【大学自動車部】自由な雰囲気で充実したカーライフ -長岡技術科学大学-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は、長岡技術科学大学自動車部を訪問。

長岡技術科学大学自動車部プロフィール

部員数
25名 ※部員数は2016年8月現在
部員紹介ページ

活動内容
毎週金曜日にガレージでミーティングを行い、部員全員で活動報告や予定の確認などコミュニケーションを取っている。ガレージは部員であれば基本的にいつでも利用可能で、各自の個人車を整備するなどしている。

活動実績
27年 第54回関東甲信越学生自動車競技会 総合優勝

2台持ちが今のトレンド!? 

今回取材に伺った長岡技術科学大学は、新潟県長岡市に本拠を構える国立大学です。実践的な技術の開発を主眼とすべく、大学院での教育研究に重点を置くという特色を持っています。

長岡といえば国内有数の豪雪地帯であるわけですが、自動車部はどのような活動を行っているのでしょうか?主将の早川さんにお話を伺ってみました。 「毎週金曜日には全員集まってのミーティングを行っていますが、基本的には部員それぞれが自由に活動しています。いつ部室に来ても良いですし、決まった時間は特にありません。以前は野沢のダートラ場で練習会に部車で参加したりしていたのですが、部車はナンバーが無いので移動の為にはトラックを借りなければならず、免許を持っている人もいないので今では個人車での走行が中心となっています。」

主将の早川さん(写真左)。2016年8月16日(火)に行われたTOYOTA GAZOO Racing ラリーチャレンジに出場するなど、モータースポーツに意欲的に取り組んでいる

確かに、部室周辺の駐車スペースには自動車部員のクルマが沢山置いてあります。
しかしながら車種も改造手法もこれまで取材してきた大学自動車部とあまり変わらない印象が・・・。もしや、雪が多く降る期間はクルマに乗らないとか?

「それが、最近は冬用のアシとして軽自動車を買うのが流行っているんです。やっぱり自動車は必需品で、生活には欠かせません。もちろん除雪は行き届いてはいるんですが、どうしても不便な場面も多いです。そのため、先輩から譲ってもらったり、仲良くさせてもらっている近隣の業者さんから安く売ってもらったりして、1シーズンだけのアシとして使う場合が多いですね。でも乗っているうちに愛着が湧いて、結果的に2台持ちになっちゃう部員が結構います。」

ガレージの中には車両2台分の作業スペースを持っている。タイヤチェンジャーやエンジンクレーンなど大型の工具類も揃っており、一通りの車両整備を行うことができる

クルマを2台持ちとは羨ましい限りですが、話を聞くと車体の値段はヒトケタ万円がほとんど。駐車場を安く借りられるという事もあり、自分で整備して車検を通して、と出来る自動車部員であれば無理なく維持できる様です。

「皆、工学専攻の人間ですから基本的に機械いじりが好きなんですよ。入部間もない頃は躊躇するんですが、整備する先輩の姿を見ているとどんどんやってみたくなりますね。先輩から整備を教えてもらえますし、基本的に自分のクルマは自分で面倒見れるようになります。タイヤ交換がやっとだった部員も、いつの間にかアライメントを取るなど大抵の事が出来る様になっちゃいます。」

駐車場には、どこの自動車部でも良く見られるスポーツタイプのクルマが多くみられるが、その中に生活の足としての軽自動車も混在している

さて、自動車部と言えば整備はもちろんですが、ドライビングのウデを磨く事も醍醐味の一つです。
長岡技術科学大学自動車部の皆さんは、運転技術上達のためにジムカーナ競技を中心に取り組んでいるそうです。

先日開催された関東甲信越学生自動車連盟のジムカーナ大会では、長岡技術科学大学自動車部が主催を務めた

ジムカーナはパイロンを設置する事でコースを作成するため、クラッシュのリスクが少ない入門向けのモータースポーツです。
ジムカーナが盛んな理由として、練習場所がたくさんある事も大きな要因のようです。ご存知の通り新潟県にはスキー場が数多く存在していますが、なんと夏場は駐車場を練習場として借りる事が出来るのだとか。

そんな彼らですが、早川さん曰く、
「活動に対する制約が少なく自由な分、まとまりがないという言い方も出来るかもしれないです・・・。」
と、自由の代償と言うべきでしょうか。主将としての苦労も覗かせていました。
全国の自動車部のなかには部車での競技出場を中心とする団体も多く存在しますが、それとは活動内容が大きく異なる長岡技術科学大学自動車部。その特色についてもう少し掘り下げてみたいと思います。

少し特殊な?大学の仕組み

実は長岡技術科学大学は、高等専門学校からの編入が全学生の7割から8割ほどを占めているそうです。高専生は中学卒業から5年間で卒業する事となり、そこから大学に入ると3年生への編入となります。長岡技術科学大学は4年制大学である事に変わりはないのですが、学生の大半を占める高専卒の編入生達は2年間しか大学に居られない事になります。

ガレージの周辺は場所に余裕があり、整備スペースに困るという事はなさそうだ。いつでも自分のクルマを整備できるというのは大きな強みと言える

これは、実践的な技術の開発を主眼とすべく、大学院での教育研究に重点を置くという大学の方針によるものと言えるのかも知れません。そのため修士課程に進学してさらに2年間、大学に籍を置く人がほとんどなのだとか。
先ほどお話を伺った早川さんも高専からの編入生の修士1年目で、つまり自動車部は3年目という事になります。

かつてダートの練習車として使用されていた部車たち。現在では走行する機会がなかなか見いだせないのだとか

話が少々ややこしくなってしまいましたが、自動車部について言うと、時間を比較的取りやすいのは入部してから2年目までで、人によってはそのまま卒業してしまう場合もあります。しかし修士課程に進む人が大半なので自動車部に4年目まで在籍は出来る訳ですが、修士となると研究が忙しく、そこまで活動に関われなくなってしまうようです。

つまり、他の4年制大学に属する自動車部と比較すると活動できる時間が限られていると言えます。また、学年によって忙しい時期がまちまちなので、全員の足並みが揃いづらいという一面もあります。
自由度が高い部活動の体制は、こうした事情によるものだそうです。

多くの人に支えられる部活動

しかしながら、全く連帯が無い部活という訳では決してありません。主将の早川さんが中心となって部員に声を掛けて、今年は軽自動車のみで争われる耐久レースに参戦しています。
そのためにスバル・ヴィヴィオを購入したところ、半ば部車の様な扱いとなっているそうです。

軽耐久用のスバル・ヴィヴィオ。下級生が個人車を買う前に競技走行に触れたり整備したりする入門車という側面を持つ

入部間もない下級生は、個人車でいきなりサーキット走行をするのは敷居が高いと感じる人が多いのだとか。やはりクルマが生活に欠かせないという事もあり、もし壊してしまった場合は日常に影響が出てしまうので慎重になる様です。
ヴィヴィオの導入で耐久レースへの参戦が可能となったことはもちろん、下級生が気軽に自動車部の活動に参加するきっかけとなっているのだそうです。

長岡技術科学大学自動車部にとって、彼らを支えてくれる周囲の大人たちの存在も大きい様です。
部室周辺の中古車販売店や解体屋さんなど、先輩たちから部ぐるみで長い付き合いをさせてもらっているところが多くあります。長岡技術科学大学の自動車部員と言うと優しくしてくれて、初めてお店に行っても「また来たのか!」と温かく迎えてもらえるそうです。
そうした関係性から、業者さんが代車として使っていたクルマを安く譲って頂くなどと、活動をサポートして頂く機会も多いのだとか。

また、長岡技術科学大学自動車部OBで大学に技術職員としてお勤めの高田さんも忘れてはならない存在です。学生に近い立場で副顧問として大学との折衝をしてくれているそうなのですが、OBという事もあって部活を良く理解してくれて動いてくれるので、部員たちはとても感謝しています。
また、高田さんは冒頭の集合写真中央のWRCカラーが施された三菱・ランサーエボリューションVのオーナーでもあります。大学の職員としてだけではなくクルマ好きの良き先輩として、部員から「高田先生」と呼ばれて親しまれています。

ガレージ前で談笑する高田さん(写真左)と主将の早川さん(写真右)

工学系の大学という事もあって、卒業生の就職先は自動車関連が多いと聞きます。
大人たちが温かく見守る中、自動車部で正しく育ったクルマ好き達。これからも、日本の自動車業界を支える人材を輩出し続けてくれる事でしょう。

[ガズー編集部]