【ミュージアム探訪】ホンダコレクションホール(後編)

二輪車市販車の展示コーナー。左端に展示されているのが、自転車用補助エンジンを装着した自転車である。
こちらは四輪市販車の展示コーナー。手前の水色の車両が、精緻な直4エンジンを搭載した軽トラックのT360だ。
往年の名スポーツカーであるS600の姿も。四輪のホンダファンにとっては、もっとも長く時間を費やしてしまう展示コーナーかもしれない。
四輪のモータースポーツコーナーには歴代のF1マシンがズラリ。ホンダは2015年からエンジンサプライヤーとしてF1に復帰する予定だ。
ミニカーや書籍など、幅広い商品が取りそろえられたミュージアムショップ。館内には書籍の閲覧コーナーも併設されている。

1階から階段、またはエレベーターで2階へ上がり、まずは南棟の二輪市販車の展示コーナーを訪れる。なぜ最初にここを持ってきたかというと、ホンダの“原点”ともいえる展示がそこにあるからだ。それは、1946年に本田宗一郎氏が作った「自転車用補助エンジン」である。

そもそも本田技研工業が設立されたのは1948年、その2年前に本田宗一郎氏は本田技術研究所を静岡県浜松市に設立し、旧軍用無線機の電源エンジンを利用してこれを開発したという。空冷2サイクル単気筒で排気量は50cc、出力はわずか1馬力だった。

余談だがこの自転車用補助エンジン、翌年には「A型」としてホンダの名で製品化。のちに他の国産バイクメーカーでも数多く採用されたロータリーバルブ式の空冷2サイクル単気筒エンジンに進化し、出力は1馬力と同じながら最高速度45km/hを実現した。何よりも市販の自転車の後輪に簡単に取り付けられる利便性が受け、1951年まで生産されるほどのロングセラーとなったという。

このほかにも、ホンダの代名詞である「カブ」「スーパーカブ」をはじめ、市販された実用車、オン&オフロード車などがひとつのスペースに収まり、70年近いホンダ二輪の歴史を知ることができるのだ。

一方、2階の北棟では、市販車でも四輪、そして意外と知られていない(失礼)ホンダの汎用(はんよう)製品を見ることができる。ホンダの四輪への挑戦は、1963年に市販化され“スポーツトラック”の愛称で呼ばれたT360という軽トラックから始まる。そこには日本初となる直4 DOHCエンジンや、さらにミドシップマウントのエンジンレイアウトなど、ホンダが創業時から持ち続けている“独創性”を垣間見ることができるのだ。
このほかにも、ここではファンならたまらない往年の名車「S600」(1963年)や、世界を震撼(しんかん)させたスーパースポーツカー「NSX-R」(1992年)などの実車も拝むことができる。

一方、汎用製品の展示についても、カブのエンジンをベースとした「H型エンジン」(1953年)をはじめ、耕うん機や船外機、そして除雪機など、その内容は多岐にわたる。もともとホンダの汎用機器、特に耕うん機の歴史は長く、本田宗一郎氏は1959年に「農村の機械化に貢献したい」と「F150」を発売。その伝統は最近の大ヒットモデルとなったカセットガス式耕うん機「ピアンタFV200」(2009年)に受け継がれているのだ。

3階に移動すると、これもホンダの代名詞といえるモータースポーツの世界を堪能することができる。こちらも南棟が二輪、北棟が四輪と分かれており、二輪では1961年の世界選手権125ccクラスを制した「2RC143」をはじめ、歴代のモトレーサーを展示。四輪ではF1マシンはもちろん、その原点となる「カーチス号」(1924年)なども展示しており、モータースポーツファンにはたまらない魅力ある内容となっている。

最後は、1階南棟にある「ミュージアムショップ」をぜひのぞいてほしい。往年の名車やレーシングカーのミニカー、またオールド&ヒストリックカーの書籍などが豊富に取りそろえられており、ここでしか販売していない限定品も手に入れることができる。また、貴重なライブラリーを見ることができる閲覧室も併設されている。

正直に言えば、初めてホンダコレクションホールの外観を見た時は、それほど大きな建物ではない、という印象を持ったのだが、中に入るとそれは大きな間違いであることに気付かされた。なぜならこのコレクションホールには歴史だけではなく、ホンダが過去から持ち続けている大きな“夢”がギュッと凝縮されて詰まっているからだ。

(文=高山正寛)

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[ガズ―編集部]

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