【ラリージャパンを1000倍楽しもう!】知れば知るほど奥が深い! ラリー専用アイテムCHECK[Vol.1 車両装備編]

サーキットではなく山道や雪道などさまざまな場所を走り、助手席にコ・ドライバーを乗せて二人三脚で戦うなど、他の競技やレースと異なる部分がいっぱいのラリー。
実は装備品や関連アイテムも、他のモータースポーツとはちがった特徴やこだわりがタップリ詰まっているんです!

そこで、全日本ラリー選手権のトップカテゴリJN1クラスに参戦している『ADVAN CUSCO WRX -STI(VAB)』の柳澤宏至/保井隆宏ペアにお話を伺いつつ、ラリーならではのパーツやアイテムを紹介していきます。

第1回目は安全装備や工具について。WRC車両はFIA(国際自動車連盟)で定められた車両規定にしたがって製作されているのですが、全日本ラリー選手権に参戦する車両はJAF(日本自動車連盟)の規則に従って製作されています。また、参戦クラスによっても必要な装備が異なり、最低限の装備で参戦できるクラスもありますよ。

アンダーガード

砂利や岩からボディを守る悪路走行時の必需品

土や石がムキ出しの悪路を走行するラリーで欠かせないのが、エンジンやボディ、燃料タンク、駆動系パーツなどを保護する各種ガード類。

クスコではエンジンルームのほか、ボディの下まわりを覆うフロアガード、燃料系を守るフューエルタンクガードやフューエルタンクパイプガード、プロペラシャフトのジョイント部分を保護するジョイントガード、リヤバンパー用やサイドステップ用のガードなどが製品化されています。

また、ラリー車スタイルとしておなじみのマッドフラップも、タイヤが巻き上げる砂利からボディを守るための必需品ですね。

いっぽうで、頑丈なガード類は重たいうえに空気抵抗になってしまうものもあるので「グラベル(未舗装路面)では装着しますけど、ターマック(舗装路)でははずして走行します」とのこと。実際、撮影時のWRX-STIはターマック仕様だったため、ガード類は装着されていませんでした。

エンジンルームの下側には市販車でもカバーが装備されていますが、ラリー用のアンダーガードはそれとは別モノの堅牢さ。5mm厚のジュラルミン製で、曲げたり切ったりするのも大変そう! ガード類がはずされたボコボコの下まわりを見ると、保護パーツの重要さがよくわかります。

ドアの下部に装着されている金属製のガードは、砂利や小石からボディを保護するためのもの。とくに4WDのマシンは前輪から砂利を巻き上げて走行するので「これがないとドアに穴が空いちゃいます」というほどの必需品。

写真はアジアパシフィックラリー選手権などに参戦するヴィッツ。走行中にタイヤが巻き上げる砂利や泥を受け止めるための『マッドフラップ』が装着されていると、いかにもラリー車!って雰囲気ですよね。ちなみにラリーでは公道も走行するので、マッドフラップにも最低地上高やハミ出し、硬さなどの制限があります。

こちらもヴィッツの下まわり。足まわりへのダメージ防止やホイール内への異物侵入を防ぐために、マッドフラップと同様のウレタン製カバーが装着されています。全開走行時にタイヤが巻き上げる砂利や砂の勢いはすさまじく「ガードがなければ、サスペンションアームなどの金属パーツがどんどん削れてしまうんです」とのこと。

ロールケージ

横転と隣り合わせのラリー車には欠かせない安全装備

横転や転落も常に隣り合わせのラリー。そんな危険から身を守るために欠かせないのが、室内に張り巡らされたロールケージ(ロールバー)です。
万一の際に人命に直結する最重要装備だけに、その強度や素材、取り付け方法にいたるまで細かく規定で定められています。

WRCに参戦するためにはFIA基準のロールケージを装着する必要があり、バーの本数や形状はもちろんのこと、素材の種類や厚さ、曲げ加工の角度や溶接方法まで厳密に定められています。
限界ギリギリでの熱い走りが可能となるのは、しっかりと乗員の安全が確保されているという安心感に支えられてこそですね!!

このWRX-STIに装着されているのは、クスコが展開するセーフティ21ブランドのロールケージ。車種ごとの専用設計によりFIAの厳しい基準をクリアしつつ、運動性能を左右する軽さにもこだわって設計されているそうです。ロールケージパッドもFIA公認アイテム!

セーフティ21のASN公認ロールケージには、FIAが定めたレギュレーションに準拠した設計と様々な強度試験をクリアした証としてシリアルナンバーがしっかりと刻まれています。ちなみにASNとは、FIAが認めた世界各国のモータースポーツ統括団体の総称で、日本ではJAFがそれに該当します。

ロールバーと同様に、万が一の際に乗員の安全を守るために装着が義務づけられているのが消火装置。全日本ラリー選手権の規則では手動式の消化器でもOKですが、WRCなどでは車室内とエンジンルームで同時に作動する自動消火装置を装備しなければいけないルールになっています(センターコンソール側面の赤い部分が噴霧口)。

6点式シートベルト

FHR対応6点式がスタンダード! 乗り降りしやすい工夫も

運転時に体を固定するのはもちろん、クラッシュや横転などの時に身を守ってくれる大事な装備のひとつであるシートベルト。
参戦する大会やクラスによっては4点式でもOKですが、WRCをはじめとする上位カテゴリではFIA公認モデルの6点式が使用されています。また、FHRシステム(ハンス)対応というのもポイント!

FHRシステム対応のシートベルトは、腰ベルトなどが3インチなのに対して、肩ベルトだけが2インチの設定となっています。
ちなみに4点式と6点式の違いはというと、衝突時に腰ベルトがずり上がりドライバーが下方向に潜り込んで腹部を圧迫する「サブマリン現象」を防ぐことができるのが特徴です。

装着されているのは、FIA公認モデルのクスコ製6点式シートベルト。調整しやすいクイックアジャスターや、締め付けるときに便利なストラップ、インターコムや無線のケーブルを固定するためのホルダーなど、使いやすさを考えた設計。それぞれにFIA公認タグが付けられていて、使用できる有効期限も定められています。

それぞれのシートベルトにはなぜかゴム紐が括り付けられている? これは、マシンから乗り降りする際に、シートベルトが自動的に引っ張られて避けてくれるしくみになっているそうです。

もちろんシートはフルバケットシート。サーキット車両では「できるだけ着座位置を低く」が基本ですが、勾配の先なども見る必要があるラリーでは、着座位置が比較的高い位置になるのが特徴です。逆に助手席は、できるだけ低く車両の中心に配置することで、ペースノートの読みやすさ重量バランスを意識しているそうです。

車載工具

ドライバーも有事はメカニックに!? 完走を支える厳選アイテム

ラリーでは、速さだけでなくその日のSSをしっかりと完走することも重要な要素。途中でマシンが壊れてしまった際などは、ドライバーとコ・ドライバーが応急処置をして、メカニックが待つサービスパークまでたどり着かなければいけません。

そのためラリーマシンには、スペアタイヤと交換用のジャッキやホイールレンチ、サービススポットまで戻るための緊急修理のためのスパナやプライヤーなどのハンドツールなどが搭載されています。これもサーキットを走るレースカーとは異なる部分ですね。

もちろん、装備の増加は重量増となりマシンの運動性能を落とすことになるので、通常は経験に基づいて必要最低限に厳選。
逆に、ライバルとの差が開いていて完走が絶対条件といった場面では、サスペンションアームなどスペアパーツを積んでいくこともあるそうです。

スペアタイヤは「ターマックでは1本、グラベルでは2本搭載していくことが多いですね」とのこと。どんなにハードに走っても動かないようハブに合わせたアダプターがフロアに設けられているのに加え、ナイロン製ロープでしっかりと固定されています。

通常装備となる工具類がこちら。タイヤ交換の際に必要なジャッキと電動インパクトレンチ、十字レンチのほか、ラチェットレンチやスパナ、ドライバー、プライヤー類、ハンマー、カッターなどを厳選。針金やバンド類は脱落したパーツの仮固定用です。

空気圧調整も当然、自分たちで行う。エアゲージはホース付きで操作性がよく、エア調整しやすいようにリリーフボタンも装備したクスコ製品。十字レンチは薄肉ステンレスパイプでワンオフした超軽量タイプで、後部座席のドア内張りを加工して搭載。

このほかにも、タイヤやサスペンションなどラリー専用アイテムはまだまだたくさんあるので、次回以降に改めて紹介したいと思います。そして次回は助手席のコ・ドライバーと話すためのインターコムが装着されたヘルメットや、レッキと呼ばれる練習走行のためのアイテムなど、ドライバーの装備品について紹介します!

<取材協力>
株式会社キャロッセ
https://www.cusco.co.jp/

[ガズー編集部]

ラリージャパンを1000倍楽しもう!特集

MORIZO on the Road