フォード・マスタング…なつかしのアメリカ車特集

大きくて豪華なセダンに、パワフルでスタイリッシュなスペシャルティーカー。かつて日本の街角で多くのひとを魅了した1960~70年代のアメリカ車を、週替わりで紹介します。

フォード・マスタング

1960年にフォードの副社長に就任したリー・アイアコッカ率いるチームによる、戦後のベビーブーマーを対象とする綿密なマーケティングから生まれたモデル。64年のデビューから2年弱の間に累計生産100万台に達するビッグヒットとなり、スペシャルティーカーというカテゴリーを切り開いた。

実用的なコンパクトカーであるファルコンをベースとするシャシーに、2ドアのハードトップまたはコンバーチブルのボディーを架装。後に、ファストバックもラインナップされた。

レイアウトやメカニズムは平凡だったが、スポーティーでスタイリッシュなルックスとリーズナブルな価格、そして徹底したプロモーション戦略が的中。基本モデルを除いて特定のグレードを設定せず、パワートレインから細かなアクセサリーに至るまでの膨大なオプションリストを用意するという、画期的な販売方法も当たった。
2.8リッター直6エンジンを積んだ“奥さまの買い物グルマ”から、4.7リッターV8エンジン搭載のホットなGTまで、ユーザーが自ら好みのモデルを選び、仕立てるという手法が、従来のレディーメイドには飽き足らない層に大いにアピールしたのである。

マスタングの成功により、ライバルであるGMのシボレー・カマロをはじめとするフォロワーが続々と登場。実用車をベースにスタイリッシュなボディーを着せたスペシャルティーカーのブームは、やがて海を隔てた欧州や日本へと広がっていったのだった。

[ガズー編集部]