【モータースポーツ大百科】ツーリングカーレース(中編)
ここからは、ヨーロッパを中心としたツーリングカーレースの歴史を、より具体的に振り返ってみたい。
1950年代から半ば自然発生的に各地で行われるようになったツーリングカーレースは、やがてFIAが統一ルールを制定したことで国際的な交流が可能になり、1963年にはヨーロッパ・ツーリングカー・チャレンジとしてシリーズ化された。これが、後にヨーロッパ・ツーリングカー選手権(ETC)と呼ばれることになるレースシリーズの原型である。初年度はニュルブルクリンク、モン・ヴァントゥ、ブランズハッチ、マロリーパーク、ゾルダー、ザントフールト、テンメースヨッホ、ブダペストで計8戦を開催。その多くは6時間程度の耐久レースだったが、一方で短距離のスプリントレースが催されたり、テンメースヨッホではサーキットレースではなくヒルクライムとしてイベントが実施されたりした。規則はFIAのグループ2を基本としたもので、排気量別に9クラスを設定。ジャガーMk II、メルセデス・ベンツ300E、アルファ・ロメオ・ジュリエッタTI、ランチア・フラミニア、ボルボ122S、ミニクーパーS、サーブ96、DKW F12、BMW 700Sなど多彩なモデルがエントリーし、ジャガーを操るドイツ人のピーター・ノエッカーが初代チャンピオンに輝いた。
その後、シリーズはより高度な改造が許されるグループ5を対象にしたこともあったが、エントラントが集まらなくなったためにすぐにグループ2に戻されるという“事件”も起きている。
1982年にはFIAがグループ2規定をグループAとして刷新。ここに、より現代的なツーリングカーレースが国際的に開催される基盤ができあがった。当時はBMW 528i、ジャガーXJ-S、アルファ・ロメオ・アルフェッタGTV/6、アウディ・クーペ、オペル・アスコナ、タルボ・サンビームなどがエントリー。レースフォーマットは500kmの耐久レースを基本としながら、1964年に始まったスパ24時間レースもカレンダーに名を連ねていた。
このシリーズは1987年に世界ツーリングカー選手権へと発展。その最終戦はインターTECとして富士スピードウェイでも開催されたのでご記憶の読者もいることだろう。けれども、コストの高騰などもあって1988年にETCは解体されてしまう。一方、これと同じ規則を受け継いだ全日本ツーリングカー選手権(JTC)では日産のR32 GT-Rが大活躍、1993年まで継続的に開催されることとなった。
(文=大谷達也)
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[ガズ―編集部]
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