【新連載・ラリージャパンを1000倍楽しもう!】梅本まどかのラリー基礎講座 これだけは覚えてほしい「ラリーの用語」編
- 2019年11月9日~10日に愛知・岐阜で開催されたセントラルラリーでクラス3位に入賞した梅本まどか選手(写真いちばん右)
みなさんこんにちは! 梅本まどかです。今回からラリーの魅力や観戦のコツについて、GAZOO.comさんで連載が始まるということで、たいへん嬉しく思っています。
2020年11月に開催が決まった世界ラリー選手権WRC日本ラウンド「ラリージャパン」に向けて、読者の皆さんにもラリーの楽しさを感じていただきたいと思っています。
さて、みなさんはこれまでラリーという競技を実際に見たり参戦したりしたことはありますか? わたしは、2018年からラリーに参戦するようになったのですが、モータースポーツが好きな方でも、実際にラリーを観戦したことがある方は意外と少ないのかな、という印象です。そんな私も参戦するまではそうでした。
- 神社の前を直角に右折。ここもタイムアタック区間「SS」のコースです。
今回、ラリージャパン開催に向けたテストイベントとして、愛知・岐阜でセントラルラリーというラリーイベントが開催されました。いろいろなニュースでも取り上げていただいていたので、目にした方も多かったのではないかと思います。
わたしもスポーツCVTを搭載したトヨタ・ヴィッツで出場させていただきましたが、愛知や岐阜の日本らしい風景の中を走ったり、沿道で皆さんに応援していただき、本当に嬉しかったです。
一方で、今回初めてラリーを見た・知ったという方も多く、「正直、どういう競技なのかわからない!」という方もいらっしゃり、いろいろと質問をいただきました。
そんなラリー初心者の皆様にも「ラリーって面白い!」って感じていただいたり、好きになっていただけたら最高ですね。
というわけで、まずはラリーの話題の中で必ず出てくる用語を解説しながら、ラリー観戦のための基本用語をお伝えしたいと思います。
【ラリー基本用語】「ドライバー」と「コ・ドライバー」
そもそもラリー競技は、クルマに2人乗ってタイムを競う競技です。実際にステアリングを握ってクルマを運転する「ドライバー」と、曲がりくねった道をより速く運転してもらうために、次のコーナーが右カーブなのか左カーブなのかといった情報を伝えると同時に、ハンドルの切り角や、ブレーキングを踏むタイミング、路面の状況、危険物の存在、次に続くストレートの長さなどをドライバーに伝える「コ・ドライバー(またはナビゲーター)」が一致団結してタイムアタックする競技です。
初めてラリーをやったときには、「ドライバー」さんがはたしてワタシのコメントを聞きながら走っているのか、それともまったく無視して自分の視界と感覚だけで走ってるのかが不安になるときもありました。でも、昨年ペアを組んだクロエリ選手に、「今のナビゲーション良かった! コ・ドライバーがいないと今の速さは出なかったよ!」って言っていただいたときのタイムがとてもよかったときは、「私のナビも役に立っているんだ!」と実感したことを覚えています。
【ラリー基本用語】「SS(エスエス)」と「リエゾン」
ラリーは、「SS(エスエス)」(※スペシャルステージの略)と呼ばれる区間で1台ずつスタートし、その区間の走行タイムを競います。この「SS」は、主に林道などを閉鎖して行いますが、今回のセントラルラリーは県道や村道、林道などをミックスしたコースもあって非常に複雑でした。こうしたコースの設定が実現したのは、その道の沿道に住む皆様のご協力や、地方自治体の皆様、警察の皆様、そしてボランティアの皆様のご協力のおかげです。ほんとうにありがとうございます。
さて、ひとつの「SS」が終わると、次の「SS」までは主に一般道を交通法規に則って走ります。この区間のことを、「リエゾン」(フランス語で移動区間の意味)と言います。
ラリーカーはラリー用に補強やサスペンションの交換などが行われた競技車両ですが、なんとナンバー付き車両なんです。ということで、一般公道はもちろん走れます。信号待ちもありますし、高速道路も速度を守って走って移動するのです。
今回のセントラルラリーでは、東名高速の岡崎ジャンクション付近で大渋滞に飲み込まれてしまうということも実際にありました。競技中だけではなく、こうした困難もクリアしながら一日を走り切ることが大切なんですね。
【ラリー基本用語】「レッキ」と「ペースノート」
SS区間でタイムアタックするときに、ドライバ―はコ・ドライバーのコメントに従って運転するということは上でも書きましたが、コ・ドライバーはどうやってコメントを言うのでしょうか。
実は、SSを走る前に、必ず「レッキ」(※英語のレコノサンス(偵察、調査などの意味)の略)という試走を行います。この「レッキ」を走りながら、ドライバ―は、カーブのキツさや緩さ、ストレートの長さ、路面の状況、危険物などを確認し、コ・ドライバーはそのコメントを「ペースノート」と呼ばれるノートに書き留めます。
そして、本番のSSでは、コ・ドライバーが「ペースノート」を読み上げ、ドライバーはこれを信じてステアリングを切り、アクセルを全開にしながらブラインドコーナーにも突っ込んでいくのです。よく考えるととても恐ろしい作業です。なので、ドライバ―とコ・ドライバーの信頼関係が出来ていないと、とてもできない競技だということが分かっていただけると思います。
また、より信頼できる「ペースノート」を作る必要があります。そこで、レッキの後はインカーカメラを見たりドライバーの意見を聞きながら、徹底的に「ペースノート」の清書を行います。正しい「ペースノート」を作るだけではなく、コーナーの種類を言うタイミングが早すぎたり遅すぎたりしないように、ドライバーの好みに合わせて調整していくのです。
「ペースノート」はコ・ドライバー自身が読みやすいように工夫して書いています。次の機会に詳しくお伝えしたいと思います。
【ラリー基本用語】「サービス」と「ヘッドクオーター」
ラリーはSSとリエゾンを走り、SSでの走行タイムの合計で競います。一方、わたしたちが運転するラリーカーを走行前にメンテナンスしたり、一時帰還して修理や休憩などを行うチームの拠点となる場所、そこが「サービス」です。
例えば今回のセントラルラリーでのラリーウイークの場合、チームは木曜日に「サービス」に集合し、テントを広げてチームの基地をつくります。そして、オフィシャルや運営スタッフ、主催者の詰め所となっている「ヘッドクオーター」にある受付に行って、ゼッケンやラリーの資料を受け取ります。翌金曜早朝からレッキを行い競技車両の公式車検を受け、ペースノートを作り、開会式に参加します。そして土曜日の朝、サービスを出発し、いよいよ本番のSSが始まるのです。
今回のセントラルラリーでは、「サービス」にたくさんのギャラリーの方が来てくださいました。私たちのテントはもちろんですが、トヨタガズーレーシングのテントの周りには、ヤリスWRCがいる時などは本当にたくさんのファンの方に集まっていただいたようですね。「サービス」では、まさに戦いの途中のマシンが目の前で見られたり、タイヤの交換やセッティングを行うメカニックの作業風景が目の前で見られます。
セントラルラリーでは「サービス」が駅前にあったので、非常にアクセスがしやすかったことも、多くのギャラリーの皆さんに来場していただけたのかな、と感じました。
【ラリー基本用語】「グラベル」と「ターマック」
ラリーをイメージすると、砂利や土のデコボコの道を、砂ぼこりを上げながら走っているイメージを持っている方が多いのではないかと思います。もちろん、このような「グラベル」(※英語で砂利道の意味。転じてラリーでは未舗装路全般を指します)と呼ばれる未舗装路で争われるラリーもありますが、「ターマック」(※英語)と呼ばれる普通の舗装路でもラリーは行われます。また、一つの大会で、「グラベル」と「ターマック」のSSが交互に現れる「ミックスラリー」と呼ばれるラリーもあります。さらに、冬は雪の中を走る「スノーラリー」と呼ばれるステージもあります。
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というわけで、ラリージャパンを楽しんでもらうための連載の第1回目は、ラリー用語の基礎をお伝えさせていただきました。
まだまだラリー用語はたくさんありますので、次の機会にまたお伝えしたいと思います。
次回は、セントラルラリーの会場に来ていたギャラリーやオフィシャルの皆さんに、ラリーの魅力や観戦のアドバイスをいただいています。ぜひお楽しみに~。
(文:梅本まどか 写真:水川尚由、小松ひろ、梅本まどか、ウェルパインモータースポーツ)
梅本まどか
<プロフィ―ル>
1992年生まれ、愛知出身。元SKE48メンバー。在籍当時からモータースポーツやオートバイに関心を持っており、卒業後は地元名古屋を拠点としながら他分野で活躍するタレントとして活躍中。2019年にはWRC招致応援団に参加し、WRC日本開催決定に貢献した。
[ガズー編集部]
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