【車のエンブレムに込められた思いをたどる】イニシャル ~ブランド名を簡素化して表示~
各メーカーのブランド名の頭文字(イニシャル)をかたどったもので、古くはダラック(1896年・フランス)などがある。欧文表記される車名の頭文字を1文字だけ使用したものや、いくつかの文字を組み合わせたもの、さらにはそれらの文字をモチーフにデザイン化したものなど、バリエーションは幅広い。
BMWのように、頭文字を並べた社名(もともとの意味はドイツ語のBayerische Motoren Werkeで、日本語に訳せばバイエルン発動機製造会社となる)も、このイニシャルの分野に分類できるが、円を4分割したところに青と白のカラーを組み合わせた図案は、幾何学模様の解説の際に別途紹介したい。
現存するブランドでは、“VW”のフォルクスワーゲンや“RR”のロールス・ロイス、意匠としてはひと文字だけになるが“H”マークのホンダ、“D”マークのダイハツ、“S”マークのスズキ、“L”マークのレクサスなどもイニシャルをモチーフとした分野にカテゴライズできるだろう。
- MG
- エムジー(1929年・イギリス)
イギリスのスポーツカーブランドであるMGのエンブレムは、オクタゴン(八角形)の中に社名であるMGの文字を配置している。
社名は設立者であるウィリアム・M・モーリスと、その作業場であるガレージ、つまり「モーリス・ガレージ」(Morris Garages)のイニシャルからなっている。
ごく初期の正式社名はM.G. Car Company LTD.で自転車とモーターサイクルの製造販売会社だったが、後に設立者であるウィリアム・M・モーリスが持つ自動車会社モーリス・モーター(Morris Motor)の車両をベースにしたスポーツカーを製作し、その名が知られるようになった。
その後モーリス・モーターとMGは、オースティン・モーターと合併しブリティッシュ・モーター・カンパニー(BMC)となり、そのBMCは1968年にレイランドグループと合併し、イギリス民族資本自動車会社の大連合ともいうべきブリティッシュ・レイランド・モーター・コーポレーション(BLMC)へと姿を変えていった。
肝心のMGのエンブレムは、1992年にクリーム色をベースに茶色の文字を使用したデザインに変更され、中国のSAIC傘下となった現在では、赤字にシルバーの文字を用いたオクタゴンのエンブレムに代わっている。
- MG 14/28
- エムジー14/28(1924年・イギリス)
MGの最初の量販車といえるモデルが、「14/28」。1.8リッターサイドバルブの直4エンジンをフロントに搭載し、ブルノーズと呼ばれた特徴的な形状を持つフロントに縦型のラジエーターを装備していた。
多くのモデルはアルミ製のボディーパネルを採用し、2人乗り、4人乗りのオープンモデルとクーペモデルが作られたという。製造は1927年まで続けられ、後継の「14/40」にバトンを引き継ぐまでに約400台が作られたといわれている。
(写真:ニュースプレス)
- AC
- エーシー(1922年・イギリス)
1901年にイギリス・ロンドンのウエストノーウッドでジョン・ウィラーとジョン・ポートワインのふたりが自動車開発・製造会社ウィラー・ブラザーズを設立し、事業をスタートさせた。
彼らは1903年に初の自動車「ウィラー」をクリスタルパエスで開催されたモーターショーで発表した。最高出力20馬力の直4エンジンを搭載した、当時としては高性能の2シーターのオープンモデルだったが、自動車ビジネスの基礎を支えたのは、並行して開発されたオートキャリアーと呼ばれる配達用の三輪商用車だった。
それを示すように、社名はウィラー・ブラザーズから1903年にオートキャリアーへと変更され、エンブレムにはオートキャリアーのイニシャルである“AC”の2文字が使用された。
現在にまで知られる社名は、イニシャルと同様にこのオートキャリアーの頭文字を正式社名としたもので、1922年に社名変更が行われて以来、ブランドや車名に用いられている。一般にスポーツカーメーカーとして知られるACだが、そのイニシャルが商用車メーカーのルーツを示していたのだ。
- AC Ace Bristol
- エーシー・エース ブリストル(1958年・イギリス)
1953年に登場した2シーターオープンスポーツカー、ACエースに、ブリストル製の2リッター直6エンジンを搭載したモデルがACエース ブリストルだ。AC製の同じ2リッター直6エンジンが100馬力だったのに対して、ブリストル製のエンジン(ルーツはBMW製の2リッター直6)は120馬力を発生し、同モデルは高性能グレードという位置づけだった。
このACエースが後にフォード製2.6リッター直6エンジンを搭載し、さらにV8エンジンを搭載するACコブラに進化していくのは歴史が示す通りである。
(写真:ニュースプレス)
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- DARRACQ
- ダラック(1896年・フランス)
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- ISOTTA-FRASCHINI
- イソッタ・フラスキーニ(1899年・イタリア)
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- HUPMOBILE
- ハップモビル(1908年・アメリカ)
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- VELIE
- ヴェリエ(1909年・アメリカ)
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- SIGMA
- シグマ(1913年・フランス)
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- WILLYS KNIGHT
- ウィリス・ナイト(1914年・アメリカ)
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- DURANT
- デュラント(1921年・アメリカ)
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- FRANKLIN
- フランクリン(1928年・アメリカ)
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- BEVERLEY BARNES
- ビバリー・バーンズ(1928年・イギリス)
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- VIKING
- ヴァイキング(1929年・アメリカ)
【資料提供】
トヨタ博物館 (http://www.toyota.co.jp/Museum/)
2019年4月17日(水)、トヨタ博物館に「クルマ文化資料室」がオープン。
今回ご紹介した、車のエンブレム(カーバッジ)の現物(一部展示していない場合もございます)が展示されています。
クルマ文化資料室 (https://www.toyota.co.jp/Museum/exhibitions/data/showroom/index.html)
[ガズー編集部]
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