いよいよ7月に開幕戦!感謝の恩返しプロジェクトとして、新生TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cupがスタート!その熱き想いと新たな規定とは!?
TOYOTA GAZOO Racing(以下、TGR)が2013年から2021年までの9年間にわたって開催してきた『TGR 86/BRZ Race』。ご存じの読者も多いかもしれないが、先代トヨタ86/SUBARU BRZを使ったワンメイクレースだ。
そんな『TGR 86/BRZ Race』が今年から新型GR86/SUBARU BRZを使った新たなワンメイクレースへと引き継がれる。
それが『TOYOTA GAZOO Racing GR86/BRZ Cup(以下、GR86/BRZ Cup)』だ。
初年度ということで注目が集まる『GR86/BRZ Cup』開幕戦は、7月16日(土)~17日(日)の富士スピードウェイ。
そこで今回は、開幕が迫る今、『86/BRZ Race』から『GR86/BRZ Cup』になって変わったこと、さらにトヨタおよびTGRがモータースポーツ活動に力を入れる意味、今後の活動や展望について、トヨタ自動車GAZOO Racing Companyの南山要一さんに語ってもらった。
トヨタおよびTGRは、FIA世界ラリー選手権(WRC)やFIA世界耐久選手権(WEC)、ダカールラリー、ニュルブルクリンク24時間耐久レース、スーパーGT、スーパーフォーミュラ、全日本ラリー、スーパー耐久シリーズといった国内外のトップカテゴリーに位置するレースに参戦している。
さらに、グランツーリスモワールドシリーズのオフィシャルパートナーとしてeモータースポーツのサポート、TGRドライバー・チャレンジプログラムやWRCチャレンジプログラムといったドライバー育成など、さまざまな形でモータースポーツ活動を行っている。
その中で、TGR Yaris Cup(以下、ヤリスカップ)やTGRラリーチャレンジ、そして今年から生まれ変わった『GR86/BRZ Cup』などの参加型モータースポーツ活動にも力を入れる。
参加型モータースポーツとは、ユーザーが愛車で参加できる、モータースポーツの登竜門的なカテゴリーだ。
さまざまなモータースポーツ活動を行うトヨタおよびTGRだが、その意味や想いについて、まず南山さんに語ってもらった。
「GAZOO Racing Companyは様々なモータースポーツ活動を行っていますが、その目的は『モータースポーツを起点にしたもっといいクルマづくり』です。ドライバー、メカニック、エンジニア、企画やマーケティングメンバーも一体となって、クルマづくりのあり方を変える大変大きなチャレンジをさせて頂いていると感じます。
この言葉は、モリゾウさん(豊田章男社長)が掲げてくださった骨太な方針であり、我々の活動を再定義してくれたものです。それまで使われていた『もっといいクルマづくり』に意識的に“モータースポーツを起点にした”という言葉を付け加えたと言われています。改めて我々の存在する意味が明確になったと思います」と、最初に存在意義を教えてくれた。
では、なぜ豊田章男社長は、あえて“モータースポーツを起点にした”という言葉を付け加えたのだろう。
その意味について南山さんに尋ねると、「モリゾウさんにとっては、2007年のニュルブルクリンク24時間レースへの参戦以来、モータースポーツの現場がクルマと人を鍛える絶好の場であると、繰り返し言われてきました。
それはある種、1952年に創業者である豊田喜一郎さんがおっしゃられた、『レースの世界で勝負をしながら自動車の性能を高めていく、だから、モータースポーツは単なる興味本位ではなく、自動車産業にとって必要不可欠である』という言葉を現代に蘇らせたのだと思います。
モータースポーツ活動を通して極限状態でクルマを走らせ、課題をあぶり出し、開発にフィードバックすることの大切さを共有頂きました。それはスポーツカーだけじゃなく、多くの量産車にモータースポーツ活動で得た知見を活かし、貢献することを意味します。その実現が我々GAZOO Racing Companyの使命だと思っています」と語る。
TOYOTA GAZOO Racingと聞くと、モータースポーツ活動という印象が強く、あまり今まで語られてこなかったが、その根幹には自動車開発があるのだ。
実際にGRヤリスは、WRCで培われた知見を織り込んだ、モータースポーツで勝つためのクルマであり、GRスープラやGR86もその開発にはモータースポーツの知見がふんだんに活かされている。
その一つの具体的な事例として、『GR86/BRZ Cup』の前身レースになる『86/BRZ Race』でトランスミッションの不具合が頻発したことに端を発し、トランスミッション用強化ギヤを発売することができたという。
従来の社内の空気感では、“公道では起きないから”という事で、なかなか開発にまで至らなかったが、『モータースポーツを起点にしたもっといいクルマづくり』という豊田章男社長の声が追い風となり、開発にこぎつける事ができたと南山さんは教えてくれた。
トヨタおよびTGRの中で、着実にモータースポーツ活動と自動車開発がつながってきているのだ。
もちろん、この経験、技術が新型GR86でも活かされているのは言うまでもないだろう。
トヨタおよびTGRがモータースポーツ活動を行う意義や想いを知ったところで、今年からスタートする『GR86/BRZ Cup』をはじめ、ヤリスカップやラリーチャレンジなどの参加型モータースポーツに力を入れている理由を尋ねた。
「モータースポーツの裾野を拡げる為、誰でも気軽に参加できる競技を目指しています。ナンバー付き車両で楽しめるので、お家から車に乗ってサーキットやラリー会場にお越し頂き、競技を楽しんで週末を過ごす、そんなモータースポーツを楽しむ文化を広げていきたいと思っています。
ヤリスカップは、前身のヴィッツレースから数えて20年以上、86/BRZ Raceも9年という歴史を歩んできました。今では、グリッドに収まらないほどのエントリーが集まり、参加し、盛り上げていただいたエントラントのみなさんには、本当に“ありがとう”という気持ちしかありません」と、取材中に参加した選手、関係者への感謝の言葉を何度も聞くことができた。
TGR 86/BRZ Cupとは? より上を目指すドライバーに適したワンメイクレースカテゴリー
サーキットのワンメイクレースとして、トヨタおよびTGRではGR86/BRZ Cupとヤリスカップの2カテゴリーを用意している。
その意味について尋ねると、「ヤリスカップは、モータースポーツの裾野を広げるカテゴリーですね。親しみのあるクルマでエントリーしてもらうレースです。
一方でGR86/BRZ Cupは、より上を目指す人に参加してもらいたいレース。プロフェッショナルシリーズとクラブマンシリーズにわけ、まずはクラブマンシリーズ、成果が出ればプロフェッショナルシリーズ、ゆくゆくはスーパー耐久シリーズなどを目指してもらいたいなと思っています。
ヤリスカップ、そしてGR86/BRZ Cupのクラブマンシリーズとプロフェッショナルシリーズのようにステップアップできるレースカテゴリーを用意することで、モータースポーツ業界に貢献できると信じています!」と、各レースの違いについて教えてくれた。
そして、気になるのがGR86/BRZ Cupになって新しくなったことだ。
まず、ベース車が新型GR86/SUBARU BRZに変わったことはご存じのとおりだが、そのほかの変更点も多い。そのあたりを詳しく聞くと、「クラブマンシリーズは“より安全で低コストで楽しめるレース”、プロフェッショナルシリーズは“より魅せるレース”と、それぞれのキャラクターを明確化したことです。
また、日本自動車用品・部品アフターマーケット振興会(以下、NAPAC)との協力体制ができたことも大きな変化ですね」と語る。
具体的な変更点を聞くと、「大きな変更点として、クラブマンシリーズは、タイヤをワンメイクにしました。具体的には、ダンロップのディレッツァZⅢのワンメイクになります。昨年までのTGR 86/BRZ Raceでは、タイヤメーカーを選択できましたが、少しでもコストを抑えるために市販スポーツタイヤであるディレッツァZⅢのみに変更しました。
一方でより高い性能が求められるプロフェッショナルシリーズは、昨年同様に複数のタイヤメーカーから選択が可能です。適切な開発競争を促し、もっといいタイヤづくりにつなげたいと思います。
そのほか、タイヤ以外の部分では、NAPACとの協力体制により、NAPAC加盟の各アフターパーツメーカーのパーツが指定・認定部品になったことも大きいですね。
指定・認定部品リストについては、TGRサイトで公表している通り、一定の幅で選択肢を設けました」と教えてくれた。
参戦を考えているユーザーにとって、パーツ選択の幅が広がったことはとても興味深いだろう。そのあたりを聞くと、「NAPACは、長年レース業界で活動され、独自に安全基準を定め、安全安心なアフターパーツを提供するという理念を持っています。我々もその理念に賛同し、今年から協業することになりました。
我々がモータースポーツに取り組む意義は、もっといいクルマづくり、これに尽きるとお話ししましたが、ここにパーツメーカー様も加わっていただくことで、よりよいパーツづくりに向け切磋琢磨され、良い意味での競争が産まれると思います。すでにそういった動きも起きているともお聞きしております。
こうして、魅力的なパーツが生み出されることで、その恩恵は、一般のユーザー様へも広がっていくと思いますし、みんなの笑顔につながると期待しています。」と南山さん。
「魅せるレースであるプロフェッショナルシリーズには、国内トップクラスのプロドライバーも参加されています。例えば、有名なドライバーが選択したパーツやセットアップの情報をGRガレージとも共有する事で、ファンの方がご自身のクルマをGRガレージに持ち込み、同じカスタマイズができるようになります。こうした発展性も見据えて取組んでいきたいと思います!」と今後を語る。
86/BRZ RaceからGR86/BRZ Cupへ 感謝を返す、恩返しプロジェクトとしてスタート
9年間開催された86/BRZ Raceを南山さんに振り返ってもらうと、「ドライバーの皆さんはもちろん、それを支える販売店やチーム、メカニック、スポンサー、サーキット、運営に携わってくれた皆さんに対して、感謝しかないです。
そこで感謝を返す、恩返しプロジェクトというのが新生GR86/BRZ Cupのテーマです。今までは当たり前だったレースが、コロナ禍になり、当たり前ではないことに気づかされました。
そんな中でも参戦してくれたドライバーやチームの皆さん、さらに協賛を続けてくれたスポンサーさん、開催に向けて準備を進めてくれた運営スタッフやサーキット関係者の皆さん、本当に感謝しかない。その気持ちを持って次のGR86/BRZ Cupを育てていきたいと思っています」と、感謝を語る南山さん。
さらにその口調にも熱を帯びながら、「そのためにはファンの皆さんにとって魅力的で、応援したくなるレースにしていきたいたいと思います。
GR86/BRZ Cupとしては初年度ですが、ほかの自動車メーカーさんが開催しているワンメイクレースと一緒に、大きなイベントもしたいなと漠然と考えています。例えば、ホンダさんやマツダさんと協力して『ワンメイクレース祭り』のようなイベントができたらいいですよね。
そうなれば、普段レース観戦しないようなお客様にも、もっとモータースポーツを知ってもらえるいい機会になると思うんですよね。あくまで理想ですが、モータースポーツファンを増やすために、いろいろと仕掛けていきます!」と笑顔をのぞかせる。
また、新型GR86/SUBARU BRZへのマシンチェンジに伴い、旧86/BRZの扱いに悩むユーザーもいるだろう。そんなユーザーのためにTGRでは『GRトレード』というプログラムも用意している。
これは、競技車両をユーザー間で取引できるシステムで、レースマシンを身近に感じてもらうための取り組みだ。新車でレース参戦となると費用もかかり、難しいというユーザーも多いだろう。
だが、競技車両の中古車であれば、参戦費用を抑えてモータースポーツを楽しめるので、魅力的に感じるユーザーも多いはずだ。
このGRトレードについても、「少しでも間口を広く、モータースポーツに挑戦できる環境をつくるのが我々の役割。そこで新車だけではなく、中古車にも今後は力を入れていきたいと考えています。
大切に育てた愛車を安心して手放せ、そして、その愛車を適切な価格で手に入る仕組みができれば、さらに参加のハードルも下がってくると思うんですよね!」と、新たな取り組みも教えてくれた。
ということで、今年からスタートするGR86/BRZ Cup。参戦を予定しているエントラントも、観戦を予定しているレースファンも、詳しい情報はGR86/BRZ Cupの公式ウェブサイトをチェックしてもらいたい。
TOYOTA GAZOO Racing GR 86/BRZ Cup
(文:三木宏章 写真:三木宏章、TOYOTA GAZOO Racing、SUBARU)
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