BMW Mはスポーツ性能の求道者だ!
青、紫、赤のストライプが添えられた「M」のエンブレムは、BMWオーナーやファンにとっては特別な意味を持っている。MはもちろんBMWモータースポーツ社に由来するものだ。
■Mは究極のドライビングマシン
「1972年、BMW社内のモータースポーツ部門を専門の会社として立ち上げたのがBMWモータースポーツ社の始まりです。その後、1993年にBMW M社に社名を変更し、現在にいたります」と、BMWの広報を担当する前田雅彦さんは語る。
そのBMW M社は現在3つの事業を柱としている。
「ひとつはMモデルなどの車両の開発。例えばスポーツモデルの頂点に君臨するMモデルは、日常走行からサーキット走行までを1台でこなす究極のドライビングマシンです。ふたつめはBMW Individualというカスタマイズを手がける部門。そして、スポーツモデルを乗りこなすには、きちんとしたノウハウを提供しなければならないという考えから、ドライバートレーニングも手がけています」
中でも重要なMモデルについて、その特徴を前田さんにたずねると、「私たちはMモデルを通常のラインアップとは別のものとして位置づけています。だから3シリーズのトップモデルがM3ではない。違う次元のモデルなのです」という答えが返ってきた。
「Mモデルは、そのままサーキットに持ち込めるクルマに仕立て上げられています。日本ではそういった機会は少ないかもしれませんが、サーキットまでドライブし、そのままコースインして、帰ってくることができるのです。Mモデルは、ドライバーにさらなる高揚感やわくわく感、安心感をもたらします」
ドイツなら、ニュルブルクリンクをひとっ走りして、そのまま帰ってくるなんてことも朝飯前。それがMモデルなのである。
■日本ではM Sportが約半分
BMWのラインアップの中でBMW M社が手がけている主なものがM SportとM Performanceモデル、そして、Mモデルである。BMWの各モデルには、標準グレードのほかに、スポーティな内外装が与えられた「Sport」というデザインラインがある。これをベースに、さらに足まわりなどにチューニングを施したのが前述のM Sportで、日本市場では販売の約半分がM Sportという人気ぶりだ。
内外装や足まわりの変更に加えて、エンジンのパワーアップを行っているのがM Performanceモデル。M140iやM240i クーペ、M760Li xDrive、X4 M40iなどがこれにあたる。
そして、スポーツモデルの頂点に君臨するのが、エンジンやシャシーを専用に開発したMモデル。トランスミッションも、多くのモデルがトルクコンバーター式のオートマチックではなくデュアルクラッチトランスミッションやマニュアルを積み、4WDの場合は専用のM xDriveを採用するなど、スポーツ性能を重視したクルマづくりとなっているのが特徴だ。
M Sportなら“BMWの走り”に浸れる
総評:ライターの感覚によるBMW 340i M Sportの“スポーツモデル度”
- エクステリアデザイン★★
- インテリアデザイン★★
- コックピット★★
- エンジン+トランスミッション
- 乗り心地★★
- ハンドリング★
- 燃費
- 車両価格★★
これぞBMWの真骨頂
BMWの中核モデル「3シリーズ」には、エクステリアやインテリア、足まわりの仕立てが異なる“デザインライン”が設定されている。今回は、中でもスポーティなキャラクターが与えられている「M Sport」モデルに試乗。他グレードとの比較を交えながら、その特徴を報告する。
■より多くのひとに“スポーツ”を
カタログにレギュラーモデルと並ぶかたちで、エアロパーツやスポーツシートといった内外装、そして専用のサスペンションまで与えたスポーツ仕様を設定する。今ではメルセデス・ベンツやアウディも同様のラインアップを展開しているが、そのはしりとなった存在といえば、BMWが各車に設定するM Sportだろう。
- M Sportモデルのフロントフェンダーには、トリコロールが特徴的な「M」のエンブレムが装着される。
M3やM5に代表される、モータースポーツのノウハウを注ぎ込んでパワートレーンまで専用品としたMモデルに対して、より間口広くスポーツ感覚を味わわせるM Sportは、ユーザーがBMWに抱く走りのイメージとの親和性と相まって、非常に高い人気を誇っている。
BMW 340iセダン M Sportは、3シリーズの最高峰グレードとして直列6気筒3.0リットルターボエンジンを搭載する340iセダンがベース。パワートレーンこそ変わらないものの、多数の専用装備を搭載している。
- 最高出力326PSを発生するBMW 340iの3.0リットル直列6気筒ターボエンジン。出力やトルクの値には、グレード(M Sport/Luxury)による差異はない。
外観ではフロントエプロン、リヤ&サイドスカートからなる「Mエアロダイナミクス・パッケージ」、クローム仕上げキドニーグリル、光沢ブラック仕上げのサイドウインドゥフレームにクローム仕上げのテールパイプ等々、さまざまな専用アイテムを装着。さらに試乗車には「ファスト・トラック・パッケージ」として19インチMライトアロイホイール・ダブルスポーク・スタイリング442Mが、電子制御式可変ダンパーを使ったアダプティブMサスペンション、対向ピストンキャリパーのMスポーツ・ブレーキとともにおごられていた。
■走る前から気持ちが高まる
ドアを開けると、出迎えるのはMロゴ入りのアルミ製ドアシルプレート。ヘキサゴンクロス/アルカンターラコンビネーションの生地を使ったスポーツシートは体を包み込むようなホールド感で、太く、しっくりと手になじむリム形状のマルチファンクションMスポーツ・レザーステアリングホイールを握る頃には、ベタながら走りの気分が盛り上がってくるのを感じる。
- BMW 340i M Sportのステアリングホイール。リムの下端が「M」のエンブレムで飾られる。
操縦かんのような形状のスポーツ・オートマチック・セレクターレバーを操作してDレンジへ。アクセルペダルを踏み込んで走りだすと、さすがBMWのストレート6、緻密なフィーリングで心地よく吹け上がり、実に爽快だ。低速域から密度の濃いトルク感が味わえるだけでなく、回転上昇に伴ってますます回転の芯が出てきて、ギューンという目の詰まったサウンドを発しながらトップエンドまで力強く駆け上がっていく。パワーのリニアな盛り上がりには、思わずさらに踏み込みたい衝動にかられてしまう。4気筒も、3気筒だってよくできているBMWのエンジンだが、「やっぱり6気筒は格別」とあらためて心酔させるのだ。
M Sport専用シャシーの乗り心地は、典型的なBMWのイメージに忠実に、路面に対する感度はやや高めではあるものの、短いストロークの中でサスペンションがしっかり仕事をしているのを実感させる。前後異サイズの19インチタイヤだけに路面の継ぎ目などではやや鋭い入力感もあるが、それを除けば乗り心地はフラットに保たれる。
- 細身のスポークが特徴的な、340i M Sportの19インチホイール。タイヤはブリヂストン・ポテンザS001が組み合わされていた。
■運転そのものに夢中になれる
さすがとうならせるのが一体感たっぷりの操縦感覚だ。ステア操作に対するノーズの入り方、旋回中のいかにも良好な前後のバランス感、立ち上がりに向けてアクセルを踏み込んだ際の蹴り出し……と、街中をゆっくり走らせていても、意のままになる感覚が濃厚で、運転そのものに夢中になれる。BMWの真骨頂がここにある。
ドライビング・パフォーマンス・コントロールを「SPORT+」に入れるとサスペンションがより締め上げられるが、それでも決して不快ということはない。ワインディングロードなどでは活躍してくれるだろう。街中では特にそれと意識させることのない、対向ピストンキャリパーを使ったブレーキも、またしかり。より負荷が高まる領域でこそ、本領を発揮するはずだ。
- M Sportモデルには、専用のチューニングが施された「Mスポーツ・サスペンション」が装着されている。
続いてステアリングを握ったのは340i Luxury。こちらは同じ3シリーズでも、見るからに落ち着いた雰囲気が演出されている。フロントエプロン、リヤスカートはおとなしいデザインで、かつ、クロームのアクセント入り。キドニーグリル内のバー、サイドウインドゥフレームモールディングも、やはりクロームでまとめられている。18インチのホイールも繊細なデザイン。そしてタイヤは前後同サイズとされている。同じ3シリーズでも、並べてみるとこれだけで雰囲気は結構異なる。個人的には、こちらの見た目の方が好みかもしれない。
■期待に応えるスポーツモデル
ドアを開けて、ダコタレザー張りのシートに身を預ける。太ももの脇を支えるサイドサポートが低く、M Sportの後ではしばらくの間、物足りなくも感じたが、シート形状自体は悪くない。そもそもBMWはドライビングポジションが良好なので、自然にいい姿勢が取れるのも大きい。
サスペンション、そしてタイヤの違いによる乗り心地の差は想像通り、明らかに穏やか。舗装状態を問わず当たりが丸く、街中での快適性は高い。ただし、速度が上がってきたり路面がうねっていたりすると、上屋の動きが大きくなり、落ち着きはむしろM Sportの方が上とも感じさせた。
- 快走する340i Luxury。燃費性能は340i M Sportと変わらず、JC08モードの値で13.5km/リットルと公表されている。
面白いのは、同じエンジンのはずなのに340i Luxuryでは、そのパワーや吹け上がりより、直列6気筒ならではの滑らかさや上質感の方に意識が向いたことだ。アクセルを深く踏み込むよりも、粛々とペースを保つことに、むしろ心地よさを覚える。柔らかな乗り心地、依然としてスポーティではあるが、やや抑え目のキビキビ感、そして視界に入る内装の雰囲気などが、そうさせるのだろうか。自分のことながら、これだけ気分が変わるのが、とても不思議に感じた。
- クローム仕上げのエキゾーストパイプやM Sport専用のリヤエプロンがスポーティなキャラクターを強調する。
今のBMWのレギュラーモデルは、かつてのイメージからすると驚くほど乗り心地重視のセッティングになっている。スポーツセダン的な期待値からすると、少々物足りなさもあるのだが、代わりにクルマに急(せ)かされない上品なスポーツ性とでもいうべきものがうまく演出されているのも確かだ。
一方、M Sportではドライバーはイメージ通りのBMWの走りの世界に浸ることができるし、内外装の雰囲気もそれを裏切らない。デザインの作り分けなんて結構大変だろうとは容易に想像できるのだが、それだけの価値はしっかり表現されているのである。
(文=島下泰久/写真=郡大二郎)
[ガズー編集部]
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