大学自動車部ってどんなところ? -静岡大学編-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景やご自慢部員をレポート。今回は、廃部寸前から不死鳥のごとくよみがえった静岡大学自動車部を訪問しました。

★静岡大学 自動車同好会プロフィール
●部員数:男子 12名 / 女子 1名 ※部員数は2014年8月現在
●部車:シビックタイプR EK9 ※ジムカーナ用
スターレットGT-Turbo EP82 ※ジムカーナ用
●活動内容:毎週木曜各自講義終了後、ガレージに集合。現在は出場する種目をジムカーナ一本に絞り込んでおり、他大学と比べると整備作業が中心。まずはひとつのレースで勝利することを目標にしている。
●活動実績:平成26年度全中部学生ジムカーナ選手権大会 男子団体の部5位

廃部寸前の自動車部に“活”を注入

浜松キャンパスは幹線道路沿いにあるので、都会的な環境に恵まれています
部長の田中君。彼の熱意があってこそ、部の再建は叶いました
ガレージには部の名称をカッティングシートを使って自分たちで貼付けました
オークションで落札したスターレット。皆で出し合ったお金で購入したこともあって、愛着度はかなりのもの

明治8年に誕生した静岡師範学校、大正3年に誕生した静岡県浜松師範学校など、5つの学校を統合して、昭和24年に静岡大学が新しく創設されました。現在は、静岡市駿河区と浜松市中区にキャンパスを置き、6学部7研究科で学びを展開。また、農学部の附属施設として、地域フィールド科学教育研究センターが管理する農場や森林が、藤枝市や榛原郡川根本町などにもあります。

自動車部が活動するのは、浜松キャンパス。こちらにある学部は、工学部と情報学部です。JR浜松駅からバスを利用して約20分とアクセスも便利です。

キャンパス内北西角の敷地に自動車部のガレージがあります。部のクルマをはじめ、部員のマイカーもたくさん並んでいました。取材クルーが到着すると、おそろいの緑のつなぎを着用した部員のみなさんが作業の手を止めてお出迎え。さっそく部長の田中君(4年)と、渉外担当の馬場君(2年)にインタビューをお願いしました。

聞くところによると、創部年は不明ですが、なかなか古い歴史を誇るとのこと。かつては活動も盛況だったようですが、2000年代に入ると沈静化…。学内の部活動紹介の冊子にも掲載されなくなってしまいました、との事。

形骸化してしまった自動車部。そこに“活”を注入すべく、田中君が2年前に入部します。実は彼、「ひとつの物事を成し遂げてみたい」との達成意欲をかねてから持っており、傾いた部の体制を立て直すことにやりがいを見出し、自ら過酷な状況に飛び込んだのです。

しかし当時の自動車部は、レースにも出ず、練習も皆無。道具もまともにそろっていません。「幽霊部員もいたりして、本当に廃部寸前」と田中君は苦笑いで振り返ります。

一筋縄ではいかない部の再建

中学の頃まで電車好きだった馬場君。今ではすっかりクルマのトリコです
部内にはロードスターオーナーが3人います。地元のロードスター専門店をごひいき中
活動予定は、幹部だけでなく皆で話し合うことも多いです。「昔では考えられなかった光景です」と田中君
​ジムカーナコースのシミュレーション、メンバーの皆さんがいつも笑顔なのが印象的です

立て直しをひとりで始めた田中君。「最初は部室の掃除から始めた」というから驚きです。「練習ができる状況ではなかったので、まずはできることをコツコツしようと思って動きました」。

続いて、学内の学生係を訪問し、部の再建意志を伝え、方向性を決めようとします。そして次年度の新入部員確保のため、部活動紹介冊子にも掲載してもらうことを訴えました。

2013年春、孤軍奮闘していた彼をサポートするかのように、馬場君ら新入生が入部。田中君は部員を勧誘する際、現状を正直に話し、「新しい自動車部を創造してこう」と熱意を持ってPRしました。

「イチから組織をつくる経験は、なかなかできることではありません。自分にとってプラスになるに違いないと思って入部を決めました」と当時を思い出す馬場君です。

部員が増え、部としての体裁も若干整備されました。しかし、まだ工具も不十分で、走るクルマもありません。そこで、部員は皆でお金を出し合い、工具をそろえ、トヨタ スターレットを購入。これはレースのレギュレーションで定められている6点式ロールバーが既設されたお買い得なクルマでした。

クルマを手に入れることができましたが、まだまだ財政難は続きます。そのため何度もサーキットで練習することは困難です。そこで、途切れていたOBとのパイプをつなげ、支援を募るべく、再び大きく動きます。

「OBとはツテをたどって出会うことができました」と田中君。実はOBも連絡が途絶えたことを心配していました。再び連絡が入った時、OBは復活を心から喜んでくれ、今後の支援を約束してくれたのです。

まずはジムカーナのレースで優勝する

現在レース車両の一番手として活躍することとなったOB寄贈のシビック
今年4月、新しい入部希望者を連れてモーターランド三河で歓迎走行会を開催
昨秋、静岡県 袋井市のエコパスタジアムで行われた練習走行会。レースイベントの経験を積んだスタッフに指導を受けました
とにかく自分たちでクルマをさわり、整備知識を地道に付けていきました​

OBからの支援が決まり、ホンダ シビックが一台寄贈されました。現在、交流の輪はOBだけでなく、ショップや他大学の自動車部など、少しずつ広がりを見せています。

今年は1年生が6名入部し、総勢13名体制に。さらに、ご縁で知り合ったギャラリーのオーナーがスポンサーに付いてくれるなど、部を後押しするいい風が吹いています。

「僕が入部してから2年。ようやく自動車部らしくなった」とやや感慨深げ。「でも、まだスタートラインに立ったばかり」と気は緩めません。「今の僕たちに足りないのは実績です」と馬場君が続けると、「とにかくレースに出て、表彰台…、いや優勝したい」と田中君が吠えました。

昨年出場したレースは1試合。今年も本取材の時点では、全中部学生ジムカーナ選手権大会に出場したのみ。ダートやフィギュアのレースも開催されますが、あえて出場は見送る考えです。

田中君は「やっとレースに出られる状態が整ってきたところで、あれこれ手を出すのはよくない。まずジムカーナに専念して、ドライビングテクニックを向上させ、結果を出すべき」と部の現状とこれからを冷静に分析します。「応援してくださっている皆さんのためにも勝ちたい」。この思いは、今や全部員の思いです。

「今後は今の流れを止めることなく、活動を継続させないと。僕は4年生なので、馬場君をはじめ、後輩にはさらなる飛躍を期待したいです」

新生・静岡大学自動車部の挑戦はまだ始まったばかり。熱さみなぎる部員のまなざしからは、今後、各レースで台風の目となる予感を感じさせます。

関連サイト
【Blog】​静岡大学自動車部
【Twitter】静岡大学自動車部

[ガズー編集部]