【車のエンブレムに込められた思いをたどる】ウイング ~スピードや自由への憧れを表現~
エンブレムには期せずして同様のモチーフが用いられることもある。翼をデザインした“ウイング”デザインがそれに当たる。空を飛ぶ鳥を連想させるものが多く見受けられるのは、スピードへの憧れと、自動車がそれまでにない鳥のような“自由な移動”をもたらす存在だと考えられたからではないだろうか。
いっぽうイスパノスイザ(スペイン)や、ヴォアザン(フランス)などのように、もとは航空機製造から自動車製造へ移行したメーカーは、エンブレムにその名残を見ることができる。
アストンマーティン(イギリス)は、一見鳥の翼をモチーフにしているように見えるが、スカラベと呼ばれる昆虫の羽がデザインのベースになっている。ひとくちにウイングのデザインといっても、そのルーツはさまざまなのである。
- WOLSELEY
- ウーズレー(1899年・イギリス)
起源は1887年に、オーストラリアのシドニーでフレデリック・ヨーク・ウーズレーが創業したウーズレー羊毛刈込機械会社(Wolseley Sheep Shearing Machine Company Limited)にさかのぼることができる。
その後、会社はイギリスのバーミンガムに移り、農業用機械、エンジンなどを製造販売する。自社設計の自動車の製造を始めたのは1895年とされている。
最初のモデルは前1輪、後ろ2輪の三輪乗用車だった。後に自らの名を冠する自動車会社オースチンを立ち上げる、ハーバート・オースチンがその開発の任を担った。
初期のラジエーター用のエンブレムには頭文字の「W」を立体的にし、左右から翼が伸びるようなモチーフも見られた。
- Wolseley 16/60
- ウーズレー16/60(1961年・イギリス)
1958年にデビューした「15/60」の進化版となるのが「16/60」。15/60に搭載されていた1.5リッターの最高出力53馬力の直4エンジンは、16/60で1.6リッターに進化し、最高出力は62馬力にまで引き上げられた。このモデルでは、初めてオートマチックトランスミッションも採用されている。当時の親会社BMCの方針で、ライリー、オースチン、MG、モーリスにも兄弟車がラインナップしていた。
(写真:ニュースプレス)
- ASTON MARTIN
- アストンマーティン(1922年・イギリス)
映画『007』シリーズの主人公、ジェームズ・ボンドが駆るクルマとしても有名なアストンマーティンは、1913年にロバート・バムフォードとライオネル・マーティンが、バムフォード・アンド・マーティン社を設立したことに始まる。
彼らは既存の市販車両を改造してレースに参戦。1915年に製作された1号車が、イギリスのバッキンガムシャーの村“アストン・クリントン”のヒルクライムレースで活躍したことから、「アストンマーティン」のブランド名が誕生したといわれている。
初期のエンブレムは、AとMのイニシャルをデザインしたものだったが、後にMを中心に置いた翼をモチーフとしたデザインに進化(写真)。1932年に、現在まで続くスカラベ(昆虫の羽)をベースにブランド名を入れたデザインに変更され、現在に至っている。
- Aston Martin DB5
- アストンマーティンDB5(1963年・イギリス)
1963年にデビューした、アストンマーティンのスポーツモデルがDB5。
最高出力282馬力の4リッター直6エンジンをフロントに搭載している。映画『007』のシリーズ第3作『ゴールドフィンガー』にさまざまな秘密兵器を搭載し、ボンドカーとして登場した。
後にこの劇中のボンドカーを模して、回転するナンバープレートなどを搭載したレプリカモデルをアストンマーティン自身が製作し、販売された。写真は当時ジェームズ・ボンドを演じたショーン・コネリーとDB5。
(写真:ニュースプレス)
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- STANDARD
- スタンダード(1903年・イギリス)
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- HOTCHKISS
- オチキス(1903年・フランス)
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- HISPANO-SUIZA
- イスパノスイザ(1904年・スペイン/フランス)
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- SUERE
- シュール(1905年・フランス)
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- AUSTIN
- オースチン(1906年・イギリス)
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- HILLMAN
- ヒルマン(1907年・イギリス)
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- MORGAN
- モーガン(1910年・イギリス)
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- DODGE BROTHERS
- ダッジ・ブラザーズ(1914年・アメリカ)
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- BENTLEY
- ベントレー(1919年・イギリス)
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- VOISIN
- ヴォアザン(1919年・フランス)
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- RALLY
- ラリー(1921年・フランス)
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- HCS
- エイチ・シー・エス(1921年・アメリカ)
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- INVICTA
- インヴィクタ(1925年・イギリス)
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- LA SALLE
- ラ・サール(1927年・アメリカ)
【資料提供】
トヨタ博物館 (http://www.toyota.co.jp/Museum/)
2019年4月17日(水)、トヨタ博物館に「クルマ文化資料室」がオープン。
今回ご紹介した、車のエンブレム(カーバッジ)の現物(一部展示していない場合もございます)が展示されています。
クルマ文化資料室 (https://www.toyota.co.jp/Museum/exhibitions/data/showroom/index.html)
[ガズー編集部]
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