わたしの自動車史(後編) ― 竹岡 圭 ―
ポルシェ944に一目ぼれした中学生の私ですが、それが高嶺の花であることには気づいていました。というのも、小学生の頃遊んだスーパーカー消しゴムの中に、ポルシェ930ターボがあったんです。なので、ポルシェはスーパーカーだと。とても高くて買えないだろうと。そんなことを思っていたある日、見かけるわけです。944にどことなく似た、マツダ・サバンナRX-7というヤツを。これなら日本のクルマだし、買えるんじゃないかな?そうだ、免許取ったらこのクルマを買おう、ポルシェは60歳になった時、いちばん新しいのを買おう!と、心に決めました。とはいえ、いまだにRX-7を愛車にしたことはありませんけど(笑)。
というのも、実は家の事情で免許が取得できたのは22歳。その頃RX-7は、すでに新型のFD3Sへと姿を変えていました(笑)。しかも教習所に通っている途中にこの業界の、モータージャーナリストの日下部保雄氏率いる「プロスペック」という会社に入社してしまったんです。実は他の会社に内定していたのですが、教習所に通っている時って、とにかくクルマに乗りたいじゃないですか。でも自分の経済状況ではクルマなんて買えそうもない。そうしたらもう、非常にうまいところをつつく感じで、プロスペックの入社条件のひとつに「クルマの貸与」が入っていたんです。そこで周囲の反対を押し切って、プロスペックに入社。「今日卒検なんで会社休みます~」なんて感じで入社後に無事免許を取得し、その日から私の愛車はホンダ・ビートになりました。プロスペックを卒業するときに譲ってもらい、通勤から休日まで10年間ビートと共に走りました。最北は青森、最南は大分まで行きましたね。
その後、ビートは徐々にレーシングカーへと変貌を遂げ始めます。今も私のレースの相棒として活躍してくれていますが、あまりにも変貌しすぎて一般道で乗ることができなくなったため、トヨタ・セリカGT-FOURラリーを購入。とはいえ、これもダートトライアルに参戦するためにチョイスしたもので、タイヤを置く場所がないために、ラリー用タイヤを履かせたまま街中を走りまわっていました。今じゃこんなウルサイ仕様で毎日を過ごすのはちょっとツライかも。あぁ若いって素晴らしいわぁ~!(笑)
その後、東京モーターショーでひと目ぼれしたのが、ニューミニだったんです。ようやく購入するめどがついた時には、すでに9カ月待ち。5000kmしか走っていない中古車が先に見つかったので、新車とまったく同じ価格で購入。そして、数年後、フォルクスワーゲン・ゴルフのワンメイクレースであるゴルフGTIカップに参戦し、2台持ち(ビートも入れれば3台持ち)人生がスタートします。毎日GTIに乗っていれば、レースでも少しはうまく走れるようになるのではないか?と思ったのがそのライフスタイルが始まった理由。果たして効果のほどは……まぁご想像にお任せしましょう。
それよりも実は私、ゴルフを愛車にするまでは、このクルマがあまり好きではなかったんです。なんだかゴルフに乗ったらもう上がり!っていうような気がしちゃって…。それが、いざ愛車にしてみたら、こんなにいいクルマないってほど好きになりました。乗れば乗るほど、噛めば噛むほどいい味が染み出てくるスルメのようなクルマで、毎日何かしら発見があるんです。レースから引っ越しまでできるほど懐の深いクルマなんて、なかなかないですよ。
さて、60歳まであと20年弱となり、やっぱり最新のポルシェは70歳でいいかな?と最近思えてきました。もともとが、おばあちゃんがスーパーカーに乗るっていうの、カッコよくない?というところからの発想ですからね。でも実際70歳になったら、80歳になったときでイイヤなんて言うことのないように、ポルシェ貯金頑張ります。
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[ガズ―編集部]
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