【車のエンブレムに込められた思いをたどる】紋章 ~明確化される歴史やルーツ~
車のエンブレムにおいて、社名やブランド名をそのままデザイン化したものと並んで数多く採用されているのが、紋章を参考に図案化したもの。
紋章は、中世ヨーロッパのキリスト教支配の貴族社会において、盾に個人を特定できるように描いた世襲的制度といわれている。世界的に見てもこのような伝統ある紋章を使用しているのは、ヨーロッパ諸国と日本(家紋)だけである。
例えば現代でも容易に見ることができる身近なものとしては、三菱自動車のスリーダイヤを挙げることができる。三菱のエンブレムは、岩崎家の家紋「三階菱」(正確には「重ね三階菱」)と山内家の家紋「三ツ柏」を組み合わせたものと説明され、諸説はあるがそれをベースに現代のデザインへと進化していったという。
いっぽう欧米の自動車メーカーのエンブレムは、都市の紋章や代々受け継がれた貴族階級の紋章をもとにしたものがある。17世紀にデトロイトを開拓したフランス人貴族の紋章をもとにデザインされているキャデラックのエンブレムはその一例である。
- OSCA
- オスカ(1947年・イタリア)
マセラティを創業した4兄弟のうちの3人がマセラティを離れたのち、1947年にイタリアのエミリア・ロマーニャ州ボローニャに設立したレーシングコンストラクター兼自動車メーカーがオスカ(OSCA)。
社名はOfficine Specializzate Costruzioni Automobiliの頭文字からとられている。イタリア国内のレース、特にシチリアで行われた公道レース、タルガフローリオでの活躍が知られている。レーシングマシンをベースにしたスポーツモデルを市販。
フルアやミケロッティ、ザガートなど、当時イタリアの有名カロッツェリアがボディーを製作し、人気を呼んだという。しかし業績は振るわず、1963年に二輪メーカーMVアグスタに吸収される形で消滅した。
エンブレムはボローニャの紋章をモチーフにしたデザインを円の中心に置き、周りに社名とマセラティ兄弟(FRATELLI MASERATI)、設立場所であるボローニャの文字が入っている。
フィアット、オスカ、そしてピニンファリーナというイタリア自動車界の著名な3つのブランドがコラボレーションして生まれたフィアット・オスカ1500スパイダー バイ ピニンファリーナ。
ピニンファリーナがデザインしたフィアット1500スパイダーに、オスカ製の最高出力90馬力を発生するDOHCエンジンを搭載した高性能バージョンである。
標準仕様のモデルとは、ボンネット上のスクープで見分けることができる。フィアット1500はクーペとスパイダーのボディータイプがあり、後にフィアット1600へと進化したが、総生産台数3万4211台のうち3089台にオスカ製DOHCエンジンが搭載されたといわれている。
(写真:RMサザビーズ)
- PORSCHE
- ポルシェ(1949年・ドイツ)
本社のあるドイツ、バーデン・ヴュルテンベルク州とシュトゥットガルト市の紋章を組み合わせて図案化したのが、創業以来スポーツカーブランドとして確固たる地位を築き上げているポルシェである。
中央の馬はシュトゥート(Stutte)と呼ばれ、ドイツ語で雌馬を表す。シュトゥットガルト市の紋章にも同様のモチーフが用いられている。
左斜め上と右斜め下に配置されているのは、鹿の角を図案化したもので、こちらはバーデン・ヴュルテンベルク州のシンボルである(同州の紋章には他に3匹の獅子とペガサスも描かれている)。
シュトゥットガルトは、日本語で“馬の園”を意味している。その体勢は紋章学上の分類では、“両後足立ちの姿”=セイリャント(Salient)と呼ばれている。
ちなみに同じく馬をモチーフにしたエンブレムで有名なイタリアのフェラーリが用いる跳ね馬の姿は“左後片足立ちの姿”=ランパント(Ramp-ant)で、キャバリーノランパンテ(Cavallino-Rampante)の別名でも知られている。
1948年の記念すべきポルシェの第1号車。正確にはドイツではなくオーストリアのグミュントで開発され、初めてポルシェの名を冠したモデルとなった。
写真のモデルは、当時の図面や写真から作られたレプリカ。制作を担当したポルシェミュージアムのスタッフの手によって、オリジナル形状が忠実に再現されている。ボディーカラーもオリジナルの塗料から当時の色合いを分析、可能な限り356プロトタイプ1号車に近づけたという。
(写真:ポルシェAG)
【資料提供】
トヨタ博物館(https://www.toyota.co.jp/Museum/)
2019年4月17日(水)、トヨタ博物館に「クルマ文化資料室」がオープン。
今回ご紹介した、車のエンブレム(カーバッジ)の現物(一部展示していない場合もございます)が展示されています。
クルマ文化資料室(https://www.toyota.co.jp/Museum/exhibitions/data/showroom/index.html)
[ガズー編集部]
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