大学自動車部ってどんなところ? -学習院大学編-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢の部員を紹介するこのコーナー。
今回は、東京は目白に位置する学習院大学の自動車部を訪問。
3人の部員さんに、自動車部とモータースポーツの魅力を語ってもらいました。

学習院大学自動車部プロフィール

●部員数 :男子 9名 / 女子 1名  ※部員数は2014年7月現在
部員紹介ページ

●部車 :ダイハツ・ミラ、スバル・ヴィヴィオ、アルファ・ロメオ147 ほか

●活動内容:毎週水曜・木曜の15時~18時、目白キャンパス内にて部車の整備やミーティング等を行い、月1回の土曜活動日にはOBの指導のもと重整備を実施。全日本および全関東フィギュア選手権大会や5大戦フィギュアに参戦するかたわら、スポーツランドやまなしでの軽自動車耐久レースでの表彰台を目指す。

●活動実績:2013年度 全関東学生自動車運転競技選手権大会 女子小型乗用の部 準優勝
2013年度 全関東学生自動車運転競技選手権大会 女子団体の部      準優勝

普段の苦労もレースが始まれば忘れてしまう

1877年創立というだけに、キャンパス内には歴史を感じさせる建物がちらほら。こちらの正門は、皇族寮を教室に改修したという東別館ともども、国の登録有形文化財に指定されている。
今回の取材に対応してくれた、主将の増井達也さん。2007年のF1グランプリでのキミ・ライコネンの走りを見て、モータースポーツに心を奪われたのだとか。
現在メインで使われている競技用車両のダイハツ・ミラ。ちなみに、右に見えるアルファ・ロメオも実は自動車部のクルマ。部車がイタリア車なんて、おしゃれですね!
こちらには部品取り用のスバル・ヴィヴィオと、増井さんいわく「そのデザインが物議をかもした(笑)」という競技用のトヨタ・スターレットが。

今回お邪魔したのは、東京・目白の学習院大学自動車部。学習院大学は幕末の1847年、京都に設けられた公家の教育機関がその源流です。明治維新後に大名や公家たちは「華族」と称することになり1877年(明治10年)に華族学校が神田錦町に開設されました。10月17日の開業式で明治天皇から校名の勅諭があり、現在の学習院はこの時を創立としています。現在はもちろん旧華族の子弟のためだけの学校ではなく、意欲のある若者全般に対する大学院までの一貫教育が行われています。

自動車部は、1933年に前身の「自動車研究会」が発足して以来歴史を積み重ね、戦争の混乱や自動車部の人気低下に伴う部員の減少、それによる部存廃の危機……などの苦境を乗り越え、ここ数年は現役部員10人前後により安定した活動を続けています。全日本や全関東の選手権にも参加していますが、主なターゲットはスポーツランドやまなしで開催されている軽自動車耐久レース。ここでの表彰台を目指し、本気でマシンの整備とトレーニングに打ち込んでいます。

現在の主将は4年生の増井達也さん。中学生のときにF1グランプリの地上波中継を見て、本人いわく「一発でハマり」、高校進学後はFJ1600のフォーミュラマシンでひたすら練習を重ねるほどのクルマ好き&レース好きになりました。

「大学進学後、1年生のときは実はアメフト部に入部したんです。その時はまぁアメフトで4年間頑張って、いわゆるいいとこに就職して、そして週末にレースができたらいいなぁとか思ってたんですが」

しかし入部後、アメフト選手にとって非常に重要なパーツである手のケガを負い、結果として同部を退部。2年生のときは映画撮影のアルバイトなどをしながら、レースに参戦する道を模索していました。そして3年生になってから、思うところあって自動車部に入部。主将ですが、自動車部員としては意外と遅咲きな増井さんなのです。

「とにかく部員が少ないので、一人で何役もの仕事をしなければなりません。そのあたりは確かに大変ですが、いざレース本番となると、そんな“大変さ”みたいなものはすべて吹っ飛んじゃいますね。とにかく楽しいです」

そんな増井主将にとって自動車部の“楽しさ”とは、一体どのあたりにあるのでしょうか?

“自分との戦い”がタイムを向上させる

自動車部の活動拠点であるガレージ。ちなみに、手前のスバル・ヴィヴィオは現在制作中の競技用車両。今は部品取り車からパーツを移設しているところだ
ガレージ内で工具を準備する増井さん。「夏場の作業は、蚊に刺されて大変なんですよ」
学習院大学の自動車部は、全国学生自動車連盟の主催するフィギュアの大会に加え、軽自動車による耐久レースにも参戦している。こちらは2014年6月にスポーツランドやまなしで開催されたレースの様子。
「好きなことをひたすらやっているんだから、大変なことなんてない!」と言い切る1年生の野田達也さん。

「まず第一に、他のクルマや人間と競うこと自体がとっても面白い。他者との戦いですよね。これは単純に燃えます。それと同時に非常に面白いなと思うのが“自分との戦い”です」

自分との戦い?

「はい。例えばサーキットを何周も周回しても、まったく同じ走りというのは一度としてないわけです。どうしてもコーナーごとに出来・不出来が生じてしまいます。あるコーナーはわれながらかなりうまくクリアできたなと思っても、その次のコーナーは全然ダメだったりする。“完璧なラップ”というのは絶対にないんですよ」

確かに、ミハエル・シューマッハーのような超正確な走りができれば別ですが、普通はそうでしょう。

「で、走行後にダメな部分はどこだったのか? なぜダメだったのか? というのを検証し、そこを徹底的に詰めていきます。もう詰めて詰めて詰めまくるわけです。そうすると、あるとき必ず“タイムの向上”という結果が出るんですね。その繰り返しがね、もうたまらなく面白いんですよ!」

レースやフィギュア競技におけるタイムや順位というわかりやすい戦いのほかに、そういった“内なる戦い”が重要である点が、自動車部という在り方の奥深さであり、ひいてはスポーツ全般に共通する奥深さなのでしょう。やっぱり自動車部員も一人の“アスリート”なんですね、納得です。

ちなみに1年生の野田達也さんは、自動車部の魅力について次のように語ってくれました。

「僕の場合は物心ついたときから、自分でもわからないんですがとにかくクルマが好きで、ひたすら大量のミニカーで遊んでました。で、やっとミニカーではなく本物のクルマで遊べるようになった(笑)という感じなんですが、今はクルマを整備することが本当に楽しいですね。先輩やOBの皆さんに教わりながら、今まで知らなかった知識や経験を得ることが本気で面白いんです。ツラいこととか大変なことですか? う~ん……(10秒ほど考えて)や、ホントないですね。端から見ると大変に見えるのかもしれませんが、自分では大変と思ったことはないです。だって好きなことをひたすらやってるんだから、楽しいに決まってますよ!」

新入部員としては大変頼もしい野田さんですが、増井主将としては野田さんの学業のほうがおろそかになっていないか、ちょっと心配そうでしたが!

レースで実感、自動車部ってホント面白い!

学習院女子大学2年生の北川萌絵さん。なんと、ご両親が学習院大学自動車部のOB、OGなのだとか。
軽自動車耐久レースにて、グリッド前の打ち合わせの様子。取材時とは打って変わった野田さんの真剣な表情に、スタート前の緊張感がうかがえる。
部員紹介ページ用のアンケートに、真剣な様子で回答する部員の方々。
競技車両のダイハツ・ミラとともに記念撮影。取材で会えなかった方も含め、皆さん活動頑張ってください。

期末試験や就職活動などの関係で、残念ながら多くの部員さんが取材に来られなかったなか、駆けつけてくれた女性部員・北川萌絵さん(学習院女子大学2年)にもお話を伺いましょう。北川さんはなぜ、女子大学のほうのサークルか何かではなく、失礼ながらむさ苦しくて油くさいこちらに?

「なんかですね、学習院女子大のほうには面白いと思えるクラブがなかったんですよねぇ……」

とはいえテニスとかラクロスとか、いろいろ楽しそうなのがあるとは思うんですが?

「いや実は、わたしの家は両親とも学習院大学で……」

お母さまも学習院女子大ではなく目白のこちらで、同級生だったお父さんとご結婚された、と。まぁよくある話ですよね。

「はい……で、両親ともここの自動車部だったんですよ」

なんと親子2代で同じ大学の自動車部! それはもう超エリートというかサラブレッドですね、自動車部業界の!

「サラブレッドかどうかはさておき(笑)、子供の頃から両親が自動車部時代のことを話しているのを聞いて、『面白そうだなぁ』ってずっと思ってたんです。で、入ってみたと」

どうですか、実際に入ってみて?

「面白いですね~! 入って良かったですよ。両親の話はウソじゃなかった(笑)。他の部ではまず体験できないことを日々体験できるというのも面白いですし、『サークルとか部活動、何やってんの?』と誰かに聞かれて『うん、自動車部』って答えたときの相手の驚愕(きょうがく)っぷりも単純に面白い(笑)」

今年6月1日にスポーツランドやまなしで開催された軽自動車耐久レースで見事6位完走を果たした際も、「部員が少ないためにやることが多くて、かなり大変ではあったんですが、ある意味感動しました。自動車部ってホント面白い!って」という感慨を覚えたとのこと。

最後に、主将の増井さんが語ります。

「何度も言いますが部員が少ないため大変は大変ですが、人数が少ない分、新入部員もサッととけ込めると思います。なので、興味のある方はぜひ気軽に部室やガレージをのぞきに来てください。……ちょっと恥ずかしいんですが、僕が考えたウチの部のキャッチコピーを言ってもいいですか?」

どうぞどうぞ。

「『アクセルを踏み込めば、君の青春も加速する。』……ということで、よろしくお願いします!」

うん、こちらの部の雰囲気を短い言葉で的確に言い表した、ナイスなキャッチだと思いますよ!

(文=谷津正行/写真=ダン・アオキ)

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[ガズー編集部]