若い人がクルマを買わない理由 …安東弘樹連載コラム
先日、新しいカローラスポーツの試乗会に行ってきました。失礼ながらカローラというクルマに対しての興味がこれまではあまり無かったので、さほど期待もせずに試乗したらまあ驚きました!これが爽やかに良かったのです。コンパクトなクルマをこんなに気持ちを込めて作ってくれた事に感謝せざるを得ない様な良車でした。私が気になる剛性は勿論、デザインの塊感、そしてパワーユニットにも好感を持ちました。
ハイブリッドの方は良くも悪くも想定通りでしたが、1.2Lのターボエンジンは、正にコンパクトカーをキビキビ走らせるのに適した出力とトルクの出方で、CVTとの組み合わせでは確かにもったいないのですが、8月にはMTモデルも控えているので、それを前提にすると本当に私自身が「欲しい!」と思えるクルマでした。
正直に申し上げて同日に試乗したクラウンより、カローラスポーツの方が遥かに記憶に残っています。運転していて楽しかったのです。唯、欲しい!と思っただけに試乗車の助手席に置いてあった当該車両のオプションを含めた価格を見て、唸ってしまいました。
330万円…。
恐らく登録費用などの、所謂“諸経費”を合わせると350万円を超えるでしょう。確かに最上級グレードでオプションも満載のクルマです。そして、コストを掛けたからこそ良いクルマになった事も解ります。
しかし、メーカーはプレゼンテーションでも「若い人に乗って欲しい」と盛んにアピールしていました。CMも、それを完全に意識したものになっています。だからこそ試乗車の価格表を見て唸ってしまったのです。
結論から申し上げると、「若い人、買えません」。
誤解しないで頂きたいのですが、私は、このカローラスポーツの方向性、大賛成です。コンパクトカーこそ、良いクルマでないと、その次のオーナーになってもらえないので、エントリーモデルに近い物こそ、コストを掛けて真剣に作って欲しい。
予て私が主張してきた事をTOYOTAは具現化してくれた、とも思っています。唯、矛盾している様ですが親に経済力が有って、「買って貰える」様な環境の人でもない限り、若い人には買えない金額だと言わざるを得ません。
私の元後輩たち、つまりTBSの社員です。世間的には高給取りと思われているテレビ局の社員である彼らの中には、給料明細を愚痴交じりに私に見せてくれる者がいました。具体的な金額は申し上げませんが、我々が20代30代の頃と比べると6割程度の額です。
しかも一人暮らしをしている者は家賃を払い、スマホの利用料はゲームを少しでもしようものなら月に2万円を超える金額になります。残りを考えたら、総額で300万円を超える様なクルマなんて、到底、買えません。若者のクルマ離れについて、様々な方が様々な意見をおっしゃっていますが、答えは簡単です。
確かに以前の若い人より興味を持つ人が減っているのだとは思いますが、要は『買えないだけ』だと彼らの給料明細を見て素直に思いました。ちなみに彼らTBS若手社員、つまりテレビ局員は、それでも他の業種と年収で比較したら、かなり恵まれていると言えるでしょう。実際に企業別で見た場合、今でも同年代ではトップクラスと言えると思います。そうであっても、です。
勿論、私の様にアナウンサーなのに服にも無頓着、酒も飲まない煙草も吸わない、夜遊び皆無、唯ひたすら趣味、娯楽はクルマだけ、というライフスタイルでしたら、多少、高額のクルマも買えるかもしれませんが、今の彼らのライフスタイルを考えたら、SNS等のコミュニケーションツールは必須ですし、自分を表現するのにファッションも重要なツールでしょう。そして、どうせ持つなら、ダサい物は嫌だというのも理解が出来ます。
彼らの収入でも中古でクルマを選ばなければ、取りあえずはクルマを買えるでしょう。でも彼らにとって、そういう“頑張ってる感”、は最も嫌悪される感覚ですし、更に、インスタ映えも考えたら、「じゃあ、要らないか」となるのは必然です。
大体、日本でクルマを買う場合、支払う総額がそのクルマの“値札”とあまりにかけ離れてしまう、謎に満ちた税金が“9つ”ものしかかり、更に維持費もじわじわと負担になるので、初めてクルマを買う場合、それを知って逃げ出すのも深く理解できます。
まず、つべこべ言わず、若い人だけでも、クルマ購入時に掛かる税金や維持に掛かる負担を軽減して、1%未満の低金利長期ローンを全メーカー、インポーターに設定してもらう位の状態に、最低限しなければ永遠に多くの若い人はクルマを買いません、いや買えません。
例えば、35歳未満の人がクルマを購入する場合、重量税や取得税を免除するなどの税制優遇をするだけで、若い人が年齢の制限に近づいた時、駆け込みでクルマを買ってくれるのではないかと思うのですが如何でしょうか?その際は不正を防ぐ為に、厳しい審査は不可欠ですが、かなり有効な手立てになるような気がします。そして現金では買えなくても、スマホの利用料と同じ位の金額でローンと維持費が賄えればクルマ購入の現実味が増してきます。
これなら何とかカローラスポーツに手が届くかもしれません。唯、悩みが深いのが、所謂、プレミアムメーカーと言われる輸入車ブランドでしょう。彼らは「若い人に乗って欲しい」とオシャレなコンパクトSUV等を続々と販売し始めましたが、日本での価格は400万円~500万円。恐らく総費用は500万円~600万円といったところでしょう。
これはもう、少なくとも日本では、どんな大企業であれ、20代~30代前半のサラリーマンでは手が届きません。グローバルで見ても、殆どの国の若い人は少なくとも自力で買うのは不可能でしょう。メーカーは、“若いエグゼクティブ”に、と標榜していますが、好感度を無視して申し上げると、恐らく、その範疇に入るTBSの20代の社員、買えません!
「若い人向け」と言えばむしろ中高年が買ってくれるという意見も聞きますが(シニアの方へ、等とアピールするとシニアが避けるらしいです)、もしメーカー、インポーターが本当に、そういう目論見で「若い人に乗って欲しい」と言っているのであれば、何とも残念です。
私は、本当に若い人にクルマに乗って欲しいのです。ですから、せめて若い人に対してだけで良いので税制優遇、そして超低金利ローン、将来の自動車産業を守ると思って、国、そして金融機関の皆さん、どうか私の提案を具現化して頂けないでしょうか?
私、クルマ関連だけで、かなり国に税金で貢献してきたと思います。そして30年間、クルマのローン、つまり金利を払い続けている、すなわちローン会社の皆様にも相当貢献してきたと自負しております。ですから、どうか、常連客の希望を叶えてやって下さい!お願いします!
今回は文面がヤケクソ気味になってしまいましたが、これ、真剣に言ってます。これからも主張を続け、具体的な行動にも繋げていきたいと思います。若い人が、もっと気軽にクルマを買えるようになる日が来るまで。
安東 弘樹
「クルマ離れ世代」のクルマ事情
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