【大学自動車部】学連総合杯2連覇を狙う学生王者–中央大学–

全国の大学や専門学校などの自動車部におじゃまして、日頃の活動風景や自慢の部員をレポート。今回は中央大学を訪問。

中央大学自動車部プロフィール

部員数
14名(1年生4人、2年生4人、3年生6人)
※部員数は2017年1月現在
部員紹介ページ

部車
ホンダ・シビックタイプR(4台)他

活動内容
活動日は火、水、土の週3日で、火曜日と水曜日が18時30分から21時まで。土曜日が9時から15時までとなっています。また、大学の休み期間中は、不定期で土、日の練習も行っています。活動の場は多摩キャンパス内(東京都八王子市)にある自動車部のガレージ。

活動実績
平成28年度 全日本学生自動車連盟(全日本)年間総合杯 優勝
平成28年度 全日本学生自動車連盟関東支部(全関東)年間総合杯 優勝


中央大学自動車部は昨年の全日本学生自動車連盟年間総合杯を獲得した強豪校。総合杯といえば、学連3競技(フィギュア、ジムカーナ、ダートトライアル)の順位を得点化し、その合計点で1位に輝いたいわば大学自動車部のチャンピオン。しかも全日本と全関東、両方の総合杯を獲得しているので、その強さは圧倒的です。好結果を生み出す中大自動車部の秘密とは? それを探るべくガレージがある多摩キャンパスに向かいました。

ガレージの全景。手前にも駐車スペースがあり、たくさんの台数を整備することが可能です

活動日は週3回。強豪校とは思えない自由な雰囲気ですが……

多摩キャンパスは豊かな自然が残る東京都八王子市内の丘陵地帯にあります。敷地内に入り、向かったのはサークル別棟1。この中の一画に自動車部のガレージがあります。応対していただいたのは主将の後藤さん(3年生)と副主将の北村さん(3年生)。まずは活動日について伺いました。

「活動日は火、水、土の週3回。時間は18時半から21時30分までで、土曜日だけは日中の9時から15時となっています。部車の整備が主ですが、土日はフィギュアの練習を行うこともあります」と後藤さん。

奥が主将の後藤さん、手前が副主将の北村さん。後藤さんは入学以前からクルマに興味があったわけではなく、新歓期にキャンパスに展示してあった自動車部のクルマに惹かれて入部したという経歴の持ち主

4年生をのぞく部員数は14人で、文系の割合が高い。一般的に自動車部には理系の学生が多いので、意外な気もしましたが、多摩キャンパスは文系の学生が通うキャンパスなので地理的な要因もあるようです。

取材当日は大学の休み期間中でしたが、10人以上が部活に参加。何人かに分かれて部車の整備を行っていました。整備の様子を見た第一印象としては非常に自由な雰囲気。ガレージ内に設置されたスピーカーからは軽快なBGMが流れ、強豪校にありがちなピリピリムードは感じられませんでした。しかし、取材が進むにつれ、それはあくまで表層的なことだと気づきました。中大自動車部にはある大きな特徴があるのです。

整備風景。一般的な自動車部と同じに見えますが……

部則3原則に基づくメリハリをつけた活動

「作業終了まであと〇分です!」

ガレージの中から部員の大きな声が聞こえます。これは作業終了時刻(この日は15時)までの残り時間を伝えるもので、全員がその声に反応しながら慌ただしく体を動かしています。また、ガレージに4年生や他の来訪者が来た際は「〇〇先輩がいらっしゃいました!」と瞬時に大きな声で報告しています。

驚いたのは作業終了後のミーティング。全員が集合して作業の進捗状況を確認するのですが、各々が真剣な表情で発言しています。先ほどまでの自由な雰囲気は皆無。まさに体育会系の部活という雰囲気なのです。

ミーティングは上級生も下級生も関係なく意見を出し合う意思疎通の場。問題を改善し、団結力を高めるために必要なプロセスです

「『規律厳守』『時間厳守』『動作機敏』という部則3原則を定め、厳しくやっています。まずは礼儀やマナーですが、これに関してはできて当たり前と考えています」と北村さん。

ちなみにミーティングが終わると先ほどまでの和気あいあいとした雰囲気に戻り、それ以降の時間は自分の好きなように過ごすことができます。だらだらと作業を続けるのではなくオンとオフの切り替えが重要というのが自動車部の考え方。普段から時間を意識した活動を心がけています。

「部則三原則」はガレージ内の壁にかけられています

ズバリ、強さの秘密は?

中大自動車部の今年の目標は全日本と全関東の2連覇。これまで総合杯を2年連続で獲得したことはなく、史上初の連続Vを目指します。自動車部の強さの秘密は何か? ズバリ聞いてみました。

「チーム力だと思います。大会で好成績を残すためには選手の運転技術だけではなく、整備をする人や手続きをする人たちの力も必要なので、全員で団結することが重要です。よく個人戦がどうという話を聞きますが、個人戦も団体戦のひとつとしてとらえています」(後藤さんと北村さん)

全関東(ジムカーナ)の様子。中大自動車部はジムカーナを得意としており、たくさんの優勝経験があります
全関東(ダートトライアル)の様子。ダート用の部車は黒のホンダ・シビックタイプR

また、快進撃を支えているのがOBたち。現役時代に勝った人やチャンピオンになった人がコーチになることで、さらに強くなっていく。強豪校ならではの好循環が生まれているのです。

「OBの方が与えてくれたヒントに対して、自分たちで考えて動く。そんな自動車部の姿勢も強みだと思います」と北村さん。

総合杯と直接の関係はありませんが、学連(関東支部)が主催する関東学生対抗軽自動車6時間耐久レースにも参加

好成績を支える強力な部車、ホンダ・シビックタイプR

ガレージ内には4台の部車がありましたが、すべてホンダ・シビック。しかも、近づいてよく見ると、どれもタイプRであることに気づきました。そう、中大自動車部のジムカーナやダートトライアルの試合車はすべて、ホンダ・シビックタイプRで統一されているのです。

「白のシビックがジムカーナ用、黒のシビックがダートトライアル用です。スペアパーツがあるので新しく買うならシビックとなりますね」(後藤さんと北村さん)。

手前がジムカーナ用の本番車で、奥が女子用(兼男子練習車)。本番車のみ1.9リッターエンジンを搭載しています。さらに奥に見えるのはダート用。またこの他にもシビックの部車を保有しています

ホンダ・シビックタイプRはさまざまなモータースポーツフィールドで活躍している1.6リッターのハイパフォーマンスモデルで、自動車部の競技にうってつけ。しかも、ジムカーナ用の試合車はホンダ・インテグラタイプRのB18C(1.8リッター)を搭載し、さらに1.9リッターへ排気量アップしています。2連覇を狙う“勝負車”としてのポテンシャルは十分です。

部員の中にはホンダ・シビックやインテグラを個人車として所有し、クルマの仕様を試合車に近づけて腕を磨いている人もいます。選考会で選手に選出され、大会に出場するには普段からシビックの乗り方を研究するのが近道ということでしょう。

駐車場で整備を受ける個人車。ホンダ車が多いですが、他メーカーのクルマの姿もちらほら

大学も自動車部の活動をバックアップ

ガレージの恵まれた施設も中大自動車部の特徴。クルマを上げ下げできるリフトやタイヤの組み換えができるタイヤチェンジャー、下まわりの作業に便利な地下室もあります。さらに驚いたのはマイクロバスや積載車までそろっていること。他大学の自動車部が見たらうらやむほどです。

タイヤチェンジャーでタイヤの組み換え中。自動車部ではなかなか見かけることのない設備です
合宿では部員を乗せるマイクロバスや部車を積む積載車が活躍

「大学からも支援をいただいているので大体のことができます。フィギュアの練習時に、キャンパス内の駐車場を借りることもあります」(後藤さんと北村さん)

女子部員が必ず各学年に1名はいるのも特徴。とはいえ、新歓期の部員勧誘にはいつも苦労しているそう

中大自動車部の素顔はいかがでしたか? 一見すると大学生らしいノリのよい部のように感じられましたが、その正体はチーム力を高めて好成績を狙う、ストイックな運動部そのものでした。今シーズンは3月の全関東(フィギュア)から。2連覇を目指す、熱く、長い戦いが始まります!

(フリーライター:ゴリ奥野)

[ガズー編集部]

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