わたしの自動車史(前編) ― 熊倉重春 ―
思えば、はるばる来たもんだ。免許を取ってから半世紀、わが家のガレージには、二輪、四輪が入れ代わり立ち代わり、累計82台もすみついてきた。自分で買った四輪が33台、二輪が17台、完全に私物化して乗りまわした社用車(自動車誌『CGカーグラフィック』の長期テスト車)が24台、それにカミサンの二輪、四輪合わせて5台、娘のバイクが3台……と書くと大金持ちに見えそうだが、僕は「クルマ大好きのやじ馬オジサン」にすぎない。
そんな旅路(59年型オースティンA50ケンブリッジDxから最新の三菱i-MiEVまで)には、一貫した原則も法則もない。瞬間ごとの必殺衝動買いの人生だったからで、一つひとつ深く考えるより、あくせく金策に追われていた記憶の方が濃かったりする。そのあげく「買っちまえば、なんとかなるさ」とか悟りを開いたけどね。
いや、強いて特徴を探せば、なんとなく極端から極端に走る傾向は匂うかな。例えばポルシェ911。とびとびに3台買ったけれど(67年のT、85年のカレラ、89年のカレラ2)、しばらく乗って「よし、わかった」みたいな気がすると、ランチア・フルヴィアHF、シトロエン・ヴィザGT、ランチア・デルタ・インテグラーレ・コレツィオーネとか、思いきり色合いの違うラテン系に乗り換えたりしている。それでもまた欲しくなるのが911の不思議な魅力だ。それにしてもカレラ2(新車!)の時は、同時にアウディ90クワトロ20Vにも手を出して、老後の生活設計など何も考えない無謀ぶりに、われながらあきれるしかなかった。なぜこんな事態に至ったかというと、ティプトロニック(911)やトルセン・センターデフ(アウディ)など駆動系の新技術に興味津々だったから。
そういえば初代と2代目プリウスにスズキ・ツイン・ハイブリッドを同時に愛用したり、いち早くi-MiEVに飛びついたり、「新しがり屋」の一面も否定できない。
極端から極端といえば、大小の起伏も激しすぎる。初代ホンダ・オデッセイ→スズキ・ツイン→ジャガーXJ-S V12→三菱i-MiEVの流れなんて、たぶん誰にも理解不能だろう。二輪の自分史も極端の極み。もともと四輪人間だったのが、CG編集部で周囲に刺激されたのが28歳の時。急いで大型二輪の免許を取って、まずヤマハの原付を3台(TY、RDなど)、続いてカワサキKE125、ホンダVT250F、スズキRG250γ、ホンダCB450K1にCBX400Fからトライアンフ・ボンネヴィルT120R、そしてカワサキ750SS(H2)まで、1年でドドッと駆け上がってしまったんだから。
いまさらデタラメ人生を反省しても手遅れだが、無軌道だったからこそ、楽しく思い出せるのも事実。本当は、ぜ~んぶ保存しておいて、自分だけの博物館を作りたいけどねえ。
【編集協力・素材提供】
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[ガズ―編集部]
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