【ミュージアム探訪】ヘンリー・フォード博物館(後編)

フォードの創立50周年を記念して製作されたコンセプトカー、フォードX-100
ソーセージの形をしたオスカーマイヤー・ヴィーナーモビル
「アレゲニー」の愛称で親しまれた、チェサピーク&オハイオ鉄道の巨大な蒸気機関車
グリーンフィールドビレッジの敷地内を走るフォード・モデルT

ヘンリー・フォード博物館の自動車展示ゾーンは「ドライビングアメリカ」と名付けられ、自動車の黎明(れいめい)期、世界恐慌前の豪華絢爛(けんらん)期、さらには戦後のモータリゼーション期といった区分のもとに展示がなされている。そして、そこに並べられているクルマはフォード車に限ったものではない。ここではトヨタ博物館のように、壮大な自動車史を見ることができるのだ。

もちろん、特筆に値するフォード車も数多く収蔵されている。前編で紹介したフォードGTやリンカーンのプレジデンシャル・リムジンのほかにも、例えばフォードX-100は、同社の創立50周年に合わせて1953年に製作された記念碑的なコンセプトカーである。開発は当時のリンカーンをベースに、1952年にスタート。単なるスタイリングコンセプトではなく、電動開閉式のルーフや電動ジャッキ、自動車電話、はてはひげそり(!)まで装備していたというから驚きだ。

また、時代ごとの区分とは別に、レーシングカーやコンセプトカーのゾーンもあり、ここでしか見ることのできないレアなモデルにもお目にかかることができる。珍しいものでは1952年製のオスカーマイヤー・ヴィーナーモビルがそうだ。ソーセージの形をしたボディーを持つこのクルマは、1936年からいわゆる宣伝カーとして活躍。その歴史は今も続いている。

このように見どころの多いヘンリー・フォード博物館の自動車展示だが、実はそこに割かれているスペースは建物全体の4分の1程度にすぎない。クルマのほかにも、乗り物と名の付くありとあらゆるものがここには展示されているのだ。というわけで、飛行機マニア、鉄道マニアと一緒に出掛けても、彼らを退屈させる心配はなし。さらにアメリカ製の家具や家、農作業用の機具から巨大スチームエンジン等々、展示品そのものがアメリカの歴史を語ってくれる。クルマや飛行機に関心のない女性でも、ジュエリーや銀製品の展示には興味を持つかもしれない。

このように、展示品の多さとその広さからして、ヘンリー・フォード博物館を完全に制覇しようと思ったら、ここだけでも2~3日はかかる。さらにグリーンフィールドビレッジ全体を見てまわろうと思ったら、これに加えて数日の日程を用意したほうがいいだろう。

なお、訪れる際に注意すべきなのが季節。外すべきは冬だ。ご存じの通り、緯度の高いデトロイト周辺は真冬だと常に氷点下となる。よって、グリーンフィールドビレッジの方は基本的に休園。開園期間は4月15日から11月末までなので、その間に訪れるといいだろう。逆に夏はそれほど暑くはならないからお勧め。真夏でも大丈夫である。

(文=中村孝仁)

【編集協力・素材提供】
(株)webCG http://www.webcg.net/

[ガズ―編集部]

MORIZO on the Road