【ミュージアム探訪】ヘンリー・フォード博物館(前編)
正直言って、ここを1日で見てまわろうというのは無理があるし、あまりにもったいない。その広さ、その展示物の多さという点で、ヘンリー・フォード博物館は他を圧する規模を誇るからだ。
そもそも、ヘンリー・フォード博物館が存在するグリーンフィールドビレッジから説明をした方がいいだろう。グリーンフィールドビレッジとは、歴史上重要と思われる建物をアメリカ中から移築した、建築物のミュージアムともいうべきところ。中にはライト兄弟がオハイオ州で開いていた自転車屋の建物や、ニュージャージーにあったトーマス・エジソンの研究室なんかもここにある。その広さは実に200エーカー。想像がつきにくいから例によって東京ドームの広さに換算すると、およそ17.4個分となる。まあ歩いてまわるのは完全に無理というものだ。ちなみに、この施設のとなりにはオートモーティブ・ホール・オブ・フェイム(Automotive Hall of Fame)、すなわち「自動車殿堂」の建物もあり、館内には日本人で初めてこれを受賞した本田宗一郎を含め、多くの人々の記念品が収蔵されている。
さて、本題のヘンリー・フォード博物館である。その建物だけで12エーカーというから、これだけでも東京ドームの敷地より広い(それでも、ここはまあ歩いてまわれるのだが……)。そして、その館内に展示してあるのは自動車だけではない。そもそもこの博物館はヘンリー・フォード自身が集めたコレクションに端を発しているのだが、そのコレクション自体が、自動車に限らずアメリカの歴史的な遺産を集めたものだったという。ここはまさに「アメリカ博物館」そのものなのである。
といっても所詮はクルマ好きなので、チケットを買ったら足は入り口からまっすぐに自動車の展示スペースに向かってしまう。あり得ないほど広く、驚くほど壁と柱が少ない館内に入ると、真正面で私を出迎えてくれたのは1967年のルマン24時間を制した「フォードGT マークIV」であった。私などは、まずそこで大いに時間を費やしてしまう。次に来訪者を出迎えるのが、歴代大統領のいわゆるプレジデンシャル・リムジンだ。もちろん、展示物は訪れる時によって変わっているだろうから、いつもこの通りとは限らない。しかし、ヘンリー・フォード博物館は入り口周辺の展示についてはあまり手を付けていないようで、博物館のウェブサイトを見ても、いつもこのプレジデンシャル・リムジンを売り物にしていた。ここにはトルーマンからレーガンに至る歴代フォード製リムジンが3台並んでおり、そこには、あのケネディ大統領が暗殺された時のクルマも含まれている。
(文=中村孝仁)
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[ガズ―編集部]
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