【大学自動車部】「スピード」なら負けません! -東北大学編-
全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日ごろの活動風景やご自慢の部員を紹介するこのコーナー。
今回うかがったのは、旧帝大7校が競い合う、2014年度の七大戦を制した東北大学。その速さの秘密に迫ります。
★東北大学学友会自動車部プロフィール
●部員数:男子25名 / 女子0名 ※部員数は2014年10月現在
部員紹介ページ
●部車:スバル・インプレッサ、三菱ミラージュほか
●活動内容:毎週金曜20:00から部室およびガレージにて部会を行い、通常時は月1回ほど、大会前は週に2回ほどサーキットなどで走行練習を実施。旧帝大7校が主催する七大戦と東北学生自動車連盟(東北学自連)によるシリーズ戦に参戦し、ジムカーナ、ダートトライアル、ラリーでの優勝を目指す。希望者はドリフト競技にも参戦する。
●活動実績:2014年度 七大戦 ジムカーナ1位 ラリー1位
2013年度 七大戦 総合3位
「速さ」を競う種目には自信アリ
今回おじゃましたのは宮城県仙台市の東北大学学友会自動車部。北の名門として知られる東北大学は1907年(明治40年)、東京帝国大学と京都帝国大学に続く日本で3番目の帝国大学として創立されました。「研究第一」「門戸開放」というのが建学以来の伝統で、当初から専門学校や高等師範学校の卒業生にも門戸を開き、1913年(大正2 年)には日本の大学として初めて女子学生の入学を許可しました。現在では合計10学部と数多くの大学院、専門職大学院などを設置し、合計1万7852人の学生や院生が、仙台市内のキャンパスで学んでいます(2014年5月1日現在)。
その学友会自動車部は「とにかくスピード競技に強い」というのが伝統。力を入れているのは七大戦(旧帝大7校が共同で開催している大会)と東北学自連主催のシリーズ戦ですが、シリーズ戦ではほぼ常に表彰台を独占。強豪が集まる七大戦でも2014年度はジムカーナとラリーの2種目ともに1位となる完全勝利を果たし、2013年度も総合3位に輝きました。ちなみに2013年もジムカーナは1位だったのですが、ラリーのほうが最下位だったため3位に終わってしまったのこと。なぜ2014年のラリーはワンツーフィニッシュを飾るほど強かったのに、2013年は最下位だったのでしょうか? それは、2014年はSS形式、つまりスペシャルステージを1台ずつタイムアタックし、その積算タイムで勝敗を争う形式だったのに対し、2013年は「いかに正確にチェックポイントを通過するか」を競う計算ラリーだったからだそうです。
「ウチは走るのは得意なのですが、そういった細かい計算が大の苦手なんです……」と苦笑する小林一貴主将(3年)に、東北大学自動車部の“速さの秘密”を聞いてみました。
「いろいろ恵まれている、というのはあるでしょう。OBにはジムカーナやダートラの地区戦を走っている先輩が多く、そういった先輩方から本格的な指導をしばしば頂戴しています。また、比較的近隣にある福島のSSパークサーキットで走り込むことができるというのも、他大学に比べて有利な点ではあるかもしれません」
東北大自動車部は、2014年の七大戦ラリーに「ほぼぶっつけ本番」(小林主将)で臨んだそうですが、それでも勝ってしまうのですから、スピード競技に関する強さは並大抵ではないのかもしれません。
大会での実績を支える選手層の厚さ
才能あふれる東北大自動車部員のなかでも特に速いとされているのが4年生の下河辺友貴さんですが、残念ながら取材日は欠席。ということで、2年生ながら「下河辺の次に速い」といわれている武者祐介さんに話を聞いてみました。
「小さいときからとにかくクルマが好きで、トミカは450台持っていました。しかしあまりに好きすぎて、ずっと手に持っているため握りつぶしてしまったりして、その大半を“廃車”にしてしまうような子供でした(笑)。受験勉強中はホームページで東北大自動車部の諸先輩の名前を完全に覚え、『オレは来年、この人たちと一緒に走っているんだ!』と強くイメージしながら勉強していましたよ(笑)」
そして速さの秘密は“普段の運転”にもあるようです。
「ごく普通の速度で交差点を曲がるときも、常に“本番”を意識して走るんです。具体的には、いかに空走時間を減らすかということですね。アクセルもブレーキも踏んでいないという空走時間を極力ゼロにするにはどうすればいいのか……ということを、交差点をゆ~っくり曲がりながら、いちいち考えて実行しているわけです(笑)」
そのほかにも、武者さんは自宅でも自分がコースを走った際の動画を何度も何度も繰り返し見て、反省と研究を行っているとのこと。やはり速さというのは一朝一夕に生み出されるものではないのですね。
“ダートのスペシャリスト”といわれている市村友哉さん(4年)にも聞いてみました。
「まぁ、センスですよ……というのは冗談ですが、やはり福島のSSパークサーキットや青森のサーキットパーク切谷内で走り込んでいるから、ということに尽きるとは思います。……練習あるのみですね」
自動車部には2年生から入部した市村さんですが、現在ではダートトライアルの地区戦にも参戦するほどハマっています。また、最初は走るのは好きだけど整備は大キライ! というタイプだったそうですが、今では「エンジン降ろしも余裕ですよ」とうそぶくほどのレベルに。
エンジン降ろしといえば、選手だけでなく整備をメインに行っている部員にも話を聞いてみたいところです。市村選手と仲の良い辻 大樹さん(3年)に聞いてみましょう。
「武者がトミカを廃車にしまくった子供なら、僕は家じゅうの家電という家電を分解しまくったタイプ(笑)。昔からランチアのデルタHFインテグラーレに憧れているのですが、あれに乗るなら自分でメンテできなきゃダメだろうなということで、整備を学ぶために自動車部に入りました」
そう語る辻さんのツナギ姿は、たしかに国立大生というよりは自動車整備工場の若手メカニックさんといったところ。「走るほうは全然なんですけどね」と自嘲する辻さんですが、前出の市村さんは「いや、辻は走らせてもかなり速いですよ」と真顔で語ります。東北大自動車部の“層の厚さ”を感じさせるひと言でありました。
強さの秘訣は「全員参加!」 次なる目標は?
以上は各個人の練習量や、言ってみれば才能にもよる話ですが、チームの総合力というのは個の力だけでは向上しないはず。東北大自動車部のチーム全体としての底上げは、どのようになされたのでしょうか。そのあたりを再び小林主将に聞いてみましょう。
「わたしが心がけたのは、とにかく全員に“参加”させるということでしょうか。ウチの部は伝統的に自由すぎるといいますか、『やる気のあるやつだけが勝手にやればいい』的なムードがなきにしもあらずだったのです。そのせいか幽霊部員みたいな人もいました。でも、それは決して良いことではないと思ったため、すべての部員に、雑務でもなんでもいいからとにかく“参加”することをうながしました。その結果、部全体に活気のようなものが生まれ、そしてそれがしっかりとリザルトにも反映された。……それはもう本当にうれしいことですね。『やったぜ!』といいますか。自動車部に限った話ではないかもしれませんが、チームスポーツに打ち込むというのは、ただ単に競技をするだけではなく、そういった部分での喜びや成長も伴う行為です。ですから、興味がある人はぜひ飛び込んでみてほしいといいますか、『一緒にやろうぜ!』って言いたいですね」
確かにそのとおりかもしれません。……ところで、先ほどからずっと気になっていたことを指摘してもいいでしょうか?
「なんでしょう?」(一同)
皆さんの様子を拝見していると本当に明るく楽しげで、過剰な上下関係もなさそうで、みんなでバカ話とかしながら大いに盛り上がっているのは大変ステキなのですが……。
「何か問題でも?(一同)」
……あまりにもノリが男子校っぽくありませんか?そんな質問に、
「自動車部なんてどこもこんなもんでしょ?」(一同)
いや、他の大学は女子部員さんも結構いて、なんとなく共学っぽい感じでやっていますよ。
「エーーーーッ! そ、そうなんですか!?」(一同)
口々に「知らなかった」「聞いてないよ」「……だまされた」とつぶやき、なんだか騒然とする部内。言わないほうが良かったですかね?
「いや、教えていただいてありがとうございます! ……これまでもやってはいたつもりなのですが……、来年4月はもっと本気出して女子部員を勧誘します!」(前出・武者さん)
ということで東北大志望の女性の皆さん、または在学中の女子学生の皆さん。もしもクルマに少しでも興味があるならば、明るく楽しい、そして速くて強いナイスガイが集まるここ東北大学自動車部を、あなたの力でぜひとも“共学”に変化させていただけたら幸いです!
(文=谷津正行/写真=荒川正幸)
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