ダカールラリー 取材同行の旅No.12

ダカールラリーの同行取材も今回で3年目を迎えた。1年目はビバーク間を軍用機やバスで移動。2年目はトヨタ・ハイラックスを借りてクルマで追いかけた。そして3年目の今年は、アルゼンチンでは発表したばかりのトヨタSW4(南米以外はフォーチュナー)をお借りし、アルゼンチン、ボリビアを15日間、8,000km以上走りながら取材をした。このリモートワークは、一緒に移動する距離が伸びれば伸びるほど、日に日に選手やオフィシャルとの心の距離が近づいていき、最後は、まるでみな遊牧民の一員のような、家族のような存在になった。そんな取材同行の旅を振り返る。

トヨタSW4は都会でも大自然でも似合う

トヨタSW4は、かつて日本でハイラックスサーフとして人気を博していたSUVの海外モデルだ。タイを中心にアルゼンチン、南アフリカなどいくつもの工場でハイラックスとともに生産され、多くの国々に導入されているモデルだ。現在国内で販売されているランドクルーザープラドと同じ直列4気筒ディーゼルターボ(1GD)エンジンを搭載し、低回転から高いトルクを引き出し、街中でのストップアンドゴーや、オフロードでの運転のしやすさがとてもいい。スタイリングもエッジの効いたフロントグリルやヘッドランプがスタイリッシュで、都会でもとても似合う。ランドクルーザーやハイラックスと同様にラダーフレームがあるので、耐久性の高さは想像できるが、ラダーフレームが高剛性ながらも適度にしなるので、悪路での衝撃もサスペンションとともにうまくいなしてくれる。アルゼンチンではこの新型の発表はされていたが、まだ街中で実物を観ることは皆無だったため、走っているとどこでも観客にかっこいいと褒められた。おもしろかったのは、このプレスカーもダカールラリーの車検を受けなければならないのだが、その車検官がなかなか車検を終わらせてくれなかったこと。聞けばこのSW4が欲しくてずっと観ていたかったと言う。ラリーカーとは違った意味で大注目された。

ブエノスアイレスの高級ホテル前に停めてもさまになるトヨタ・SW4
撮影するために小川を渡り、涸れ川の砂地を走っていくこともある。こういったときはタイヤが空転してもA-TRC(トラクションコントロール)があるので安心してオフロードを走れる
撮影するために小川を渡り、涸れ川の砂地を走っていくこともある。こういったときはタイヤが空転してもA-TRC(トラクションコントロール)があるので安心してオフロードを走れる

リモートワークしながら8,000kmを走破した

基本はアスファルトの国道を使って次のビバークまで移動する。しかしそのルート近くに競技区間があれば、クルマを停めて撮影する。もちろんオフロードも走る。ビバークは砂地なので、例年だと2輪駆動のトラックが埋まってしまったりすることもある。だからプレスカーは4WDでないと困る。ただ今年のビバークは整地されたところがほとんどで問題なかったが、大雨の影響で道路が冠水したり、オフロードがぬかるんでいたりとほかの2輪駆動車が躊躇するなか、何もなかったように走れた。毎朝、競技車がビバークをスタートする前に出発し、途中撮影できる時はして、競技車よりも先に次のビバークへ到着して待ち受ける。選手たちが到着したら、インタビューをしたり、撮影をする。そして動画関係もカメラマンと打ち合わせして、それからレポートを作成。撮った画像をセレクトして日本へ送る。それから明日の行動予定について打ち合わせをする。毎日平均睡眠時間は4時間くらいで、あとは移動中にトヨタ・SW4の助手席で仮眠をとる。標高は0mから4,000m以上まで登り、気温も10℃くらいから45℃くらいと差が激しい。1日の移動距離が1,000kmを超える日もあった。それでもトヨタ・SW4のおかげで楽に移動できた。食事はビバークで摂れるからありがたい。食事を盛り付けてくれるスタッフとも日に日に仲よくなってくる。毎年会う警備員とも、冗談を言い合う仲になった。現在のダカールラリーでは、日本人が少なく、プレスも東京中日スポーツ、Jスポーツ、ホンダそして私たちと10名程度だから逆に目立つ存在だ。みな自立しながらも協力しあっていて、外国のプレス仲間や選手たちもとてもフレンドリーに接してくれる。私は1997年より選手として6回参戦していたので、選手たちも選手の視点がわかるプレスとしてより細かい話をしてくれる。取材は仕事だが、この仕事は仲間との旅でもある。とにかくみんなでゴールを目指して突き進む。今年のオートはプジョーワークスの圧勝だった。MINIも南アフリカトヨタのハイラックスも来年に向けアップデートしないとこの差は開いてしまうだろう。来年のコースはまだ発表されていないが、やはりチリやペルーなど砂漠ステージが増えてくれることを期待する。そうすればもっとマシンの性能とともに選手たちの能力が問われてきて、取材する側からするととてもおもしろい。ダカールラリーはモータースポーツであるとともに、やはり人とクルマが協力しあい地球に挑むヒューマンアドベンチャーであるのだから。

ビバークの入り口は毎日このように観客が温かく出迎えてくれる。沿道の観客も含めるとおそらく数百万人のアルゼンチン、ボリビアの方々にトヨタ・SW4をお見せできた
ボリビア・ウユニ塩湖にて。あと1か月すれば雨水が溜まり、鏡のようになるらしい。惜しい
アルゼンチンとボリビアの国境は渋滞になる。人もクルマもイミグレーションはビバークで済ませているので、車内の荷物チェック渋滞だ
乗用車は比較的早く終わるが、トラックはかなり時間がかかる
今年は豪雨が続き、国道ですら冠水しこの通り。私たちは予測していたので早めに通過できたが、あとから来たアシスタントカーたちは6時間も道路が封鎖されて明け方ビバークに戻ってきた
1日走れば新車のトヨタ・SW4もこの通りの砂化粧。でも汚れている感じも似合う
日本人プレスの仲間たち。選手たちのゴールシーンを撮影しているが私たちも無事ゴールできてほっとしている

【おまけ】アルゼンチンのパトカーはいろいろ

パトカーというのは国ごとに特徴があるが、アルゼンチンではさらに県ごとに特徴がある。ブエノスアイレスでは、前後に巨大なバンパーを装着したパトカーが増えた。これはもちろん逃走車を追いかけ、ぶつけてでも停めるためだ。さすがラテンの警官。このバンパーを見たら、さすがに悪いこともしたくなくなる抑止力にもなっているかと。また山間部へ行くとトヨタ・SW4などSUVになる。これは舗装路だけでなく、河川敷や森の中まで犯人を追いかけるためだろう。カラーリングまで県によって異なるのも特徴があっておもしろい。

ブエノスアイレスのパトカー。このバンパーを見たら逃げる気も失せる
山間部のパトカーはトヨタ・SW4

12回に亘ってお届けしましたダカールラリー取材同行の旅は、いかがでしたでしょうか?毎年、日本のちょうど真裏の南米大陸で開催されているため、なかなか日本には細かい情報が少ないかと思います。次回もまた取材時には、スポーツ番組や記事では出てこないユニークな情報をお届けできたらと思います。ご覧いただきありがとうございます。

(写真・テキスト:寺田昌弘)

[ガズー編集部]

MORIZO on the Road