【大学自動車部】伝統の七大戦で3連覇を目指す-東京大学-

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は東京大学を訪問。

東京大学運動会自動車部プロフィール

部員数
28名(大学院生含む)※部員数は2017年1月現在。「運動会」は他大学の体育会に相当する名称です
部員紹介ページ

部車
三菱・ミラージュ

活動内容
国立大学7校で争われる「全国七大学総合体育大会」(七大戦)の他、学生自動車連盟が主催する大会にも出場しています。活動日は水曜日のミーティングと土曜日の全体整備の週2回。駒場キャンパス内のガレージで活動を行っています。

活動実績
第55回 全国七大学総合体育大会 優勝
平成28年度 全関東学生ダートトライアル選手権大会 優勝(男子団体)

ご存じ日本を代表する国立大学の雄、東京大学。東大と言えば赤門や安田講堂がある本郷キャンパス(文京区)が有名ですが、渋谷からほど近い目黒区内にも校舎(駒場キャンパス)があります。都心にありながら緑豊かな落ち着いた構内はまさに“学び舎”という雰囲気。自動車部のガレージは駒場キャンパスの一角にあります。

自動車部のガレージ(右)と広々とした駐車スペース。3年生以上は本郷と駒場を行き来しながら部活動に参加しています

水曜日の夜にミーティング、土曜日に全体整備を行う

取材に応対していただいたのは自動車部主将の梅川真仁さん(2年生)。さっそく自動車部の活動内容について伺ってみました。

「全国の国立大学7校が集まって競う“七大戦”や、全日本学生連盟(関東支部)が主催するダートトライアルに参加しています。競技以外の活動としてはJMRC神奈川ダートトライアルシリーズの主催も行っています」と梅川さん。

主将の梅川さん(2年生)。つながりが弱いOBとの関係強化を図りつつ、全体練習の機会を増やしていきたいとのこと

活動日は週2回。水曜日19時からのミーティングと土曜日10時から行われる全体整備が基本で、全体整備では部車と個人車の整備を行っています。取材日はちょうど土曜日で、全体整備の様子を見ることができましたが、クルマ好き同士の楽しげな雰囲気の中にも部活ならではの緊張感が感じられ、団結力の高い部という印象を受けました。

円陣を組んで作業の内容や進捗を確認。自由な雰囲気が特徴の東大自動車部ですが、この時ばかりは真剣

国立大学7校で争う7大戦で2連覇中

東大自動車部が最も力を入れる1年に1度のビッグイベントが七大戦です。七大戦は旧帝国大学7校(北から順に北海道大学、東北大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学)が合同で開催している体育大会の愛称で、毎年9月10日頃に行われます。自動車部以外の運動部も参加する大規模な大会(大学のホームページにも掲載されています)で、種目ごとに競技を行い、大学ごとの総合ポイントで順位を競います。

主管する大学は毎年持ち回りになっており、昨年行われた第55回大会は東大の主管。本庄サーキットでジムカーナ、丸和オートランドでダートトライアルを行い、東大がどちらもトップをとり見事優勝。第54回大会に続く2連覇を達成しました。

七大戦(ジムカーナ)の集合写真。他大の自動車部と比べて部員が多いのでにぎやかです
こちらはジムカーナの様子。ホンダ・インテグラタイプRも部員の間で人気の車種です
七大戦(ダートトライアル)の様子。バラエティ豊かな個人車が参加します(写真は三菱・ランサーエボリューションⅤ)

「自動車部の活動で一番大きな大会として捉えているのが七大戦です。今年は速い4年生が卒業するので戦力が落ちてしまいますが、それを克服し3連覇を狙います」と梅川さん。

ちなみに、七大戦はレギュレーションによりナンバー付き車両で争われますが、自動車部にはナンバー付きの部車がないため、個人車で参加しています。そのため、モータースポーツの世界で実績のある車種に乗っている部員が多いのも東大自動車部の特徴です。

競技の世界で実績のある個人車がズラリ。同じ車種に乗っている部員も多く、部品を融通し合っています。FF車は維持費の安さと速さで人気

ダートトライアル用の部車で学連の大会にも参加

学生自動車連盟(学連)が主催する大会にも参加しています。昨年は全関東のダートラとジムカーナに出場し、ダートラで優勝しました(団体)。今年はダートラに絞り、全日本と全関東に出場する予定。部車はダートラ用に仕立てた三菱・ミラージュです。

全関(ダートトライアル)の様子。白い部車は三菱・ミラージュです

「学連の大会は結果というよりも腕を上げるために参加しています。ダートラに絞ったのは、資金的な理由で何台も部車を製作することができないからです。ダートラ用の個人車を持っている人はいないので、練習は部車で行っています」と梅川さん。

実は東大自動車部が学連に加盟したのは最近だそうで、逆に言えばそれだけ七大戦のウェイトが高いということ。限られた部費をやりくりしながら学連の大会でレベルアップを図り、七大戦制覇という旧帝国大学ならではの目標に向かっているのです。

現在準備中のダート用の部車(ミラージュ)。この日は大会を見据えてミッション交換を行っていました。時にエンジンを載せ替えることもあるそう

SNSを効果的に用いて部員増加中

冒頭でもご紹介しましたが、東大自動車部の部員数は28名。これは他の自動車部と比べて多い方です。部員の確保はどの自動車部にとっても重要な課題ですが、一体どのように部員を集めているのでしょうか?

「たまたまもあると思うのですが、ツイッターで自動車部についての情報を公開し始めたのが大きいと思います。みんなで共通のアカウントを使っていて、全員で更新しています。新歓期に自動車部があることを知ってもらうだけでも、入部する確率が高まりますから」と梅川さん。そのかいあって現在1年生は部内最多の9名(2年生も9人)。部員の中には他の部から移ってくる人もいるそうです。

とはいえ、3月末に新入生が入学手続きのために駒場キャンパスにやってくるタイミングと、教室で行うサークルオリエンテーションは重要な勧誘の場。自動車部ではプロモーションビデオを製作しパソコンで上映。告知に努めています。

新歓ドライブの様子。リラックスした雰囲気が写真からも感じられます

ダートのホープ!?  インプレッサオーナーの部員を直撃

部員たちの個人車の中でひと際目を引くのがスバル・インプレッサ。なぜ目を引くかというと、運転席側のボディがボコボコ(失礼!)で、いかにも走り込んでいるような雰囲気を醸し出しているから。このクルマのオーナーは2年生の相川穣さん。さっそくお話を伺ってみました。

「4WDのダート走行に醍醐味を感じ、個人でダートラに出ています。街中で見るとぼろぼろのクルマですが、土の上を走っているところを見てほしいですね」と相川さん。

フェンダーからドアにかけての凹みがただ者ではない雰囲気を醸し出す相川さんのインプレッサ

自動車部がダートラに力を入れているのは先述の通りで、相川さんも全日本と全関東ダートラへの意欲を口にしますが、実は大きな問題が。それは今まで相川さんが4WDしか乗ったことがなく、FFのダートは未経験ということです。

「ダートを走り始めたのも4WDなので、(部車であるFFの)ミラージュのダートはわからないのです。これから練習していくしかないですね」と相川さんは続ける。

相川さんはすでにラリーデビューも果たしており、今後もダート走行のテクニック向上に取り組んでいきます。駆動方式の違いを克服し、選手としてミラージュのステアリングを握ることができるか注目です。

相川さんの七大戦(ダートトライアル)での走り。ラリーのイメージが強いインプレッサだけにダートが似合います。

東大のイメージから、特別なことをやっている自動車部という先入観がありましたが、実際は他の自動車部と同じく、好結果を残すための地道な活動を日々やっているだけ。良い意味で大きな違いはありませんでした。七大戦でのご活躍を期待しています!

 

(フリーライター:ゴリ奥野)

[ガズー編集部]