カムリ/ビスタ(1982) トヨタが未来に挑戦したクルマたち

トヨタの車両開発史上、「お客様の期待を超えたクルマづくり」に挑み、誕生した個性的なデザインや機能を持ったクルマたち。1970年代から1990年までの中から、そんなクルマを紹介します。

世界につながる合理的モデル

トヨタ初のFF(前輪駆動)車だったターセル/コルサが誕生してから4年後の1982年、世界の小型車の主流となりつつあった、エンジン横置きのFF方式を導入した初のトヨタ車がいよいよ登場した。コロナとマークIIの間に位置する中型セダンのカムリ/ビスタである。両車はいわゆる兄弟車だが、カムリは、カリーナをベースにセリカ・カムリと名乗った初代に続く2代目。ビスタはこれが初代となる。

その特長は、何といってもFFのメリットを最大限に生かした、圧倒的な広さを誇る居住空間。やや背が高いキャビンは6ライトでガラス面積が広く、開放感も抜群だった。加えて、世界初となるマルチコンフォート空調システム(※)など、装備も充実しており、快適さでも上級車種に勝るとも劣らなかった。

カムリ/ビスタは、遅れてビスタに追加された5ドアハッチバックの存在も含め、このクラスの日本車では珍しい、実質を重んじた合理的な設計のモデルだった。長じてカムリは世界戦略車となり、北米をはじめ世界でベストセラーの座に君臨する看板車種に成長するのだが、原点となるこの世代から、その資質は備わっていた。

(※)左右席独立温度調整式の広い範囲に空気を送る機構

カムリ/ビスタが誕生した年 1982年

・トヨタ自工、トヨタ自販が合併。新生「トヨタ自動車」を発足
・ホンダ、日本メーカー初の米国(オハイオ)自動車生産を開始

カムリ2000ZXの価格 165.7万円(東京)
当時の大卒の初任給 約12.7万円

[ガズー編集部]