安東弘樹は、やはり異常だった件(アナウンサーが使う表現としては不適切であるのを承知の上で)…TBS安東弘樹アナウンサー連載コラム

先日、愛知県に新しく出来た某輸入車メーカー正規ショールームのオープニングイベントに僭越ながらゲストとして呼んで頂き、ある女性自動車ジャーナリストの方とトークショーを行いました。

これまで、モーターショー等で、お互いに会釈をする程度の間柄でしたので、ほぼ「初めまして」という状態で、お話をさせて頂きました。

その方は、Iさんといい、キリッとした精悍な雰囲気の女性で、その方が書く記事も内容がとても誠実でかねて好感を持っていましたので、とても楽しい時間を過ごさせて頂きました。

本番数日前の打ち合わせの時も、私は、とても楽しく話をしていたのですが話が進むうちに、これまでお会いした評論家や自動車雑誌の記者の皆さんと同じ様に、私が夢中でクルマの話を進めて行くと、徐々に後ずさりしていく様子が私にも伝わって来ました。そこで、やっと我に返って、少しトーンを落とし、冷静さを取り戻す、といういつもの過ちを繰り返してしまいました。

後から伺うと、その方は、私の口からクルマのスペックがスラスラ出て来るのに驚いたそうで、打ち合わせが終わって私と別れた後、同行スタッフに「安東さんってスペックモンスターですね」とお話されていたそうです。

これは褒められたのか分かりませんが(笑)、私はスペックを覚えようとした事は無く、雑誌やWEB等で新しいクルマの発表の記事を読むと、クルマが好きすぎて自然と数字を覚えてしまう様です。
未だに仕事の台本や構成は中々覚えられないので、まさに「好きこそものの何とやら」だと思います(笑)

本番当日も、トークショーの前に当該ブランドのクルマを数台、試乗させて頂いたのですが、運転しながら自然と、このクルマは確か231馬力で370Nmでしたね。とか、このクルマ、幅が1940mmとは思えない位、取り回しが楽ですね。等という言葉がふと、出て来てしまいました。

しかも、思い出そうと考えてから口に出すのではなく、気付いたら数字が浮かんで来て口が動いている、という感覚です。
隣に座っていた、Iさんには、その度に爆笑されたので、改めて自分の“異常性に”気づかされた次第です…。

これまでも経験は有りますが、クルマの専門家である評論家に、呆れられるというのは、やはり光栄の様な恥ずかしい様な複雑な気持ちです。

試乗したのはMTのクルマが1台と、マニュアルモードが付いたATのクルマが数台でしたが、私はATのクルマに乗っても運転する時は常に、マニュアルモードにして、イグニッションをoffにするまで、ATモードにすることが無いので、それに気づいたIさんが、「ずっとMTモードなんですね」と、不思議そうに、おっしゃいました。

私が「はい。自分は、シフトポジションを機械に任せるという概念が無いので」と答えると、また大爆笑です。

「機械に任せる概念が無い」という言葉が新鮮だったそうです。

トークショーの中でも「新しいクルマが発表されたり、モデルチェンジがあったりすると、取り敢えずディーラーに行って試乗するのが趣味なんですって?」と訊かれたので、思わず「いえ、“趣味”ではなく“本能”です」と答えた所、Iさんにもお客様にも、爆笑されてしまいました…。
別に私は、お客様に笑って頂こう、と思って言ったのではなく、一番近い感覚が“本能”だったので、そう言ったまでなのですが、やはり“普通の”方にとっては違和感というか、やはり“異常”と映る様です…。

「新しいクルマが世に出ると、気付いたらショールームの入り口に居る、という感覚です」とトークショーで申し上げた所、Iさんには「それはいくらなんでも」と突っ込まれたので、「はい、言い過ぎました」と答えて、お客様には笑って頂きましたが、実を言うと、本当に、それに近い感覚なんです!

ネットや雑誌等で、何月何日、○○発売。という記事を見ると、その日付が頭に入力されるので、その日以降で少しでも時間が出来ると、例えば仕事の合間だったら、会社の近くのディーラーに。
家に居る時は自宅近くの、お店に。

旅先で、ふと思い立って、たまたま通りかかったディーラーに立ち寄って試乗する事も有ります。考えてみると、そこで購入する訳ではないので迷惑な客ですね(笑)

それから、つい先日、日本を代表するクルマ雑誌Cの“代表”という肩書をお持ちの、Kさんと、私の別の連載コラムの企画でクルマに乗りながら対談をさせて頂いたのですが、やはり、私の言動に対するKさんの反応も“へー”とか“ほー!”といった具合で、明らかに「感心」というより「唖然、呆然」という類のものでした。

私はこれまで、このGAZOOのコラムで、専門家ではない、一般の“クルマ好き”、の立場で意見を述べさせてきたつもりですが、専門家に呆れられる種類の“クルマ好き”だとすると、今までの私の主張は読者の皆様に受け入れて頂いているのか不安にもなります。

でも私は、基本的に全てのクルマが好きで、クルマに関わる事全てに興味が有り、そしてクルマ社会全体を良い方向に向けていきたいという情熱を持っている、という自負だけは有ります。

これまで愛して来たクルマもイタリアのコンパクト。アメリカのSUV。日本のスポーツハッチ、スポーツセダン、SUV。ドイツのスポーツセダン、ステーションワゴン、スポーツカー、コンパクトスポーツハッチバック、ロードスター。フランスの5ドアハッチバック。イギリスの4人乗りコンバーチブル、SUV。等で、

搭載エンジンもガソリン2気筒、直4、直6、V6、V8、ディーゼル直4、水平対向4、水平対向6と、節操なく様々な種類のクルマに乗って来ました。

全てを今でも愛していますし、私が資産家だったら、出来れば1台も売却したくなかったです。
ちなみに、その内の、半分位がMTです。
そして、全てのクルマをローンで購入しているので、私はクルマのローンを返す為に(今は家のローンも)仕事をしている様なものです。

これは一生、続きそうですので、人生の最後まで、どこか追い詰められながら生きて行くのだと思います。(苦笑)

やはり、変態ですね(笑)

皆様、平素より、こんな男が書くコラムにお付き合い頂き本当に有難うございます。

そして今後とも何卒、宜しくお願いします!

追記

本コラム執筆の直前に、埼玉県草加市で起きた、痛ましい事故のニュースが入って来ました。

スマホを見ながら運転していたドライバーのトラックが赤信号を無視し多重事故を起こし、その巻き添えで翌日2歳の誕生日を迎える男の子の母親が亡くなったという事です。

一緒に歩いていた男の子は母親が命を懸けて守ったのでしょう。軽傷だったそうです。

キーボードを叩きながら悲しみと憤りが止まりません。

またしても私が愛するクルマが尊い人の命を奪いました。(この事故に限らず毎日命が奪われています)

何回も何回も言います。クルマは凶器にも棺桶にもなります。

勿論、私も、愛するクルマを凶器に変える可能性は有ります。

その上で、お願いです。どうか皆様、クルマに乗り込む時、その様な緊張感を持って毎日運転に臨んで下さい。

以前から自動ブレーキを全てのクルマに標準で搭載するべきだと申し上げていますが、この事故の映像を見ると、例え、そうなっても、やはり人間が操作を誤れば装置だけで事故を防ぐのは不可能だと思い知りました。

大きな責任が有るからこそ、正しく運転した時に歓びがあるのだと思います。

皆様、お互いに、その責任を胸に刻んだ上で運転を楽しんで参りましょう!

安東 弘樹

[ガズ―編集部]