わたしの自動車史(後編) ― 吉田 匠 ―

僕がかつて所有していたホンダS800M。
ポルシェ911SC(写真は1983年型SC 3.0クーペ)。僕が手に入れたものは78年型の911SCS。「SCS」とは日本仕様独自の名称で、外観上は16インチホイール&タイヤがSCとの違いだった。
1991年ポルシェ964カレラ2(右)と、1964年オースティン・ヒーリー・スプライト マークII(左)。964カレラ2は購入した時点で走行2万km台のワンオーナー車で、抜群に程度が良かった。ボディーカラーは「シグナルグリーン」という名前。一方、オースティン・ヒーリー・スプライトは僕好みに各部を仕上げたもの。フラットなウインドシールドと簡素なサイドウィンドウを持つ純ロードスタースタイルがマークIIまでの特徴である。
2014年の「浅間ヒルクライム」における、1962年ポルシェ356B 1600Super。
356Bは、50年前のクルマとは思えないほどに良いコンディションを保っている。今年で購入から4年が経つが、これからも長く付き合うことになりそうだ。

ホンダS800との蜜月は予想以上に長く続いた。最初の68年型から1年を経ずにしてより程度のいい69年型S800Mに乗り換えたが、国内販売最終号機とされるこの69年型は、なんと80年代後半まで所有することになる。なぜならS800Mは、サスペンションとタイヤに手を入れれば、エンジンはノーマルのままジムカーナで総合優勝できるほどの実力を持っていながら、2人以上の人間を乗せようと思わなければ立派に日常の足に使える実用性を備えていたからだ。だから僕はこの黄色いS800Mを、買い物やデイトからサーキット走行まで、あらゆる用途に使っていた。

その一方で、サーキットを走り始めたら本格的なレーシング仕様が欲しくなり、67年型S800クーペをベースにしてそれを製作。そいつを駆って80年代前半の筑波ヒストリックカーレースでロータス・エランやフェアレディ2000を相手に総合優勝を決めたのも、心に残る思い出である。

1985年に『CG』を辞して最初に手に入れたのが、当時、富ヶ谷に住んで代々木の事務所にかよっていたフリーランスモータージャーナリストの都会の足にふさわしいと自画自賛の、ルノー・サンクATの中古車だった。だがやがてMTのクルマに乗りたくなり、日本に導入されたばかりのプジョー205GTIを次に購入した。けれども、その205もさほど長くは続かなかった。この頃、『CG』誌の仕事を中心にしてポルシェ911に乗る機会が増え、911が欲しい病が急速に重症化していたのだ。そして1987年、9年落ちの78年型911SCSを、これも『CG』の中古車売買欄で目にして、400万円也で購入。ついに初ポルシェを手に入れた!

この911SCS、当初は一台だけで生活のすべてを賄っていたが、僕が40歳の年に長男が生まれたこともあって、足としてこれも中古のBMW 318iを入手。これ以降わが家では、スポーツカーと実用車の2台体制が続くことになる。

そこで、その後のスポーツカーを同時期の実用車とのコンビで列記すると、1984年911カレラ+318i、1960年ヒーリー・スプライト マークI+ジャガーXJ6 3.2S、1997年ミニ・メイフェア+XJ6→メルセデス・ベンツC230ワゴン、1965年911+シトロエン・エグザンティア、1970年アルファ・ロメオ・ジュニアZ+フォルクスワーゲン・ゴルフV GL、1991年964カレラ2+ゴルフV→MINIワン、1964年ヒーリー・スプライト マークII+MINIワンときて、現在の2台、1962年ポルシェ356B 1600スーパー+MINIクーパー クラブマンに至るというのが、2台の組み合わせに実際とは多少のズレがあるにせよ、おおむね正しいラインナップだと思う。
このなかで新車は、前記の205GTIのほか、ジャガーXJ6、C230ワゴン、ミニ・メイフェア、ゴルフV、それに現在のMINIクラブマンの6台のみ、他はすべてユーズドカーである。

スポーツカーは今、空冷911を4台乗り継いだ末に先祖返りしてポルシェ356Bに乗っているが、これが50年以上前のクルマとは思えぬほどコンディションがよく、渋滞の都内を走っても機嫌を損ねることはないし、ヒストリックカーラリーのSSやヒルクライムに出撃すると、たった75psのクルマとは思えぬほど速いタイムをマークできる。ジュニアZと964や、964とスプライト マークIIのように、まれに2台のスポーツカーを同時に持っていた時期もあるが、最初のS800Mを別にすれば、通常は長くても5~6年で次に乗り換えてきた。ところが、2010年に手に入れた356Bとは、もっと長い付き合いになりそうな気がしている。

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[ガズ―編集部]

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