日産NISMOはモータースポーツそのものだ!
日産のモータースポーツ活動を担う会社として、1984年に設立されたのがニッサン・モータースポーツ・インターナショナル株式会社(以下、ニスモ)。彼らが活躍するモータースポーツシーンには、いつも「NISMO」の文字が輝いている。
■一段とエキサイティングに
この栄えある名前が冠されるカスタマイズカーが「NISMOロードカー」だ。「NISMOロードカーは、ニスモがワークス活動を通じて蓄積してきた技術やブランド価値を、より広いお客さまに体感していただきたいとの思いからスタートしたコンプリートカーです」と、オーテックジャパンNISMOロードカー事業部の担当者は語る。
その起源というべきモデルが、2007年に登場したフェアレディZ バージョンNISMOである。
「当時日産がSUPER GTにZで参戦していたこともあって、そのイメージを生かしてつくったのがこのクルマでした。より多くの人に提供するために、ニスモが描いた理想を、同じ日産グループのオーテックジャパンが形にしました。それをベースにして、ニスモが3.8リットルのエンジンを積んだバージョンNISMO Type 380RSを世に送り出し、そのコンペティションモデルであるType 380RS-Cをつくりました」。
これをさらに発展させたのがNISMOロードカーだ。「全国の日産のお店で安心して買えて、普通にメンテナンスが受けられるコンプリートカーの世界をもっと広げていきたいという思いから、2013年のジュークNISMOを皮切りに、本格的な展開を始めました」
「その魅力はまず、モータースポーツで培った空力性能やモータースポーツに直結するスポーティなデザイン。そして一番はベースモデルの性能を研ぎ澄ますことで得られる、アドレナリンが湧くような加速感です。ニスモが持つキビキビ走るためのノウハウを、量産モデル向けに最適化して注ぎ込んだのがNISMOロードカーなのです」
2017年4月、NISMOロードカーの事業を拡大するため、企画・開発を行う組織をオーテックジャパン内に設立。「ニスモ・カーズ事業部」として、これまで以上にエキサイティングなコンプリートカーが世に送り出されるようになるに違いない。
■セレナからGT-Rまで幅広く展開
日産のスポーツブランドとしてのNISMOは、2013年1月に発売した「ジュークNISMO」を皮切りにコンプリートカーの供給を本格的にスタートした。
「NISMOロードカー」と呼ばれるファクトリーカスタムカーは、NISMOのモータースポーツ活動を通じて得られたさまざまな経験を、走行性能やスタイリングに反映。純正品としての高い品質を保ちながら、より多くのユーザーにNISMOブランドの価値を提供している。
現在は、日本国内で販売されているGT-R、フェアレディZ、ジューク、ノート、マーチの5車種に加えて、セントラ、パトロールの計7車種を展開。いずれも、日産、ニスモ、オーテックジャパンが強力なタッグを組むことで、統一感のあるデザインや、ダイナミックな走りを実現している。
さらに今後は人気のミニバン、セレナやEVのリーフなどにもNISMOロードカーをラインアップすることで、現在年間1万5000台ほどの販売台数を大幅に拡大したい考えだ。
NISMOの“走り”には新たな喜びがある
総評:ライターの感覚によるノートe-POWER NISMOの“スポーツモデル度”
- エクステリアデザイン★★
- インテリアデザイン★
- コックピット★★
- エンジン+トランスミッション★★
- 乗り心地★★★
- ハンドリング★★
- 燃費
- 車両価格★★
いつもアクセルを踏みたくなる
特別なチューニングが施されたスポーツモデルの走りは、ベースとなる車両とどのように違うのだろうか。今回は、日産のモータースポーツ活動を担うNISMOの経験が生かされたノートe-POWER NISMOを、ノーマルのノートe-POWERと比べながら試乗。モータージャーナリストの島下泰久が、その特徴を報告する。
■新鮮さと実利を併せ持つ
登場以来、絶好調を続けるノートe-POWER。ライバルの中では地味な存在だったノートが、国内販売で1位を記録するまでに至ったのは、内燃エンジンで発電するものの駆動はすべて電気モーターで行うシリーズハイブリッドシステムがもたらす低燃費、そして新しい走りの喜びのおかげにほかならない。
- ノートe-POWERのパワーユニット。NISMO仕様車も最高出力や最大トルクなど基本的なスペックは同じだが、特別チューンのVCM(Vehicle Control Module)が搭載される。
あらためて乗ると、電気モーター駆動の何よりの利点は、やはりそのレスポンスの良さだと再認識する。アクセルを踏み込むとすぐにパワーが湧き出し、その後の加速はシームレス。駆動用バッテリーの容量は小さいから、すぐに発電用の直列3気筒1.2リットルエンジンが始動するものの、効率の良い回転数を保って淡々と回っているおかげで、エンジンの音や振動はすぐに気にならなくなる。
- ノートe-POWER X ブラックアローのリヤビュー。ドレスアップバージョンの同車には、ルーフスポイラーが装着されている。
しかも、SもしくはECOモードに設定すると「e-POWER Drive」により、アクセルオフで強めの回生ブレーキがかかって、ブレーキペダルに足を移すことなく十分な減速Gを得ることも可能になる。これがまたモーレツに面白い。速度だけでなく車両姿勢の微妙なコントロールが右足ひとつでできるから、これまで体験したことがないほど、コーナリング時に狙ったラインに乗せるのが容易なのだ。
もちろんストップ&ゴーの連続となる渋滞でも、走りは圧倒的にラクになる。つまりe-POWERの走りは新鮮さも、実利も兼ね備えているのである。
■見えない部分もスペシャル
ノートe-POWER NISMOは、そんなノートe-POWERをベースにモータースポーツの豊富な知見を持つNISMOが手を入れたホットバージョンだ。ノーマルとの相違点は、とてもすべては書き切れないほど多岐にわたる。外観は前後バンパー、フロントグリル、LEDデイライト、サイドシルプロテクター、ルーフスポイラー、シャークフィンアンテナ、直径85mmのエキゾーストテールエンドが、すべて専用。そして忘れてはいけない、“赤耳”こと赤く塗られたドアミラーをはじめ、各部に赤いアクセントが入れられている。
インテリアも、グリップ部分にアルカンターラを配した3本スポークステアリング、アルミ製のペダルとフットレスト、nismoロゴ入りの液晶メーターパネルに、スエード調スポーツシートなど、体が触れる部分を中心に専用アイテムが投入されている。そして外観同様に、ステアリングホイールのセンターマークや各所のステッチ、エアダクト等々、やはりそこかしこに赤の差し色が。ベタではあるけれど、スペシャルな雰囲気は確かにある。
もちろん変更点は、これらコスメティックな部分だけにはとどまらない。まずシャシーではサスペンションが専用品に。フロントには強化スタビライザーも入り、またEPSの制御にも手が入れられている。いやいや、それだけじゃない。ノートe-POWER NISMOには、専用のボディ補強も施されている。部位はフロントクロスバー/フロントサスペンションメンバーステー(トンネルステー)/トンネルステー/リヤサスペンションメンバーステー/リヤクロスバーと、範囲はガソリンエンジン版のノートNISMOより広く、ほぼノートNISMO Sにも匹敵する。
16インチアルミホイールには195/55R16サイズのヨコハマDNA S.driveを組み合わせる。ちなみにNISMO、NISMO S、e-POWER NISMOでタイヤ銘柄が全部異なっているのだから開発陣のこだわりは相当なもののようだ。そして仕上げは専用のチューニングコンピューターの採用。ノーマル、Sの両モードが専用セッティングとされる。
- ノートe-POWER NISMOの16インチアルミホイール。タイヤはヨコハマDNA S.driveが組み合わされる。
■ワインディングロードで本領発揮
見かけは結構派手というかヤンチャ。けれど乗り込み、走りだすと元気さより先に、良いクルマ感が増していることの方が印象として強く残る。
ノーマルのノートe-POWERでは、この1年の間にフィットやヴィッツなどのライバルが軒並みボディを強化して騒音や振動のレベルを下げてきたのに対して、フロアのブルブルとした振動、ガサついた騒音が目立ちはじめているのに、NISMOは車体がビシッとしていて減衰感が良く、これらをスッキリと丸めた上質なタッチが演出されているのだ。ボディ各部の補強が効果を発揮しているのは明らか。さらに言えば、いかにもアンコの詰まった専用のシートも、乗り味にはずいぶん貢献しているに違いない。
- ワインディングロードを駆け抜ける、ノートe-POWER NISMO(写真右側)とノートe-POWER X ブラックアロー。
ただし、サスペンションはそれなりにハードだし、タイヤに起因するらしいロードノイズの侵入も小さくはない。本領を発揮するのは、ゆっくり流すような場面より、やはりワインディングロードのような舞台だろう。
ノーマルモードでもアクセル操作に即応してトルクを発生するe-POWERのうま味は存分に感じられるが、一番それらしいのはやはりSモードだ。トルクの立ち上がりがさらに鋭くなるだけでなく、アクセルオフで回生ブレーキによる適度な減速Gが得られるため、走りのリズムを取りやすい。
- ノートe-POWER NISMO(写真奥)は、リヤバンパーの中央に、レーシングカーを思わせるリヤフォグランプが装着される。
鋭くなるといっても決してピーキーなわけではない。あまりに自然なので、本当にSモードってノーマル車と設定変えてるのかな? と思うほどなのだが、試しにECOモードに切り替えると、あまりの力感の落差に面食らってしまった。それぐらい、明らかな差があるのだ。
■電動車でも個性は出せる
強いて言えば、舗装が荒れたところではサスペンションがハード過ぎるのか接地性も損なわれ、姿勢が暴れ気味になる。ちょいぬれの路面でも同様。アクセルコントロールには気を使う。けれどアクセルを踏んでも離しても、とにかく即座にレスポンスしてくれるからコントロール性は悪くない。
- ノートe-POWER NISMOのパワーユニットはノーマル車と同じだが、VCM(Vehicle Control Module)には専用チューニングが施されている。
これは4輪の荷重、そしてコーナリング姿勢の調整にも、とても有用。操舵の重いステアリングは一定舵角で保ちながら、右足の微妙な動きだけで狙ったラインにぴたり合わせ込むという走りが容易にできるから、うれしくなってしまう。多少、格闘気味になるのだって、決してどこかに吹っ飛んでいくような深刻な状況になるわけではなく、それも楽しさと評せるぐらい。大体NISMOを買う人は、それなりに覚悟も期待もしているはずだ。
- ノートe-POWER NISMOには、ベース車と同じECOモードのほか、専用にセッティングされたノーマルモードとSモードを加えた3つの走行モードが用意される。
電気モーター駆動の新しいパワートレーンによって、ノートe-POWERは普段のドライブでさえもこれまでとは違った喜びをもたらすクルマとなった。ノートe-POWER NISMOは、そんな特徴が積極的に走りを楽しみたい場面で最大限に生きるように味付けされている。このクルマに乗っていると、ECOモードなんてもってのほか、いつもSモードに入れていたくなる。アクセルを踏み込みたくなるのは、つまりそういうことだろう。
電気モーター駆動のクルマは走りの個性を出しにくいとはよく言われる。しかしながらノートe-POWER NISMOに乗ると、いやいやそんなことないでしょう? と言いたくなるのである。
(文=島下泰久/写真=田村 弥)
- 専用チューニングサスペンションを装着するノートe-POWER NISMO。フロントには強化スタビライザーが備わる。
[ガズー編集部]
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