もっと良い車社会へ…TBS安東弘樹アナウンサー連載コラム

この原稿を書いている一週間程前、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジン排ガス不正問題が報道されました。簡単に言うと、試験の時には燃費やパワーを抑えて排ガスを一時的にクリーンにしていた。しかしリアルワールド、つまり実走行の時は自動的に、排ガスの浄化性能を落として、パワーや燃費を優先させるソフトが入っていた、ということです。
ただ、誤解を恐れずに言うと、どの自動車メーカーのクルマでも、カタログ燃費と、実際の燃費がかけ離れている実態がありますよね。 あれは、何故かというと、これも極めてシンプルに言うと、試験モードに合わせて、最も燃費が良い様にエンジンを設定するからです。ちなみに日本の試験設定では時速80キロ以上の測定は無かったり、その国によって、面白い様に設定が違います。

今回、フォルクスワーゲンが問題になったアメリカは、燃費測定や排ガスの成分の規制について、世界で最も厳しいと言われています。例えば、先代のプリウスは日本での国交省審査値のカタログ燃費は32Km/l でしたが、アメリカでのEPA(アメリカ環境保護庁)に提出したデータは21Km/lほどでした。私の周りのプリウスユーザーに訊いたところ、ほとんどの方が、実燃費は大体20~22km/lという答えが多かったので、ある意味、とてもリアルな測定ということになります。
特にディーゼルに対してはアメリカの基準値は厳しいのです。そういったこともあり、今回の問題が起きてしまったのかもしれません。だからと言って、ディーゼルエンジンが駄目、という訳では無いと思うんです。 トヨタのランドクルーザープラドに新しく搭載されたディーゼルエンジンにも期待していますし、マツダのディーゼルエンジンも素晴らしいことには変わりません。ディーゼルエンジンがガソリンエンジンよりCO2の排出が少ないのは間違いありませし、原油を輸入してガソリンを精製すれば同量の軽油も精製されるので、今、日本ではガソリンの割合が多すぎるので軽油を輸出している、という極めて非合理的なことを強いられています。ですから、もう少しディーゼル車が増えた方が、バランスが取れ、効率も良くなります。

今回の問題を通して感じたことは、行政機関に、今まで我々ユーザーには全く見えなかった、燃費や排ガスの審査等をもっとオープンにし、審査基準・測定方法をより実態に近いものに見直して貰いたいということです。是非、行政機関の方にはお願いしたいと思います。

さて、今回は、更に二つ、「行政にお願いしたい事」を書かせて頂きます。
一つ目は、郊外や地方の交差点の「ランアバウト化」です。ランアバウトとは簡単に言うと、道が交差する場所の真ん中を丸い形状にして、その周りに放射状に道を伸ばす代わりに、信号機が無い交差点のことです。パリの凱旋門を囲む道を想像して頂ければ、と思います。利点は、災害時、停電しても問題無い。信号が無いので消費電力は、皆無だからです。道が空いている時、無駄に止まらなくて良い。一方で、道が空いていても、無謀なスピードを出すことが出来ない。(一回、サークルの中に入るので、否が応でも減速が必要)等、無数にあります。欠点は、初心者がサークルに入る時、少し戸惑うこと位でしょうか。でも、すぐに慣れると思います。都市部では、スペースの問題等で、設置は難しいかもしれませんが、土地に余裕がある場所では極めて有効であると思います。実際、ヨーロッパでは、一般的に普及しています。日本での普及も切に願います。

二つ目は、日本のいびつな免許取得方法の改革です。皆さんのほとんどは「教習所」に通い、一定の講習を受け、修了検定に合格し、運転免許を取得されていると思います。 その講習の中で運転の実技練習は、ほとんど教習所内の専用コース内で行われています。駐車練習の時もクランクの練習の時も教習コースにぶら下がっている、ポールを見ながら、この場所から何本目が見えたらステアリングを切って、等と教わりますが、当然、現実の道路には目安になるポールは有りません。教習所内の専用コース内での仮免の検定に通った後、路上教習も実施していますが、ほんのわずかな時間しか行われません。
20万円~30万円も払って(中には40万以上という方も、いらっしゃるようです)こんな不思議な教習所に通わないと、実質的に免許を取ることが出来ないシステムに日本はなっています。
多くの国では、私有地等で練習をした後、他の車に練習中であることを認識して貰えるサインを張って、実際の公道を使って、免許を持っている人の隣に乗って練習します。その後、自分で判断して各国で定める実地試験を受けるのですが、その方法は、試験官が隣に座り実際に公道を走り、テストを受けて、免許を取得可能な技術を持っているか、運転に必要な状況判断が出来るか、等を見て貰い、それで合格なら、免許取得です。(別途学科の試験が有る国も。外国の映画で、公道での免許取得シーンを観たことが有る、という方もいらっしゃるのではないでしょうか)
ちなみに、各国に「教習所」というものは有りますが、そこは、あくまで練習をする場所で、そこでの試験で国の実地試験が免除ということはありません。練習中の公道での事故のデータも可能な限り調べましたが、その制度によって、事故が増えているというデータは有りませんでした。費用も、他の国と比較して日本は極めて高額です。(アメリカやイギリス等では、一概には言えませんが、理論的には数千円~2万円で取得も可能ですが、一般的には数万円、ヨーロッパでは少し高くて数万円~20万円位。)実際に、私の周りの若いスタッフにも「お金が掛かるので、とてもじゃないが免許は取れない」と言う者も少なくありません。
この日本の不思議な制度には、様々な「事情」が有る様ですが、ぜひユーザーに不当な負担を強いる、若い人の車離れを進める様な制度を変えて頂きたいと、こちらも切に願います。
では、また次回!

(テキスト/安東弘樹)

[ガズ―編集部]