【ミュージアム探訪】トヨタ博物館(後編)
トヨタ博物館を訪れて感心するのは、子供の観覧者が多いことだ。休日には、家族連れでにぎわっている。“自動車王国”愛知県だけあって、クルマが身近にある文化が根づいているようだ。教育機関向けのプログラムも用意されていて、幼稚園や小学校の団体見学を受け入れる用意が調っている。
そういう土地柄なので、アクセスにはやはりクルマが便利だ。名古屋市のすぐ東に位置する長久手町にあり、東名高速道路や東海環状自動車道のICからも近い。広々とした田園地帯で、乗用車400台を収容する駐車場が整備されている。公共交通機関では、リニアモーターカー「リニモ」の芸大通駅が近い。2005年に開催された「愛・地球博」で観客を運んだ路線である。トヨタ博物館は、地球博の会場からすぐ近くに位置しているのだ。
地球博の跡地は“モリコロパーク”と呼ばれる公園になっていて、サイクリングコースやアイススケート場、温水プールなどが整備されている。開催時にはなかなか予約が取れなかった「サツキとメイの家」も残されているので、ファミリーで楽しめるのだ。トヨタ博物館と合わせて訪れる家族連れも多いのだろう。
博物館だけで1日過ごさせるためには、女性や子供を退屈させるわけにはいかない。レストランとカフェが併設されていて、見学の合間にくつろげるようになっている。マニアだけを相手にしている施設ではないので、快適な環境を整えるのは大切なことだ。
ミュージアムショップも充実している。ミニカー、キーホルダー、Tシャツなどの定番商品がたくさん並べられ、カタログや図版から子供向けの絵本まで書籍もそろっている。特に重点を置いているのは2000GTグッズだ。トヨタの誇るスポーツカーは、今も人気ナンバーワンらしい。
トヨタ博物館では、自動車に関するさまざまなイベントを行っている。子供に人気なのは「はたらく自動車」で、同様の企画が何度も繰り返されている。「クルマとモード」「歌謡曲に登場したクルマたち」といった、ちょっとひねった企画展も行われた。自動車の魅力を伝えるための、新たな側面を見せる工夫なのだ。
常設展示だけでも全部見て回るのは結構大変だが、さらに興味のある人のために「バックヤードツアー」も用意されている。車両収蔵庫には約70台が収められていて、整備・点検して展示車両と定期的に入れ替えられる。なかなか展示されない秘蔵車両を見ることができるチャンスで、学芸員の解説を聞きながら回ることができるのもうれしいところ。毎年春と秋に開催され、すぐに予約が埋まってしまう人気企画となっている。
それでもまだ物足りなければ、トヨタのもうひとつの博物館を訪れればいい。名古屋市内にあるトヨタテクノミュージアム産業技術記念館である。豊田自動織布工場の建物を利用した施設で、エントランスには豊田佐吉の発明した「環状織機」がある。繊維機械から始まり、トヨタの研究開発の歴史、さらには自動車の生産技術をたどっていくアカデミックな博物館だ。ふたつの博物館を丹念に見ていけば、相当な自動車好きでもおなかいっぱいになるだろう。愛知県は、“自動車博物館王国”でもあった。
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[ガズ―編集部]
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