大阪オートメッセに出展した近畿大学自動車部は、今風で大学日本一を目指す

大学の“自動車部”にどのようなイメージをお持ちだろうか。自動車は免許を取得すれば誰でも運転できるため、大学自動車部の活動を想像できない人が多いのでは? 実際、大学自動車部は部員の確保が難しいのが悩みだそうだが、近畿大学自動車部は、ここ数年で部員数を15人から40人まで増やし、大阪オートメッセにまで出展してみせた。彼らの秘策を教えていただいたのでご紹介しよう。

GAZOOでは、2014年から2017年にかけて、全国の63校もの大学自動車部を取材させていただき、2014年7月には近畿大学自動車部も取材していた。当時の部員数は男性11人。全日本学生ジムカーナ選手権大会の日本一を目指し、シビックEG6で日々の練習に取り組んでいた。そんな彼らの部室の壁には、先輩が成し遂げた栄光、2009年・2010年に近大自動車部が学生日本一に輝いた時の新聞が貼られていたのが印象的だった。

多くの大学自動車部に共通する課題は「予算不足」。予算が豊富にあれば、クルマ、パーツ、ツール、作業着など、新しいものを買えるし、活動の幅も広がることで、部員数も増えやすい。一方、大学側から言わせれば、メジャーな部活動でもなく、部員数が少ない部に予算を沢山充てることは到底できない。

その結果、自動車部は少額予算前提の活動となる。車はOBから譲ってもらい、筋トレやメカニック力を磨くことが活動主体、お金の許す範囲でドラテクを磨くため練習しに行く。青春そのもの、昭和世代の私は好きなのだが、令和の大学生には理解してもらえないかもしれない。

近畿大学自動車部「KINDAI BIG BLUE RACING」の主将・木暮陵弥さんにお話を聞いた。木暮さんが入部時の部員数は15人。他の大学と同様に部員数が少なく、部活動にも支障をきたす状態だったそうだ。

彼が主将になって取り込んだことは、「部員数を増やし、全日本学生ジムカーナ選手権大会の日本一を目指す」こと。部員数を増やすために監督と相談し、もっと楽しい活動にする、と決めた。

具体的には、①個々がドラテク、メカニックなどの技術向上を目指して活動するのでなく、部員全体の総合力向上を目指して活動すること。②ドライビング、メカニック、運搬、写真など、各個人が好きなことの高みを目指すということ。1年生だけでなく、途中入部でもウェルカムだそうだ。その結果、部員数は40人(内、女性部員4人)にまで増加。自動車部としては(多分)日本一の部員数になるまで成長した。

そんな近畿大学自動車部の大阪オートメッセでの出展ブースは、車一台分の最低コマ数の大きさ。近畿大学の広告塔ではないようだ。しかし、出展されているクルマには違和感がある。いわゆる、年代物の気合の入ったクルマを学生の手でジムカーナ仕様にフルチューンした車ではなく、最新のGR86。しかもショップのデモカーみたいにかっこいい。そこまで飛躍できるのか?

このGR86は、部員数が増えたこともあって、大学と交渉し、学校の予算で購入できたそうだ。そして、貼られている数多くの協賛企業のステッカー。これは全て1社ずつ訪問し、丁寧に関係を築きあげてきた結果だ。パーツも協賛企業より提供してもらったり、チューニングの難しい部分については、協賛企業にお願いしたりと、“今風”の経営をしている。もちろん、できることは自分達で作業することが前提、とのこと。

GR86を部車に迎えることができたため、それまで利用していたシビックは女性専用の部車として、シートレールなどのカスタマイズを実施。女性部員も活躍しやすい下地が整ってきている。いま、日本の大学自動車部の中で、近畿大学自動車のポジションは中堅ぐらい。昨年の最終戦は、ミッションがブローして結果を残すことができなかったそう。そして今年のGR86はまだ熟成していないが、これから沢山走りこんで、総力で最高のセッティングを見つけていくことだろう。

人とのつながりを大事にして、体制を充実させてきた近畿大学自動車部。大阪オートメッセも、自ら出展しよう、と思ったのではなく、協賛企業から「日産京都自動車大学校さんも出展しているし、近大自動車部も出展しましょう」とお声掛けいただいたことがきっかけだったそうだ。
総力戦だからこそ、関東強豪校のライバル、そして日本一になれる日は近いのかもしれない。

(GAZOO編集部 岡本)