【ミュージアム探訪】ヒューモビリティワールド(後編)

さて2階から3階に上がると、そこではダイハツ車の過去からの歴史を、実車を交えながら知ることができる懐かしいクルマが展示されており、壮年(失礼)のドライバーにとってもワクワクする世界となっている。

軽自動車の進化を紹介する3階の展示の様子。こちらではダイハツ・フェローが60年代の世相とともに紹介されている。

まずダイハツといえば外せないのが、軽規格の三輪自動車ミゼットだろう。ミゼットは日本の高度成長期に一大ブームを起こしたエポックメイキングな商用車である。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』などで再度注目を集めたこともあり、その姿を知っている人も少なくないはずだ。このほかにも、プリズムカットと呼ばれる独自のエクステリアデザインで話題となった初代フェローや、「5平米カー」のコンセプトで大ヒットモデルとなった初代シャレード、現在でもダイハツを支えるミラシリーズの原点であるミラ クォーレなどが、往年を知る来館者を楽しませてくれる。また展示車両そのものと並んで面白いのが、このフロアのブースが時代ごとに分けられていること。ここまでに紹介したクルマでいえば、50年代はミゼット、60年代はフェロー、70年代はシャレード、80年代はミラ クォーレと、それぞれの時代に活躍した一台が、当時の世相の解説と共に展示されているのだ。

80年代を代表するダイハツ車としては、現在のミラシリーズの元祖ともいえるミラ クォーレを展示。

それでは平成の御世(みよ)となった90年代以降はどうなっているのかというと、まずは90年代を代表してムーヴが、2000年代にはコペンとタントが、そして2010年代のブースにはミラ イースが展示されている。ライバルとベストセラーの座を競い合った大ヒット作だったり、今でいうスーパーハイトワゴンの先駆けだったりと、いずれもダイハツの歴史、軽自動車の歴史を語る上で外せない存在であったことは間違いない。ただ、ミゼットやシャレードを懐かしく思う身からすれば、「これってまだまだ現役のクルマじゃないの?」という気持ちがなきにしもあらず。いまだ色鮮やかに覚えているクルマが博物館に陳列されているさまに、時の流れを感じずにはいられない……。

3階の片隅で見慣れぬクルマを発見。その正体はダイハツが新興国向けに生産しているコンパクトカーのアイラ。ここではアジアにおけるダイハツの取り組みが紹介されている。

最後に4階に上がると展示も含めた世界観がぐっと現在、そして未来にかじを切っていることがわかる。フロアの中央ではタントのカットモデルを用い、使う人のことを考えた軽自動車作りを解説。その奥、エレベーターや階段から見て正面の壁に展示されているのは、軽自動車を支えるさまざまな技術だ。来訪者を飽きさせない工夫もあり、軽自動車の設計やデザインをゲーム感覚で学べるほか、走る・曲がる・止まるというクルマの基本原理や低燃費化に関わる装置の効果を、体感して知ることができる。これなら子供連れで見学に訪れても、きっと安心だろう。

4階では製品開発や工場での生産の様子、走りや燃費性能を支えるさまざまな技術など、今日の軽自動車について知ることができる。

最後に注目してほしいのが、上ってきた階段の側に位置する、未来の技術のコーナー。そこには燃料電池を搭載したダイハツのコンセプトカーが展示されている。将来的には、軽自動車規格に収まるコンパクトな燃料電池車がダイハツから登場するかもしれない。

さて、このヒューモビリティワールドだが、いきなり現地に行っても入館することができない。要は完全予約制を実施しているのだ。一般見学が行われているのは毎週土曜。一回の見学に要する時間は約1時間半で、午前に3回、午後に3回の計6回の枠が用意されている。予約はひと枠20人までの先着順となっているので、あらかじめ日程に余裕を持っておくのがいいだろう。

(文=高山正寛/写真=ダイハツ工業)

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[ガズ―編集部]