文=島下泰久/写真=郡大二郎)
- レヴォーグSTI Sportには、専用色のWRブルー・パールを含む全8色のボディカラーが用意される。
[ガズー編集部]
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