評論家は新型スープラ・プロトタイプをどう評するのか

2018年12月初旬、袖ヶ浦フォレストレースウェイにおいて、トヨタ自動車が主催するメディアを対象としたGRモデル試乗会が開催された。

この試乗会ではすでに発表されている、後付けできるペダル踏み間違い防止・抑制装置の公開や新型車の試乗などが行われたのだが、中でも注目を浴びていたのは新型スープラ。そのプロトモデルの試乗ができるという部分だ。
新型スープラは、日本ではセリカXX、国外ではスープラとして販売されていたA40/50型から、国内でもスープラというネーミングとなったA60型、A70型、そしてA80型へと受け継がれてきた、直列6気筒エンジンとFRレイアウトの組み合わせという伝統はそのままに、まったくの新型車として開発されたものだ。型式であるA90というナンバーも、その伝統を表すもの。プロトタイプの偽装をよく見てもらうと、各部にA90というモデルナンバーが入っていることがわかるはず。これもトヨタのスープラに対する想いが表れている部分だろう。

トレッドとホイールベースの関係性や重心高という、乗り手自身が運転する楽しさを味わうことができるようにするための重要なポイントを優先してボディを設計。居住性などを重視する従来の方法とは違って、シンプルにハンドリングや運動性能から開発のアプローチをしているという。アルミ材とスチール材から構成されるボディの剛性は、86の約2.5倍強く、限定販売されたLFAよりも強いと開発陣は語る。

そんなボディに組み合わされる駆動系は、フリー状態から100%ロックまで、自由にロック率を変化させることが可能なアクティブディファレンシャルと、アダプティブ・バリアブル・サスペンションを組み合わせることで、より積極的な挙動のコントロールが可能となっている。直6の3リッターターボエンジンは、1600rpmで最大トルクを発生する、パワーもそうだが扱いやすさも兼ね備えたもの。しかも、重量バランスは前後50:50となっている。

新型スープラ・プロトタイプ それぞれの評価

プロトタイプのA90スープラに今回試乗したのは、雑誌やWeb媒体で試乗記を発表する自動車評論家やレーシングドライバー。そういった人たちがこのA90スープラをどのように感じたのか。

脇阪寿一氏ーーーボクにとってA80型スープラは、自分の名前を広めてくれた恩人のような存在です。全日本GT選手権でスープラのレーシングカーに乗って闘ったことで、いまの自分があります。このA90型は今回初めて運転したわけですが、アクセルを踏みたくなる、そしてアクセルを戻したくなるクルマです。加速感やコーナーからの立ち上がりのスムーズさ、これは格別ですし、シフトダウンするときのブリッピングも含めて、スポーツを感じられるクルマだと思います。

黒沢元治氏ーーーもともと僕は、日本のクルマはボディが動きすぎると言い続けてきた。動きすぎるとリアがプアになって、滑り出しのタイミングが早くなったりしがちだからだ。そこがヨーロッパのクルマづくりと日本メーカーのクルマづくりの、大きな違いといえる部分だった。この新型スープラは、そういう日本車のレベルから見ると、2段階ほど良くなっている。そこはハッキリと評価すべき部分といえる。その上でさらにいうと、ここまで良くなっているのだから、フロントはクルマを支える反力をもう少し増す方向にし、リアサスペンションの沈み込みを2段くらいよくする方向として、車体の動きを制御したい。そうすると国際基準と言っていいものになるはずだ。

  • 脇阪寿一氏 元・レーシングドライバー
    脇阪寿一氏
    元・レーシングドライバー
  • 黒沢元治氏 自動車評論家、元・レーシングドライバー
    黒沢元治氏
    自動車評論家、元・レーシングドライバー

片岡英明氏ーーーA80スープラというのは、グランドツーリング的な位置付けのクルマだったが、このA90スープラはピュアスポーツといっていい乗り味となっている。ステアリングを切ったときの舵の感じや、ボディ剛性面から受ける印象ということもあるが、包み込まれるような狭いコクピットなどもそう感じる部分。ただ、ホイールベースが短いのに乗り心地が良く、全体にじわっと動くところは、相当走り込みをしているな、と感じた。

中谷明彦氏ーーーひと言でいうなら、すごく良かった。プロトタイプということもあって、これはどうかな? と感じる部分もあるにはあったが、そこを直したいからといって、いまある素晴らしい部分がなくなってしまうのはつまらない。そこは開発陣にうまくやっていってもらいたいところだ。いま言えることは、これまでのトヨタ車にはない、高い走りの質感をこのクルマは持っている、ということだ。

  • 片岡英明氏 モータージャーナリスト
    片岡英明氏
    モータージャーナリスト
  • 中谷明彦氏 レーシングドライバー、自動車評論家
    中谷明彦氏
    レーシングドライバー、自動車評論家

松田秀士氏ーーーアクティブディファレンシャルが大きなポイントといえるクルマかもしれない。このスープラの操縦性、その80%くらいはこのL.S.D.がコントロールしているといってもいいはずだ。一般的なL.S.D.というのは、ドライバーが好みの利かせかたとするために、内部のカムを変えたりイニシャルトルクを変えたりするわけだが、このアクティブディファレンシャルはドライバーが利きかたをいじることはできない。クルマの動きをセンサーが感じ取って、自動的にL.S.D.の利きかたを、0%から100%ロックの間で制御をしているわけだ。そのため、アッサリと言ってしまえば、だれが乗ってもクルマ任せで走れば、それなりに速く走ることができる。でも、クルマの基本的な部分がわかっている人間が乗って、こういう場合はこう制御するんだな、というところを理解すると、その制御を逆手に取るというか、乗りこなしてやって、もっと高いレベルで走ってやろうと思える。逆にいえば、そう思わせてくれる魅力が、このA90スープラにはあった。

斉藤聡氏ーーーメチャメチャいい。すでにいろんな情報が出ていて、このA90スープラを楽しみにしている人も多いとは思うけど、そのまま楽しみにしていて大丈夫。期待を裏切ることはないから、今からしっかりお金を貯めておいて、発表と同時に動けるようにしておいていい。とくにいいと感じたのが、クルマの動き。素直に良く曲がって、行きたいところにステアリングを切ると、そこにしっかりクルマが向かってくれる。よく、切りすぎてステアリングを戻すとか、切り足らなかったから切り足して、なんていうことは、クルマに乗っていればあることだ。しかしこのスープラに関してはそれがない。だからいつでもクルマとの一体感があって、自分の運転が上手くなったかのような感じで走っていられる。ドライバーが行った操作に対してのリアクションが、クルマの側から正しく出てきてくれるところが、この楽しさのポイントといえるだろう。

  • 松田秀士氏 レーシングドライバー、自動車評論家
    松田秀士氏
    レーシングドライバー、自動車評論家
  • 斉藤聡氏 自動車評論家
    斉藤聡氏
    自動車評論家

集まった評論家の皆さんから聞かれたのは、「良く曲がるクルマ」という感想。 世界中の様々なクルマに乗ってきた方が一様に語る新型スープラは、スポーツ性の高いクルマなんだろうと想像できる。
自分が乗ったらどう感じるのか?そんな事を考えるだけでもワクワクする一台だ。

[ガズー編集部]

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