何がどう変わった? フルモデルチェンジしたクラウンを新旧比較してみた

クラウンといえば、67年にもわたる長い歴史を持つトヨタを代表するセダンです。そんなクラウンがフルモデルチェンジをして16代目となりました。

「これからのクラウンをゼロから考えて作り上げた」という新型は、クラウンの歴史を大きく変えることになるであろういくつもの変化が起きました。先代モデルからどう変わったのか、わかりやすく比べていきましょう。

1.新型クラウンはクロスオーバー、セダン、スポーツSUV、SUVの4つのボディタイプ

先代クラウンのボディタイプはセダンのみでした。しかし新型クラウンのグレードは
「クロスオーバー」
「スポーツ」
「セダン」
「エステート」
と4つのバリエーションで展開。
多様化の時代にあわせ、これまでの概念にとらわれずお客様の多様な価値観やライフスタイルに寄り添うシリーズとして生まれ変わったのです。

上の写真のもっとも手前が、新型クラウンの第一弾として発売される「クロスオーバー」。奥の3台は手前側から「スポーツ」「セダン」そして「エステート」。それら3モデルは今後1年半の期間で順次発売されていく予定です。

ここからは、まず発売されるクラウン(クロスオーバー)と先代15代目クラウンを比べてみましょう。

2.新型クラウンのスタイリングは大胆で時代を先取り!

新型クラウン(クロスオーバー)は、先代と全く異なるデザインです。「クロスオーバー」とは何かと何かを掛け合わせたクルマに使われる言葉ですが、新型クラウン(クロスオーバー)はセダンとSUVを融合した新しいスタイルを提案。

スタイリッシュなクーペライクシルエットにリフトアップ(=車体を高くした)プロポーションとし、従来のセダンの常識を打ち破る大径タイヤを採用したダイナミックな佇まいを実現しています。

いずれも左側が新型クラウン(クロスオーバー)で右が従来モデル(旧型)

先代の低重心でワイドさを強調していたスタイルやロングノーズのFRらしいプロポーションに比べて、左右に一直線でつながるヘッドランプやテールランプ、そしてキャラクターラインに頼らず面の抑揚で質感を表現したサイドビューなど、先進的な雰囲気とクルマ全体で躍動感が感じられるスタイルとなっています。

新旧クラウンでボディサイズを比較してみると

●新旧クラウンの諸元を比較

(単位:mm) 新型クラウンクロスオーバーRS 旧型クラウンRS
全長 4930 4910
全幅 1840 1800
全高 1540 1455
ホイールベース 2850 2920
フロントトレッド 1605 1560
リヤトレッド 1615 1560
最低地上高 145 135
室内長 1980 1955
室内幅 1540 1500
室内高 1170 1185
最小回転半径 5.4 5.5

新型クラウン(クロスオーバー)は先代に比べ、全長が20mm、全幅は40mm拡大されています。ひとまわり車体サイズが大きくなっていると考えていいでしょう。
全高が85mm高くなっているのは、車体をリフトアップしたクロスオーバースタイルとしているからですが、1540mmという高さは一般的な機械式立体駐車場に入庫できる高さとしています。

3.新旧クラウンは駆動レイアウトが異なる!

先代クラウンの駆動レイアウトは、エンジンを縦置きに搭載し後輪駆動と4WDが用意されていました。いっぽうで新型クラウン(クロスオーバー)はエンジンを横置きに搭載。駆動方式は全モデルとも4WDとしています。

かつては高級セダンといえば「エンジン縦置きの後輪駆動」という不文律があり、クラウンも先代まではそれを忠実に守ってきました。しかし新型では、過去に縛られることなく、今後の新しい高級車の形を見据えてハイブリッドの電気式4WDへと舵を切ったのです。

その変更が走りに与える影響を考えると、前輪で舵を切ってバランスを取りながら後輪で地面を蹴って曲がる後輪駆動車ならではの感覚、さらにアクセルワークでクルマを曲げていくようなこれまでの感覚を新型で味わうのは難しいでしょう。

いっぽうで新型は、4つのタイヤで地面を捉える安定感、そして前後の駆動力配分をクルマが自ら最適に制御してリズミカルに曲がっていく感覚を楽しむことができそうです。

4WDシステムは、先代がシャフトで駆動力を前輪へ伝えるメカ式だったのに対し、新型は前輪にエンジンとモーターの力を伝えつつ後輪はモーター駆動の電気式としています。

リヤモーターの出力は2.5Lモデルで40kW(54.4ps)、2.4Lターボ車では59kW(80.2ps)と力強く、特に後者は走行状態にあわせて積極的に後輪に多くの力を伝えて操縦性を高める仕掛けを採用しているのが特徴です。

また、トランスミッションは、先代が

  • [2.0Lターボ] 8 Super ECT(スーパーインテリジェント8速オートマチック)
  • [3.5L V型6気筒] マルチステージハイブリッドトランスミッション
  • [2.5Lダイナミックフォースエンジン]リダクション機構付のTHSⅡ

の3種類を用意していたのに対し、新型は、

  • [2.4Lターボハイブリッド] Direct-Shift-6AT
  • [2.5Lハイブリッド] 電気式無段変速機

というラインナップとなっています。

4.新旧クラウンはパワーユニットも違う!

●新旧クラウンのパワーユニットを比較

新型クラウン
クロスオーバー
RS
新型クラウン
クロスオーバー
G
旧型クラウン
ハイブリッド
3.5 RS Advance
旧型クラウン
ハイブリッド
2.5 G
旧型クラウン
RS
排気量(cc) 2393 2487 3456 2487 1998
エンジン種類 直列4気筒ターボ 直列4気筒 V型6気筒 直列4気筒 直列4気筒ターボ
エンジン最高出力(ps) 272 186 299 184 245
エンジン最大トルク(Nm) 460 221 356 221 350
モーター最高出力(ps) フロント82.9
リヤ80.2
フロント119.6
リヤ54.4
180 143
モーター最大トルク(ps) フロント292
リヤ169
フロント202
リヤ121
300 300
使用燃料 無鉛プレミアム
ガソリン
無鉛レギュラー
ガソリン
無鉛プレミアム
ガソリン
無鉛レギュラー
ガソリン
無鉛プレミアム
ガソリン
燃費(WLTCモード・km/L) 15.7 22.4 16 20 12.4
動力用主電池 ニッケル水素電池 ニッケル水素電池 リチウムイオン電池 ニッケル水素電池

先代クラウンは、

  • 排気量2.0Lとした4気筒ターボのガソリン車
  • 2.5L自然吸気4気筒エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド
  • 3.5L自然吸気6気筒エンジンにモーターを組み合わせた高出力型のハイブリッド

と合計3タイプのパワーユニットを搭載していました。

対して新型クラウン(クロスオーバー)はエンジンのみとした仕様を設けず、全車ともモーターを組み合わせたハイブリッドとしています。

ハイブリッドは2.5L自然吸気4気筒エンジンにモーターを組み合わせたタイプに加え、2.4Lターボの4気筒エンジンにモーターを組み合わせた「デュアルブーストハイブリッドシステム」と呼ぶトヨタ初採用の新しい機構のハイブリッドも用意。

デュアルブーストハイブリッドの特徴は、ターボエンジンの加速感を活かしながら、Direct-Shift-6ATの変速の継ぎ目やターボラグによる加速の遅れなどをモーターが補ってくれます。
そのおかげで、パワフルなのに加えアクセル操作に対する応答性が増し、ドライバーが加速してほしいとアクセルを踏んだ瞬間に反応遅れなくリニアに加速していき、ドライバビリティが大幅に改善されています。

そして、前後のトルク配分の積極的なコントロールや、小型で高い動力性能を持つ最新の電動パワートレーンユニット「eAxle」、後輪操舵システム「DRS(ダイナミックリアステアリング)」などの採用で、安定して曲がる感覚も強まっています。

また新型クラウンの駆動用バッテリーはニッケル水素電池ですが、アクアから採用が開始され従来のバッテリーに対して効率を高めたバイポーラ型として性能を向上しています。

5.新型のインテリアは水平基調を重視

先代クラウンのダッシュボードは、中央部(センタークラスター)を強調したデザインでした。メーターとセンターディスプレイの高さも異なるなど、従来ながらの高級セダンらしい格式を重視した重厚なデザインだったといえます。

しかし新型は左右の広がり感を印象付ける水平基調にレイアウト。メーターと大画面のセンターディスプレイ(12.3インチで「クロスオーバーX」以外のモデルに標準装備)の高さも揃え、スッキリとしています。

いっぽうで上級モデルらしい重厚感を感じる太いセンターコンソールは新型も継承していますが、シフトノブが電子制御式となっているのは大きな変化のひとつといっていいでしょう。
また、シフトレバーの前方にはスマートフォンを縦に置くトレーが備わり、そこに縦置き対応の「置くだけ充電」が内蔵されているのも新しくて便利なアイデアです。

左が新型クラウンで右は従来型。後席のひざ回りにもゆとりが増している

新型の室内は、頭の上や前後の空間が先代モデルよりも広がりました。また、旧型同様に上級グレードでは後席の電動リクライニングも用意しています。

6.新型に組み込まれた先進の運転支援システム

先代クラウンも高い水準の「トヨタセーフティセンス」を搭載していましたが、新型はプリクラッシュブレーキが交差点での出会い頭時にも対応するなど、対応できる事故形態を一層拡大。より幅広いシーンで安全を守ります。

ドライバーをサポートしてくれる高度運転支援技術も設定しています。
高速道路の渋滞(0km/h~約40km/h)時にハンドルから手を離しての走行を実現するトヨタ チームメイト「アドバンスト ドライブ(渋滞時支援)」を新たに採用。

また、スイッチを押すだけで駐車操作をサポートしてくれる「アドバンストパーク」はステアリングに加えて、アクセル、ブレーキ、シフトと全操作をクルマが支援するタイプへと高性能化しました。
並列駐車時は従来のバック駐車だけでなく前向き駐車、バック出庫、前向き出庫にも対応。クルマの外からスマホによる遠隔操作で駐車・出庫が可能なリモート機能も用意しています。

パッケージングからデザイン、車体サイズ、駆動レイアウト、そして安全機能と全方位で大きく進化した新型クラウンですが、最大のトピックといえるのは、コンサバティブなセダン作りから脱却して将来を見据えたクラウンの新しい姿へと大胆なシフトをおこなったことでしょう。

たとえば大径タイヤを組み合わせたボディのリフトアップは新しさの表現にとどまらず、視界の良さや乗り降りのしやすさなどこれまでのクラウンでは実現できなかった、かつ人にやさしいクルマへの進化と言えます。

また、エンジン縦置きの後輪駆動からエンジン横置きで後輪はモーターで駆動する4WDへの駆動レイアウトのチェンジも、クラウンの歴史上初めてのこと。かつての伝統にとらわれず、大胆な革新を実現していることを体現した大きな変化と言っていいでしょう。

(文:工藤貴宏 写真:トヨタ自動車)